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2008年3月

番外編「来栖礼壱の場合4」

中3の時、初めて好きなったのは自分と同じ男子で、それを自覚したあたりからオレはゲイなんだと認めざるをえなくなった。
まわりの友達がグラビアやアイドルの話で盛り上がったり、ましてやこっそり回し読みをしていたエロ雑誌にも全く興味がなかった。

どっかおかしいのかと不安になった事もあったけど、結局女を好きになれないのだから仕方ない。
来栖のいわく『処女』(男だけど…)なんてものはその頃捨てて、でもなんというか…抱かれたとたんに一気に冷めて、その相手とは別れてしまった。

多分、オレが当時好きだった«そいつ»には興味本位みたいなものが気持ちより先立っていて(ノンケに手を出したオレもオレだけど)…馬鹿みたいに口を開けて眠るそいつを見ながら、酷く情けない思いに駆られたのを覚えてる。

それからは絶対男に恋なんてしないっ…て

誓ったというのに……

人目惚れ?!

こうまで自分が乙女な奴とは思わなかった。

いつものように部活を終えて、コートの片付けをしていると突然大粒の雨。
「なんだよ 傘ねーや」
「夕立ならシャワー浴びてる間に止んじまうかもよ」
仲間とそんな話をしながら、濡れた額を拭う。

ワックスべたべた 気持ち悪ぃ…

シャワーと着替えと、教室へテキストを取りに行ったり…
でも結局
雨は止まなかった。

酷い降りではなかったけどどうするかと悩み昇降口に立つ。
せっかくシャワーを浴びたのにあきらめるしかないか、ちっちっ…

一雨毎に春が来る。
そんなもんかね?
季節はずれの夕立、遠くの春雷。灰色の雲がぞわぞわ流れてく…

ふと前を横切る大振りの濃いインディゴの傘… え?!

「あっ! ハハハ 可哀想に…いいよ 駅まで入ってく?」

「来栖!!!」

来栖が傘をオレの方に差し出した。まだ入るなんて言ってないぞ!

それに…いくらなんでも男二人で入ったら

お前の肩が濡れちゃうだろ?


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番外編「来栖礼壱の場合3」

鈍い……
中学時代にオレから連勝記録を奪った奴が、こんな…ぶつかったくらいで足がもつれて転ぶような奴だったとは…

「よう… 柏原… 久しぶりだな…」
オレは柏原の前に仁王立ち、柏原は尻をさすりながらオレを見上げる。

「いたたた… す、すいません… あの2年生の?どなたでしたっけ」

なんだとーannoy?!!!

そりゃ3年も昔の話だけど、三中のテニスの魔王と呼ばれたオレを忘れてる?!
しかもお前はあの時オレに、屈辱的な言葉を浴びせてんだよ!!!

«へーなーちょーこーもっもっせー いえーい!!»

「三中の百瀬穂高だよ!!てめー 忘れたとは言わせねーぞ!!一回だけ勝ったくらいで勝ち逃げしやがって!!」

「…………ももせほだか…先輩? えーと…あれ?」

首を傾げながら、本気で悩んでいる…
かあああああっ イライラする〜!!!こいつっ

柏原ってこんな、ボーッとした奴だったか?

オレの知ってる柏原ユキは逗青中のヤジ将軍と恐れられた…

「ああっもうっ…いっそヒゲ生えろ!!!ボケっ」

「ひ げ …?」

ぼうぼう生えろ!!!

信じられないっ あいつはオレと全く違うタイプ
ああ、来栖先生 アンタの趣味だって相当悪いよ… 
(しかし、この3年の間にいったいあいつに何が…人って変わるもんだな)


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番外編「来栖礼壱の場合2」

「素人っぽい所がたまらないんだよねー… 触るとすぐ赤くなるし… ああいう清らかな男の子とつき合ってみたいなあ…でオレ好みに調教して、ほら光源氏のあれみたいにさ」
来栖礼壱がオレの反応を楽しむように、にやにやして柏原の事を語る。

「調…清らかって!あいつあの軟派な奴とつき合ってんだぜ? 趣味わっりー!!」
「軟派? ああ、うちの夏目か…確かに悪い! あはは、でもまあユキ君処女だし」
「は?! な、なんでわかるんだよ やってんだろ!!絶対」

調教とか処女とか…教師が生徒にそんな事いうか?ふつー?!
体育館の奥では、その夏目がバスケの練習中
脇で女子達がキャーキャー言って騒がしい!!(でかいだけで何が良いんだか分からない)

「分かんない? 悪いけど君だってどうか分かるよ」

「な、……なんだよ」

クククと、オレをからかうように笑って、来栖は練習に戻って行く。
ジャケットを脱いで、何か叫びながらシャツ姿で部員に指導そする姿が胸を締め付ける…ような
とにかく格好良くて、あんな馬鹿にされたような会話でさえも嬉しいんだ。

ああ、でも絶対オレ鼻にもかけられてないんだろうな?

結局…ガキのうえ、ストーカー呼ばわりまでされたのがやっぱり少しショックで仕方なく体育館から出る事にした。
振り返れば開いたドアの向こうに来栖の後ろ姿…

…やっぱりバスケ部に入るんだったか?

はっ! いやいやいや!オレはなんてよこしまな考えを!
オレはテニスのラケットに高校生活を捧げるんじゃなかったのか!
大体、恋なんてのにうつつを抜かしてる場合じゃないんだよ。

もう今年は3年になるというのに……

ドンっ!!
「うわっ」
横から飛び出してきた男子生徒にぶつかる。
「いってーannoy!! おいっ 何処見てっ」
ぶつかってきたソイツは、その拍子で尻もちをついていた。
「あっ…す、すいません!」
あっ!!!!!
か〜し〜は〜ら〜!!!typhoon
 

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うわっ雨が…!!(ウメ)

はい。BL記事ではなく、つぶやきです。
こんばんは〜… 雨に濡れてへこみ気味のウメキチです。

髪のカラーしてきたばっかだったのに(苦……)。
アップしている小説はネタにつまり、イラストはスランプにおちいり手が動かず、明日から仕事で(もーっ なんでもかんでも押し付けるな!お局グループcryingでも何も言い返せない自分が情けない)下手すりゃ残業、それを思うとまた鬱だし……(涙)

隠れヲタの私は、そんな時直帰の上、会社から遠く離れた本屋でBL本漁りに耽ります。(会社帰りなのでスーツ姿にパンプスです……もうここまできたら無我なので気にならない)
多分明日もそんなだ。
おそらく本屋にはもう覚えられてる…
ははは柏原〜小説の方は、本編の方がそんなで、前から考えてた来栖先生の話に一時切り替え……

彼氏彼女は合わせて5人…と…なんか、とんでもないいんじゃないかこいつ…と我ながら若干引く…。

この時点で奴は学園物の進行にはふさわしくないんじゃないか??

ていうかもう私のこの小説は、果たして学園物と呼べるのかどうか…とか??

今日切った私の髪型はなんか弾け過ぎなんじゃなかろうか…と か… down

sweat02
もう最近とにかくどろどろで…若干記憶力にも支障が出てきています。
小説におかしなところがあったらどうぞ指摘してください(出来ればやんわり…笑)
すいません、この週のはじめにもっそネガティブブログ…
はあ、
なんか甘いの食べたい(食欲だけはおとろえないのです)。


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番外編「来栖礼壱の場合1」

オレの名前は百瀬穂高(モモセホダカ)、この高校の2年男子。
多分ゲイ。
よりにもよって男に恋をして、満を持して告白し、不幸にも振られてしまった。
その理由が

『彼氏と彼女が他に5人居るから』

…だそうで、5人以上はさすがに身が持たないからハハハと、軽〜くあしらわれ終わってしまったんだ。

相手は来栖礼壱…
バスケ部の顧問で、若きヘッドコーチ。

オレはテニス部員でバスケには何の興味も無かったのだけど、バスケの壮行会に出席した時打ち合わせで初めて出会い、その…人目惚れっての?

好きになってしまった…。heart01


「また君か?しつこいのは好きじゃないんだよな〜」

体育館の緞帳の影に隠れその姿を見つめる…が、すぐ発見され来栖が苦笑いをしながら近づいてくる。

「な、なんだよ! ちがうっ お前を見てたんじゃ無い!!」
「まあ、可愛いストーカーで惜しいけど、子供には興味ないんだ この間も言ったろ?」

来栖は体育館のステージに両肘をついて、オレを見上げた。

「なんだよっ!! オレは子供で一個下の柏原はいいのかよ!!」
「柏原? ああ、君、ユキ君知ってんだ?」

知ってるも何も、ちょくちょく来栖がちょっかいをだす、やけにキレイな顔をした1年…
しかもオレは中学の頃、テニスの地区大会で、1年の柏原ユキという奴に、こてんぱんに敗北を喫したことがあるんだ!!(まさに因縁…この高校で再会するとは)
 

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あんのへなちょこ…

「起 き ろ よ !! カイト!!annoy

春の日差しのあたたかい屋上で、カイトは雑誌を顔の上にかぶせて熟睡している。
その雑誌を払い、顔の上から思い入り怒鳴った。

「…? う、るせ… なんだよユキ オレ昨日あんま寝てないんだぜ」

なお、寝ぼけ眼のカイトの頬を思い切りつねる。

「痛っ!!イタい!ユキ やめっ」
「カイトのせいだからな」
「うわっ なんだよ…なに泣いてんだよ」

カイトがやっと起き上がり、僕の顔や格好にぎょっとする。

「カイトが人前で色々するから…あんな事言われたんだ」

からかわれた。
僕はこの時そう思ってた。

僕の顔に、カイトが思い切り顔を近づける。

「誰に? なんて言われた?」
「……女みたいだって 男が好きなのかって、…カイトじゃなくて自分にしろって」
「だから、誰に」

「……………」

「誰に言われた?」

「…くさかべ…」

なんだか、男なら誰でもいいんだろうって言われたような気がして、とてつもない屈辱。
カイトが真面目な顔で少し伸びてきた黒い髪をかきあげる。

「草壁〜?あんのへなちょこ… ゆるせんな オレのユキによくも」
あ、
「カイト」
「ん?」
「もう一回言ってくれない?」

「許せない オレのユキに」

自分でリクエストしておいて顔が真っ赤になる(なってると思う)

オレのユキって言葉を聞くと、僕はうれしい…

なんだかさっきまでの、草壁の嫌な感じがそれだけで吹き飛ぶような…
涙を拭い、頬を伝ったカイトのひとさし指がそのままおりて、僕の唇に触れ開く。

「やっぱ 最近ちょっと変だな お前…」

舌先で頬の涙を舐められて、そのまま口内にそれが侵入する。
肩が震える。
唾液とお互いの舌先の絡み付く音にはもう慣れても、僕の気持ちは慣れるどころか…まるで初めてそう
したように飛び出しそうな鼓動の音でどうにかなりそうになる。

なんでも許してしまいたくなる…

さっき草壁に背中を触られた時は、気持ち悪くて仕方なかったのに…(ぞっとした)

結局授業に戻る気にはなれず、
カイトに寄りかかって僕はしばらく寝てしまい、(カイトは起きてたみたいだけど)その日は屋上で午後までサボってしまったんだ。

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草壁乱心?

「異様に白いのな 柏原」
「な、っなに触ってんだよ!!!」

更衣室、体育の授業を終えて制服に着替えているところだった。
体操着を脱いだ所に、肩甲骨の辺りを指先で這うように触られて僕は驚いて振り返る。

「女みたい ビクッとなった」

「草壁っ!!お前…」

僕がだらだら着替えていたせいで更衣室には、草壁しかいない。
草壁もすでに制服姿だった。

「な、なんだよ 睨むなって! 褒めたんだぜ?」
「意味がわからない!」
さっさと着替えてここを出よう。
視線を僕から離さない草壁の様子が嫌な感じ…って 焦っているせいかボタンがなかなか掛らない!

「いつもは夏目がべったりくっついてるだろ? 二人きりでなんか話せないじゃん?」

「なんの 話が…?」

草壁と折り入って話す事なんてないよ。
(ちなみにカイトは、体育の授業はだるいとか眠いとかで殆ど出た事がないんだ)

その時草壁がロッカーに手をついて、僕の退路をとざす。

「柏原はさ、男が好きなの?」

?!!!

僕は血の気が一気にひいて、その問いは答えず、着替え半ばで草壁を突き飛ばすように逃げ出した。
その僕の手を、草壁に掴まれる。
いたいっ!!

「じゃあ、あんな奴じゃなくてオレにしない? オレさ柏原が…」
「すっ 好きじゃ無い!!!好きじゃ無い!!! 離せよっ」

引き寄せられそうになって、渾身の力でその手を振り払う。
その拍子に宙に浮いた自分の腕がロッカーにぶつかりスゴい音をたてる。
「あ、おいっ 大丈夫か?sweat01柏… 」
痛い痛いっ!!
カイト カイトカイトカイト…!!!

僕は半泣きで、制服も裾が出たままのだらしない格好のまま更衣室からダッシュで逃げ… カイトの居るだろう屋上へと駆け上がった。

 

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僕が好きなのは…

「って… 敵わねーかなあ オレなんかじゃ」

先輩とカイトを選ぶなんて…
敵わないなんて…
可笑しな話…

「反則じゃねーか? あんな完璧な奴…くそ…」
「カイト聞いてよ…僕は」

カイトの背中はいつもと違う。
僕は僕の気持ちを伝えようとしたけど、なんだか言いにくい空気を感じてそのまま黙る。

言ってしまえばいいのに
こんな時の勇気が無いから僕は前に進めない。
壊れてしまうのが怖くて、いつも保身するばかりで…

「ユキにオレが、名前で呼んでもらうまでどんだけ苦労したか知ってッか?」
だらだら歩きながら、振り向きもせずカイトがそんな話を切り出した。

「はじめて名前を… カイトって呼び捨てにされた時オレ、すげーうれしかった」

「…そうなんだ…」

「なのに今はさ、 色々欲しくなるんだ… 何回キスしても何回抱きしめても、まだ足りないって思う」

「今日は噛み付いたよ………」

「ハハハ!だってユキの首筋がさ、すげーやらしかったから」

また…
熱い…
僕は顔が赤くなるのを感じる。

「まだオレのユキじゃないって、ホントは分かってんだよ」

「変な事言わないでよ カイト」

前を行くカイトとの距離がとても遠い。
さっき肩に触れられただけで、今は手もつないでくれない。
昨日までならなんて事ないことだったはずなのに…

「百合の言った事おぼえてたら気にすんな! ユキを危ない目になんか合わせないからさ…だから」

胸が切ない。

「だから、もうちょとオレの恋人でいて欲しいんだ」


結局この日は、カイトに気持ちを伝えられず、家路についた。(カイトはちゃんとまっすぐ帰っただろうか)

«もうちょっと»ってなんだよ。

まるでそのうち別れるみたいな言い方じゃないか。

僕は今日初めて、心から君を想ったというのに…

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帰宅。

「お母さんに…あんな事言わない方がいいよ」
僕の先を歩くカイトに言葉を投げる。
「……」

答えないカイトの後を、僕は黙ってついていく。
道路の向こうに見える海が一瞬赤く光ってまた消えた。
太陽はもう暮れて、遠くに見える踏切の信号が不安げに点滅する。

僕がカイトを好きだと自覚した日は
なんだかこんなに寂しげな感じになってしまい…
もういっそ夢だったらよかったんじゃないかって思ったりする。

「ユキはいいよな なんていうかさ…家族ってユキん家みたいな感じなんだろうな」

「… 僕の家族は…」
「溺愛されてるっての? オレんちはさ、もうばらばら。 まあ一緒に住んでるばばあは結構マシだけど」
カイトは無理に明るく振る舞っている。
「そうだね…でもこうなるまでに大変だったんだよ? 今だって…」

僕はちょっと躊躇したけど、そのまま続けることにした。

「今だって、僕の家の刃物はみんな鍵付きの金庫に入ってるんだよ?はさみだってそう…」

「え?」

僕は小さく深呼吸する。

冬の冷たい空気が肺を突き刺した。

「なんだかんだ言って、僕の家族はぎこちない… 僕がまた何かのきっかけで手を切ると思ってるんだ」 
「って! ユキ!!」
カイトに肩を掴まれる。
「…だから そう思ってるのは親なんだって。 僕にそんな気がなくたって… でも親がそうしてる限り僕は忘れられない 自業自得なんだけどね」
「お前…しぬなよな」
「ハハ やだな… しなないよ…カイトを残してしねない」
両肩に触れられた両手が僕から離れて、一瞬微笑んだカイトの表情がまたこわばる。

冗談で言ったわけじゃないのにな。

本気でそう思ったんだけどな。


「さっき… 百合に邪魔される前、お前あのまま続けてたらどうなってたかわかってんのか?」
「へっ?!!」
急に体育館での事をふられて、僕は上気して口ごもる。
「へじゃねーよ…お前男に抱かれるのがどういう事か分かってんのかよ」
「ど、ど、どういうってsweat02」 
カイトが頭をかきながら、ため息をついた。

「あんまさ、無理すんな… 次あんなやらしい目でみたらホントにやっちゃうからな!!」

「や、や…やらしいめっ?!!」

違う違う!!

そんな目で見てないっ!!絶対!!!

「それに、そういうのは鷹木よりオレを選んでからにしてくれよ…」
「?!」


 

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恋なんてしてるとは思わなかった

「使いなさい あなた口座に手もつけないんだから…」

夏目百合はそう言うと、自分のバッグから財布を取り出して、カイトに現金を差し出す。
「これで足りないならいつでも連絡して」
どうしてこんな時にお金なんて出すんだ?
僕にはカイトの家の事情は分からない。
でも
今この状況で、カイトが求めているものがあるとしたら…
それはお金なんかじゃないんだよ?
お母さんなのに…

バシっという鋭い音に僕は一瞬目をつむった。

差し出された百合の奇麗な手を、カイトが払った音。

何枚もの一万円札が宙に舞って落ちる。

今さっき僕らが抱き合ってた、体育館の床に落ちる…

ふとよぎる疑問…
さっきの僕らの行為は、まるでこの金銭のように刹那的で空しいものじゃないのか?

「ヤな女…」
「いつからそんな謙虚になったのよ」


二人はしばらく対峙し、そのまま黙ってカイトが体育館を後にする。
残された僕はどうしていいかわからず、その後ろ姿を見つめる百合を見た。

「馬鹿な子ね………」

相変わらす表情を変える事ないまま、百合はつぶやいた。
僕は無惨に散らばった一万円札を拾って、百合に手渡す。

「部活なんてやってるとは思わなかったわ 恋なんてしてるとは思わなかったわ…」
「高校生ですから…」
「そうね 普通の子ならね」
「カイトは普通ですよ」
「あらあら、やあね… これ以上いじめないでちょうだい それに…関わらない方が良いというのは本当の事よ?」

その理由というのを僕はここで聞くべきだったのだろうか?
でも聞いた所でどうなる。
それとも得体の知れないその闇みたいなものに、気持ちが揺らいでしまうのが僕は怖いのか?

揺らぐ?

僕は

カイトが好きだ……

「シャツの襟に血が滲んでるわよ」

背を向ける夏目百合の言葉に、慌てて首の辺りを隠す。
さっきカイトに歯をたてられた痛みが、あやしく疼いた。


  

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亀裂の真下のとある鳴き声

ハッとしてその音の方向を見る。
「いつまで待たせる気なの?カイト 事務員が呼びにきたはずよ」

視線の先には、夏目百合。

体育館の真ん中で、抱き合う僕とカイト…

「青春してるとこ悪いけど、あなた達のセックスが終わるのを待ってる程暇じゃないのよ」

険しい顔を彼女に向けて、カイトは上半身を起こした。
慌てて僕も起き上がり外されたベルトやシャツを直す。

「帰れよ お前の顔なんて見たくない」
「少し時間がとれたの たまにはあなたと食事でもしようと思って…」
「食いたくねーし ユキ帰るぞ」
カイトが僕の手を引っ張り、強引に立たせる。
カイトのお母さんの夏目百合は、その冷たい表情を変えることなく、腕を組んで僕らを見てた。

「あら、貴方… さっきの子ね?」
「えっ?! えと は、はい…」
急に僕に振られた物だから、焦ってしまった。

「あんまり、カイトに関わらない方が良いわよ?貴方の為に」
「百合っ!!!」

カイトはお母さんを名前で呼んだ。
怒鳴るように……

「誰かさんみたいに… 身代わりになって殺されるかもしれないわ」

「え?…………」

「てめっ」

「あっ!!カイト ダメだっ!!」
カイトが殴り掛かりそうな勢いで夏目百合に迫った。
でも百合はひるむ事無く言葉を続けて

「違うの? カイト… 違わないわよね」
「……」

僕の知らない話

殺されたって… 身代わりって…

「誰のお陰でこの学校に入れたと思ってるの?誰があの事件の尻拭いをしてあげたと思ってるの?所詮親のすねをかじってぬくぬくと生活してる甘ちゃんのあなたが、よくも私にそんな態度を取れたものね?」

「お前が嫌いだ… 百合…」
「実の母親よ? あなたには何の不自由もさせてなかったはずだわ?」

「嫌いだ………」

押し殺すような低い声で、そこから感じられるのは心からの憎しみのような
カイト………君は
まだなにか僕に隠してるのか?

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途切れて、揺らめく

そういえば、こうやって抱きしめられるのは久しぶりのような気がする。
キスだってしてない。
僕らはつき合っているというのに、多分それは僕のせいで、触れ合う事さえも普通の恋人より少ないんじゃないだろうか?

僕の耳越しにカイトの鼓動が聞こえる。

誰も居なくなったとはいえ、まだ日のある時間の体育館

誰かに見られるかもしれないというのに、僕はカイトを受け入れてカイトの背に手を回す。

この気持ちはなんだろう。

カイトの様子に違和感を感じながらも、その温もりや匂いがうれしい。

うれしいって?
それだけじゃなくて、なんだかもっと期待みたいなもの

「カイト キスして」
僕はつぶやいた。
願いを口に出す時、心の歯止めとなるはずのものは、なぜか作動しない…

そういえば
僕が熱を出して、カイトと一晩を過ごしたあたりからなんだか変だった。
チョコを作りながら、僕はカイトの喜ぶ顔ばかり思ってた。

僕の発言に少しびっくりしたようなカイトだったけど、それには何も言わず、抱いてた僕の肩を一度離して、もう一度引き寄せながら今度は僕の口を塞いだ。
「んっ …」

僕は初めて、自分から顎をあげて
カイトの唇を、僕を優しく探るような熱い舌を受け止める。

カイトのキスが好き。
力を込める大きな手が好き。
子供っぽいところや、大人びている所も好き。

「はっ …っ カイ ト!…っ」
苦しくて思わず口を反らす。
しゃぶりつかれるように激しくキスされて息がつまって…

「ユキ!」

次の瞬間カイトが僕の肩と首の間あたりを、甘噛みとは言いがたい程つよく歯をたてた。

「いっ 痛いよ! いたいっ」
「なんで誘惑すんの? オレだっていつも我慢出来るわけじゃないのに」

腰ががくがくしてその場に落ちる。
その上にカイトが覆いかぶさり、僕のシャツをむりやりたくし上げる。

「オレ、…今日大人に振る舞える程、余裕ないんだぜ?ユキ」

僕の胸や腹を長い指で伝いながら、さっきの歯をたてた場所を舐める。
その手がベルトの辺りまで降りてきて…

「カイトっ! っちょっと待ってっ」

「黙ってろ…」

その口でもう一度キスされる。
血の味、僕の
「カイト!僕は…」
そう僕が何かを訴えかけた時、体育館の右前の出入り口がガラガラと開いた。

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今日もお疲れ様です(ウメ)

管理人のつぶやきです。BL小説記事ではありません。…ふう

どうも、ヘタれ乙女梅田ウメキチです。
いつも記事の閲覧ありがとうございます。最近はBL小説の方が立て続けなんでカテゴリつぶやきは久しぶりな感じです。

えーと、誤字、脱字…ホントすいません。
昨日、またおかしな所をまた発見したんですけど(わけ分からん単語がsweat01)メンテ中の為更新が出来ず今日慌てて直してます。

私の文章大丈夫ですか?日本人としてなんとかなってますでしょうか(汗)
同人では漫画しか描いて無く、勿論状況説明や感情表現なんてちょっとしか使いませんし(少なくとも私のへぼ漫画では)…

こんな不安の中で日々更新しつつ、怠け者がこうまめにアップできるのも閲覧にきてくださる皆様のおかげです!happy02
ほんと嬉しいっshine

先日友人から、柏原の同人本はまだ出さんのかと無責任な(そして適当な)要望がありました。

え?

…私、小説ジャンルで参加するって事?…

今年の新年の抱負として実際そういう希望はあった事はあったんですけどねcoldsweats01
実際やるとなると…はは(弱気)
不安不安… 昔知り合いに頼まれて売り子では参加した事がある池袋のイベント、迫力あったなあ…

でも、18Rの部分の番外編は絶対形にしたいのです!
展開上、避けては通れないので…
でもそうなると同人に参加しない方には読んでいただけないし、とか、いろいろ
小説って原稿普通に作ればいいのかしら(漫画原稿と一緒?)
データなら難なく入稿できるのか?
不安… はあ

あっ 柏原ブログの投票で、カイトの7、3に票が入ってる!!
王子的ですから、ウメキチ的にも結構ありです(笑)。

今宵のBGMは平井堅のアルバムです。
とっても素敵heart04大好きッす!
コレを聞きながらカイトのイメージを膨らませてます。

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おかしな感じ…

「くっそ…また」

バスケットボールがバックボードにはじかれて、落ちる。

さっきからカイトが何度シュートをしても、ボールは全く入らない。
他のバスケ部員は練習を終えてさっさと体育館を後にしたというのに、それから1時間以上も、カイトは残って練習を続けていた。

「カイト もう帰ろうよ」
カイトは答えない。

明らかにいらだっているような、表情。

「カイト!!」
「…………」

体育館の天窓から、暮れかかった夕日が差し込む。
カイトがちょうどその光を浴びて、なんだかそれが切なく感じた。
とても寂しそうに見えた…

「いっしょに帰ろうよ」
僕がそう言うと、カイトは一瞬天井をあおぐ。

「ごめん ユキ」

つぶやいて

僕のそばに近づき

手を引いて

僕を つよく 抱きしめる。

カイト?……………

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夏目百合

「こんにちは 理事長室はどこかしら?」

放課後、僕が1階の廊下を歩いている時だった。
背後から、背の高い女の人に声をかけられた。

目の覚めるような青いスーツを着こなして、高いハイヒールを弧気味よく鳴らして

「あ、5階ですけど エレベーターがこの先にあるのでそれで」
「そう、ありがとう」

ただの美人とは言いがたい、艶やかな面持ち、品のある仕草…一種の特別なオーラ。

「あ、夏目百合だ……」

そばにいた、女子が瞳をまるくして唖然としている。
夏目百合。たしか結構知られている女優で…TVドラマによく出てる。

「なつめ?」

僕に笑いかけたあの顔
えっ?!
僕は彼女の容貌が、カイトにとても似ている事に気付いて動揺した。

カイトが家の事情で叔母さんと生活している事は知ってる。
でも
まさか…

夏目百合の残した物か、廊下にほのかに甘い香りが漂ってる。

印象的な彼女の赤い唇

隙のない完璧な笑顔(まるで今まさに舞台に立っているみたい)

«お母さん»のイメージとはほど遠い、なんだか雲の上の別の生き物。
カイトはこんなに有名なお母さんの話を、一度もした事がない…………。

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プレゼント

やっぱり引いてるのか?…
さすがに男にバレンタインチョコをもらうなんで気持ち悪かったかな?
しかも気合い入れて手作りだなんてさ…

駅に向かう途中カイトはずっと黙ったきり(機嫌が悪いっていうより、なんか落ち込んでいるような感じ)
僕だってどうかと思ったんだ!
でも、サクが絶対チョコがいいって言うから! …いや人のせいにするのはやめよう(乗った自分がいけない…はあ…)

「あの …嫌だったら捨てていいから! あの、別に重いもんじゃないから!だから…」
僕はたまらずカイトに訴える。
「だから… 元気だせよ 誕生日なのに… これじゃ」

これじゃ僕が、カイトの誕生日を台無しにしたみたいだ…

「…手作りなんて はじめてもらった…」

ぼそっとカイトがつぶやく。
気をつかってるんだろうな…

「い、いや〜カイト ゴメン…もっと気のきいた物買えば良かったんだけど …って高いものは無理だけどさ、ハハ…」

「なんかさ、昨日の夜ユキがオレの為にこれ作ってたと思うとさ」

「あの、溶かして固めただけだけで… あの、自分も食べたかったんだよ」

「…うれしいもんだな プレゼントって」

まるで初めて«プレゼント»をもらったみたいな言い方だ。
うなだれていた顔を今上げて、僕を見た笑顔は、ドキリとする程優しかった。

「これさ、世界に一個だけのチョコだよなー すげーよな! オレすげーうれしい!」

「カイト?」

僕は少し驚いた。
カイトがチョコの箱を持って、子供みたいに喜んでいる。

たかがチョコだよ? さっきまで考え込んでたくせに 

いつものカイトとは違う違和感…?
笑うカイトの表情の裏に、なぜだか痛みみたいな物を感じて…
僕はなんだか、不安にかられた。
 
 

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ユキの極めてBL的発言

夏目カイトside

気にいらない…
ユキの事…鷹木に言われなくたって分かってる!
大体あいつ、自分でユキを振って泣かせたくせに偉そうな事…!!

「………カイト なんか疲れてる?」

部活の帰り、ユキといつもの海沿いの歩道を歩く。
だいぶ日が延びて、海の向こうにはまだ、夕日が赤々と照らされていた。

「え、あ いや…疲れてねーよ」
「ずっと黙ってるから」
「そーだった? 悪ぃ…ちょっとボーッとしてたかも」
「ふーん… ねえカイト!」
ユキが突然ニコッと笑って、そしてハッとしたように辺りをキョロキョロ見回す。

「どうした?ユキ」
「カイトにプレゼントがあるんだ」

周囲に誰も居ないのを確認すると、もう一度眩しいような笑顔でオレを見上げる。

「え? なんで」
「なんでってカイトの誕生日じゃないか …恥ずかしくて学校では言えなかったけどさ」
そう言うとユキはうつむく。

耳まで真っ赤になっている。

「ああ… あ、そっか オレ忘れてた」

「あのね!どうしようかと色々考えて…多分カイトにはコレが一番いいんじゃないかと思って」

「オレには?」

なんかユキがもの凄く照れながらしゃべるもんだから、オレもだんだんドキドキしてきた。

「…カイトはコレが一番欲しいんじゃないかと思って…!!」

えっ?!

「でもごめん!! あの…僕初めてで なっ…なんかスゴく固くなっちゃって どうにもならなくて!!」

ええっ?!なにが?!

「はっ ゆ、ゆゆゆゆっユキ!! ま、まさか! 固いって…」
オレは混乱気味でユキの肩を掴んだ。

Xデー?!
きちゃった?!
しかも大.胆.発.言!!!heart04

「大丈夫だよ!ユキ! オレが今すぐどうにかshineしてやるから!!」

「…………は?」
「はって?」

ユキが首をかしげ、なんだか冷たくオレの両腕を振り払い、自分のスクールバックをごそごそと探る。

「はい! オレの生まれて初めての手作りチョコレート!」

うわああああああああああああっ!!!

「はははは…ありがとう ユキ……」

「わっ なに?!なんで泣くんだよカイト!!」
 

 

 

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イラスト「中学時代-ユキ晴彦-」

私の描いているBL小説のキャラから、中学時代のユキと晴彦です。
背後に本来居るはずのない誰かが歩いてます(笑)。この人はいったい誰でしょう??


Photo

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高校男子の例外

夏目カイトside
 
チョコの数で張り合いたいわけじゃないけど、オレだって結構な数もらってんだぜ?
さすがに自分で収納袋を用意するほどじゃねーけどさgawk
まあ、女なんて、結局こいつみたいな真面目そ〜な奴が(真面目すぎて異常じゃねーのか?)好きってことなのか?

「鷹木さんさー ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「なんだ? お前と違って暇じゃないんだから下らない事は聞くなよ」
………annoyオレだって今から部活だよっ

「…… あんたさ 女に欲情する事とかねーの?」

だって謎だろ?!
高校男子だぜ?!
いくらこいつだってエロい事の一つや二つ…

無い……馬鹿が……」

「なっ 無いのか?!!sweat02

鷹木は露骨な感じで嫌そうに目を細めてオレを見ると、背を向けて立ち去ろうとした。
立ち去ろうとして、また少しだけ振り返る。

「夏目!」
「なんだよっ」

「柏原を、ちゃんと見ててやってくれ」

「あ?」
「あいつは…自分が辛いときでもそれを隠す」
「………」

「傷は癒えてない… 柏原を好きなら、出来るだろ?」

なんだよそれ…

まるでユキの事をすべて分かってるみたいに

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2月14日の話

夏目カイトside

それは2月14日の放課後。
いつものようにユキと帰りの待ち合わせをして(毎日やや強引に待たせてるんだけど…だって少しでも一緒に居たいし!)、部の更衣室を出て、第二体育館へ向かう。

風が冷たい。
猫背で走って行く途中で、オレの目に否応無しに飛び込んできたのは、正面から歩いてくる«鷹木晴彦»。
今から部室連へ向かう途中だろうが… なぜか両手に大きな紙袋を重そうに下げている。

あいつもオレに気付いて、視線がぶつかる。

が…

鷹木はまるでオレに興味など無いとでもいうように、視線を外し…そのまますれ違う。

「うおいっannoy!!! まるで無視かよっ!!」
その態度があまりにイラッときたので、思わずつっこんでしまった。(手のアクションまで付けてしまった)

「……… なにか用か?」
その鷹木は振り返り、無表情でオレを見る。

「無視はねーだろっ! 感じ悪いな! せめてメンチのひとつも切れよ」
「……メンチ?なんだそれは?…揚げ物の話か?」
むかつくっ〜!!
だから賢い奴は嫌なんだよっ…っと…ふと鷹木の持つ紙袋が目に入る。
中から色とりどりの箱が溢れている。
「なに持ってんだよ? それ」

「ああ、チョコレートだろ。今日はバレンタインだからな」

なにっ!!!

「そ、それ全部、アンタの?」
「オレの下駄箱やら机やらロッカーやらに詰まってるんだ… 直接渡される物は断るんだが」
詰まる………。
「で… 紙袋持参かよ」
「毎年の事だからな 学校で捨てるわけにもいかないし… 分かってる事なんだから準備をするのは当然だろう?」
自慢するような言い回しは全く無く、表情も変えず淡々と答える。

ああ… ユキの奴…こんな男の何処がいいんだろう。 

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墓場鬼太郎最終話。のつぶやき(サク)

つぶやきです。BL小説記事ではありません。
先日アニメ墓場鬼太郎が終わってしまいました。

はまって以来、原作の文庫本も読破していましたので大体の展開は分かって元話も好きなストーリーでしたが…それでも最終回は、アニメ墓場の魅力マンサイですばらしかったとおもいます!

金や権力や命や、または生活苦から放たれた人間達が、地獄で千年に一度だけ歩くという巨大な鳥に感嘆の声を上げる。
一方で、人として生きる事を念願していた影なる存在は、現実の苦しみを殻を得た事で背負わされることになる。
そしてそれを冷めた目でみつめ、それでも生きる為に人間界に消えて行く鬼太郎達の背中。
原作が持っていた思いが、最終回で爆発したような感じさえしました。

もう見られないんですよね。
哀しい…だからDVDは絶対ゲットしたいです。(初回限定のストラップ?も欲しいし)
…で、もちろん感動して、うすうす分かってはいましたが私の大好きなheart04水木氏』(遅刻魔で鬼太郎の育ての親)は水神に食われて以来とうとう復活しませんでした(涙)。

原作でも登場しなかったので仕方なしとは思うのですが、乙女水木(※私が勝手にそう呼んでいるだけです)もう一度会いたかったweep水木フォーエヴァー!!そしてさよなら、ダーク鬼太郎!!
また楽しみが一つ減ってしまいました。

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番外編「初恋の終わり」

病室の窓は外も見えない程、白く曇っていた。

「勘弁してよ… なんで鷹木先輩が…ここにいるの」
「…………」

「やだなあ… なんで先輩が泣くの?」
「…………」

眠りから目覚めて、ベッドに横たわる柏原の顔がどうしても見られない。
涙があふれる、こらえる嗚咽のせいで顎が震えた。

「先輩 …僕、夏の花火の夢見てて きれいだったなあ…」

「オレは…お前が辛いのを…気付いて やれなくて…」

「バカだな僕は…しんだらもうみれないのにね…」

薬が効いている。また静かな寝息が聞こえてきた。

オレは涙と鼻水でドロドロの顔のままで、やっと柏原を見る。

ああ、やっぱりそうだ。

あの頃の面影…あの女の子は母親にユキと呼ばれていて…

ひまわりみたいに笑って…

それはオレの初恋で…

再会を果たし、オレはその子を守りきれず…間抜けな顔をしてここに居る。
「ゴメン… ゴメン 柏原…」

オレの恋はもう終わりにしよう。
そのかわり柏原が幸せでいられるように、今度こそ君を守るって誓おう。
一緒に生きて行こう。
君がオレを、不要とするようになるまで…

柏原…君は特別な存在だ。

【鷹木晴彦の初恋】終

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番外編「鷹木晴彦の初恋3」

「なんでいつもついてくるんですか?…朝も、昼も、帰りも」
«柏原ユキ»がさも迷惑そうな口調で文句をいう。

「だってさ オレが知らない所で君が殴られてたりって思ったら…気が気じゃないから」
「殴られたって…別にアンタを恨まないよ」
「…… 部活は大丈夫か?」
「まあね はあ… ホント…鷹木センパイって変な人だね」

振り返って、困ったような苦笑い。
その肩には 黄緑色のカバーに入ったテニスラケットがかけてあった。


梅雨が明ける。

そのうち柏原から刺々しい態度が消えて、オレ達は兄弟のように親しくなった。
柏原は良く笑い、オレも慕ってくる柏原が可愛かった。

8月には一緒に花火も見に行ったっけ。
家に泊まって勉強もしたし、じゃれあったまま眠ったりもした。

けど、楽しそうに振る舞う柏原の本心をオレは全く見られていなくて…

過信
傲慢
怠惰

オレは柏原に出会い(再会し)必ず守ってやろうと思ったのに
でもそれは、その気持ちは…人一人救うにはあまりにも安易なものではなかったか?

「うそだろ……」

その年の冬、柏原は手首を切った。
自宅の風呂場で気絶した柏原の隣にはガットを切られたラケットが置いてあったんだって…


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番外編「鷹木晴彦の初恋2」

うそじゃないよ。
お前は忘れて、オレは忘れなかった…
なんでか分かるか?
いや、分からなくてもいいんだ…


「ねえ僕、この辺に和菓子屋さんがあるって聞いたんだけど」

ジーイジーイと蝉の声が鳴り響く夏の日だ。
オレはまだ7才か8才か… 親に頼まれた用事を済ませた帰り道、後ろから歩いてきた女の人に声をかけられた。

その人の両方の手には、真っ白なワンピースを着た双子の女の子。
一人は、子供には似つかわしくない分厚い本を抱え、もう一人はウサギのぬいぐるみを大事そうに抱いている。

まるで人形みたいなキレイな双子の姉妹。

その和菓子屋が自分の家だというのが分かったので、僕はその人を案内した。
店に着くと、店前に遊びにきていた従兄弟がいた。
僕の母親と女の人が話に夢中になると、本の方の少女は従兄弟達と一緒に遊び出した。

もう一人のウサギの方は…
そういう遊びには全く興味がないのか店先の端にしゃがんで何かを見ている。

「なに見てるの?」
「…ひまわり きいろいのきれい」
鉢に植えられたヒマワリが空を仰ぐ。
少女がいとおしそうにそれを見つめている。
「ひやしあめ飲む?」
「うん!!」

あめを冷たい氷水でうすめて、ほんの少しだけしょうがを混ぜる。
僕はそれをつくって、少女の横に座り一緒に飲んだ。
横に座った少女がコップを両手で高々と掲げる。

「こうやるとね お空が氷に映るんだよ」

氷が溶ける音がする。
水滴の先にゆらゆらと空と入道雲が映っていた。
「ほんとだ」
「ね〜 きれいだね〜」

コップの先に見えたのは、今まで気付く事の無かった美しい世界。

大げさなようだけれど、

僕は…
…オレはその映像が
一生忘れないだろう、もっとも美しい記憶になったんだ。


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番外編「鷹木晴彦の初恋1」

中2の頃、梅雨もまっただ中の6月。
けれどこの日は、昨日までの鬱陶しい雨を忘れてしまったかのような青空だった。

放課後、ふと一階の廊下から校舎裏になる外を見ると、複数の男子生徒が一人のやはり男子生徒を取り囲んで暴行を加えている。

「おいっ!!何してんだよっ!!やめろっ!!」

オレはとっさに窓ガラスを開けて叫び、その窓から外へ飛び降りる。
「あ! やべー 逃げろっ!」
オレを視認するやダッシュでその場から逃げていく。

点々と地面に落ちる血液。
殴られた男子生徒は膝をついたまま、荒い息をしつつ動けないでいた。
シャツに滲んだ血と泥の跡が痛々しい。

「大丈夫か? …何処殴られた?」
「あんた…誰…」

かすれた声でそう言うと、そいつはその姿勢のままオレを見上げた。

栗色の頭髪、透けるような肌、睫毛の長い大きな目に…細い身体

「だれ?」

もう一度、聞かれてハッとする。
「…2年の…鷹木晴彦、君は1年か… 酷い事するな」
「鷹木… 生徒会…副会長」
「…医務室行こう、立てるか? なんだよ アザだらけじゃないか」
「こんなのは…なんて事ない」

息を整え、ふらふらと立ち上がる。

泣くでもない。
痛みを声に出すわけでもない。
その少女のような、か細い身体で

«1-A 柏原ユキ»
胸元のプラスチックの名札にはそう書かれていた。

それが中学でのオレと柏原の出会い。

だけど柏原、オレ達はとっくの昔に会っていたんだ。
お前は、忘れてしまったかもしれないけど………


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カイトが欲しいもの

「は?」
「は?…ってカイトの誕生日だよ 何が欲しい?!」

カイトは僕をちょっと見てから、それには何も答えずバスケシューズをぶら下げてドアの方へ向かう。
「ちょっとカイト!」
僕は慌てて立ち上がって、呼び止める。

「… 別にねーな オレこれといって欲しいものが無い」

「えっ?! な、…何か有るだろ?!なんでもいいから!」

「そう言われてもな〜」

意外と無欲なんだな………なんだかちょっと寂しくなってきた。

「カイト…」
「もしかしてユキがなんかくれんの?」
やっと興味を示したみたいに、急に振り返る。

「そうだよ! 何? 何が欲しい?!」
「なんでもshineいいの?」

「うんっ!!!」

なんだかスゴくドキドキして、僕は期待の眼差しでカイトを見上げた。
するとカイトが持ってたシューズを床に置いて、僕の肩を両手でぐっと掴んで…

「じゃあ! オレ、ユキとセ…」

「なに?!『せ』?!」

その時ガチャとドアが思い切りよく開いた。

僕と僕の肩を掴んだままのカイトが、そっちの方を見ると、入ってきたのはクラスメートでバスケ部員の«草壁»。
「悪ィ悪ィ」
そういいながら、僕らの間を分け入るように通り自分のロッカーへと進む。

僕は視線を草壁からカイトに戻して、もう一度同じ事を聞いてみる。

「『せ』のつくもの? 何?!」
「……………………。いや やっぱ 無いかな」
「ええええー?!」
カイトに喜んで欲しかったのにな。
期待が外れて、僕は小さくため息をついた。  

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熊男に?それは…無いな

同じ学年とはいえ、何ヶ月も僕の方が先に生まれているのに…
カイトとの身長の差はもちろん、黙っていれば随分大人びて見えるカイトの表情や仕草
僕の方はというと…身長はさすがに伸びたものの、この女みたいな容貌は全く変わらない…

「いいなあ カイトは」
「なんだよ?」

バスケ部更衣室。
昼休みの事をふと思い出して、バスケ用のTシャツに着替えるカイトの、足下の椅子に座りながらつぶやく。

「あと、どれくらいしたら僕、父さんみたいになれると思う?」

「へ?!」

大学講師の父さんは、空手の有段者でたくましくて男らしくて、僕のあこがれの将来像だ。

「僕は男だから、そのうち父さんに似てくると思うんだよ」

カイトが着替える手を止めて、ぽかんと口を開けて僕を見下ろす。

「………… えと、多分ユキは…その お袋似じゃ…ね?」
「今はそうでも、きっと少しずつ…」
「いやあ… 無いな それは 多分…いや無い」

言いにくそうに、でもはっきりと希望の芽をつまれた感じだ。
なんだよっ!

僕がふくれて黙っていると、クククと笑って僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「今日は校内にいろよ まだ具合が悪いんだから…特に…絶対浜はダメだからな!」
「…わかった…」
「ハハハ! 素〜直! あ、でも辛かったら帰っても…」

「カイト」

「ん?」

あぶない…うっかり聞き忘れる所だった。

「カイトは誕生日 何が…欲しい?」

昼にその話を聞いてから、僕はカイトが喜ぶものをプレゼントしたいって思ってたんだ。

  

 

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昼の屋上での一場面

昼休みの屋上、晴天、風も無く2月にしては暖かい。

「まだ食欲ないの?ユキ」
「うーん 食べちゃうとなんか気持ち悪くて」

僕は購買で買ってきた、パックのオレンジジュースのストローをくわえながら答える。
横に座るカイトが僕をじっと見る。

「………… つわり?」

ムカannoy

「なわけないだろっ!」
「あははっ 冗談冗談! はたくなって 痛い痛い!ははっ」
そう言って受け身をとったあと、カイトが僕の手をつかんで身体を寄せてくる。

「みかんのいい匂いがする」

「………」

「ずっとチューしてない… いい?」

「ダメ」

「え?ええー?!!!!

「風邪が感染るからダメ!!来週試合だろ?体調崩してる場合じゃ無いんだから」
僕は毅然と言い切ったが、カイトはなおも諦めず身体を離さない。

「感染らないよ それに試合なんて別に」
「カイト!子供じゃないんだから …とにかくキスはダメ」

何だかカイトは涙目になって、(ホントに子供がすねるように)僕に背を向けて体育座りでうつむいた。
「…だって実際オレ、ユキより子供だし」

年下だって言いたいのかな?

…………………

年下?!
「え? あの精神的なって…事?いや、そんな事無いと思うけど…」

「…まあ、今月やっと同い年にはなるんだけどさ…」

「今月?!!」
「えー ユキ知んなかったの?オレ2/14が誕生日だから」

初耳だよ…カイトが、僕より年下だったなんて……


 

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朝の教室での一場面

「これ… 休んでた日の分…よかったら使って」

僕が1時間目の準備をしていた所で、ノートを差し出したのは«若菜»だった。

クラスでは、なぜか僕が若菜を『ふった』という事になっていて(告白されたわけでもないのに)…あの日以来、若菜は一切僕に話しかけてこなかった…気がする。

「あ、でも…」
「気に…しないで 私、学級委員だし 変な意味じゃないから」
若菜は笑っていたけど、やっぱりぎこちない感じ
いくら責任感から出ている行動とはいえ…もう嫌いになったであろう不誠実な相手への親切心には頭が下がる。
カイトのモデル雑誌の件で、つき合えと言われたときは、恐怖めいたものを感じたりもしたけど…

「ありがとう …若菜さん いつもいつも」
「どういたしまして」

席に戻る彼女を確認してから、さっきから僕の背後につきささる視線の先へゆっくりと振り向く…
カイトが頬づえをついてこっちをジッと見ている。

やっぱり……

とりあえず、カイトの気持ちを計るように愛想笑いcoldsweats01をしてみる。
ああ…不機嫌そうだ……

気に入らないのは、多分この若菜のノートだ。

実は今朝カイトから、カイトなりに必死に書いたと思われるノートを受け取っていたんだ…

だって…!

断れないだろ?!さっきの状況!!
(断ったりしたらまた女子に鬼とかいわれるんだっ)

僕は口には出さなかったけど、心で必死にカイトに叫んだ。

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だって約束しただろ

いつの間にか朝が来た。
カーテンのスキマから光が差し込む。

カイトと父さんの間でちょっとしたもめ事があったみたいだけど、それも丸くおさまって…

父さんが食事をつくりに部屋を出る。

僕は起こしていた身体をもう一度ベッドに横たえて、大きく息を吐く。
まだ熱があるみたいで息苦しい。

「大丈夫? なんか食べたらまた薬飲まないと」

フローリングに膝をついたカイトが、心配そうに僕を覗き込んだ。

「カイト…」

「頭に貼る奴…交換するか?それとも水飲む?」

「ずっと…寝てなかったの?」

カイトの目は真っ赤だった。
少し疲れてるようにも見えて…

「ああ、まあ… 隣でユキ見てただけだしさ それにオレ授業中睡眠取ってっから夜は強いんだ」
そういってカイトが笑う。

「ずっと側にいてくれたの?」
「だって約束しただろ?」

「そう…だっけ」

僕は何を言ったか、昨日の事はとぎれとぎれでよく思い出せない。
それでも僕は、カイトが今ここに居てくれる事がとてもうれしかった。

カイトが僕の手を握って唇によせる…

「はやく良くなって ユキ…」

筋のきれいな大きな手
僕はうなずいてその手を握り返した。  

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ショックだ…

夏目カイトside

生まれて初めて根暗って言われた…………
ユキは似合うって言ってくれたけど、やっぱりこの黒い髪のせいなのか??
アサヒにも、部活中つきまとってくる女子にも、うちのババーや妹にもさんざんな言われようだったし…

でもユキは似合うって…………!

「父さん、カイトはずっと僕を看病してくれてたんだよ」

ユキが昨日からの状況を説明して、やっとおやじは納得してくれた。

「ユキすまん! パパ昨日は遅くてユキの顔見ないで寝ちゃって」
「…いいよ それよりカイトにタクシーのお金払ってくれないかなあ カイト僕を家まで連れてきてくれたんだよ」
「カイト君!!!アリガトウ!!!」
「う わっ」
ユキの親父が今度は号泣しながらオレに激しく抱きついてきた!

ああ…………1日に2度もオレの美学にそぐわない抱擁をしてしまった………
大体(オレの)ユキの何処に、この熊みたいなおっさんの遺伝子が受け継がれているのか…

こんなに愛されてるのに

逆にオレなんてさ
虫酸が走るほどむかつくあの女と顔そっくりなんだぜ?

おかしな話、しかもあの女最近は電話もしてこねー 別にいいけど。

「あの…お父様 根暗って ひょっとして僕…ですか?」
食事の支度に部屋を出ようとした、ユキ父に聞いてみる。

「ははははっ! 気にするな 真面目な青年って言いたかったんだ! あんまり勉強ばっかりするなよ〜 彼女出来んぞ!はははははっ!」
!!!
「カ…カイト?どうしたの?」

ショックだ…

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父、カイトに一撃をはなつ

夏目カイトside

トイレの前で抱き合ったのは、身長180は超えるオレと…パっと見レスラーのようなひげ面の屈強そうなおやじ……

ぎゃあああああああっ お前誰だっ?!オレの家のトイレで何をしてるっ?!

相撲のような張り手で突きとばされる。
間髪いれずにボディーへのコンボを入れられそうになるのを、腕で3回ガードした。(マジでレスラーかよっ)

「おのれっ貴様annoy!!」
「あ、ハハハ お父様?ですよね あのオレ、ユキ君の友達で」

わりとオレの方が事態を冷静に受け止められたみたいだ…(ほら今気持ちが大きくなってるから)

それにしても…………

「ああっ!? お前にお父様呼ばわりされる筋合いはないわ!!」
「で、ですから オ…僕、夏目といいまして」
「はっ! ユキ?! ユキーユキー無事か?!ユキー

完全に取り乱した柏原父はそう叫びながらばたばたとユキの部屋に駆け込む。

完全に不審者扱いだ……

オレ、見た目そんなあやしくないと思うんだけど。

「ユキー!!!根暗そうな大男がっ!!!」
?!
大男はともかく…根暗そうって? 誰のこと?

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父、登場!!

夏目カイトside

今までにこれ以上の辛抱はした事がないんじゃないかと思うほどの、激しい苦痛の一夜…
眠るユキの隣で身もだえながら一睡も出来ず(…徹夜はどうって事はないのだが)朝になってしまった。

しかし…

むなしい……

空いた片手で始末しようとも思ったが、無防備で眠るユキを見ると…この部屋で勝手にそんな事をするって方が罪深いような気がして、出来なかった。
(しかもこっちの手でユキの熱とか計らなきゃならないし)

明け方にやっと腕をユキに解放されて、そっと部屋を出て、慌ててトイレに入り腰を折る。

「うっ ああ… くそ」

ようやく解放されたのに、情けない自分の様を思い出してなんか涙目になってしまった。
こんな姿は絶対誰にも見せられない!
特にアサヒなんかにはどう罵倒される事か

それでも終わった後は大草原に立つような清々しい気持ちになり、ホッとしてトイレのドアを開ける。

けれど開けた瞬間に、本当の地獄は訪れた…………

ユッキちゃ〜ん!!!! おっはよ〜!!!♡♡♡」

なっ何っ?!!

オレは突然、ひげ面のマッチョなおっさんに抱きしめられたんだ!!!

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耐え忍ぶ

夏目カイトside

理性と本能との壮絶きわまりないバトルに苦しむオレを知る由もなく…(知られてもこまるのだが)薬を飲むとユキはそのまま眠ってしまった。
辛そうなユキの表情が、またバカなオレの妄想をかき立てる。

不潔っ!!!!!

その妄想の中でユキにそう叫ばれた気がして、ハッとする…

不潔………………weep

ほぼ痛みみたいになってきて、たまらずトイレをかりてその場をしのごうと立ち上がろうとした…が、ユキがいつのまにかオレの腕をつかんで離さない。

上下に振る。

横に振る。

上下左右に激しく振る!

離してくれない………(ユキの奴ホントに寝てるのか?)

その時、ユキの左手首の裏が目に入った。
前にも見た幾筋にも走る痛々しい傷……

『お前にオレと柏原の何が分かる』

あの時そう言った鷹木は、ユキがこの傷をつくった時、ユキを全身全霊で守ったんだってさ。
なのにあいつはユキを拒絶した。
なんでだ?
なんで…って オレが気に病む話じゃないけど

ユキの中の、清廉潔白な鷹木晴彦と
ユキの隣で欲情してる、みっともないオレ…

オレは、それでも萎えない自分に重いため息をついた。

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ユキの背中

夏目カイトside

「… 行かねーよ お前が寝るまでちゃんと看てるからさ」
潤んだ大きな目で、ユキがオレを見つめる。
わかってる
こんな事ユキがいうのは、熱のせいだってこと

なあ、今日だって
鷹木と逢ってたんだろ?

「ほんと?」
「ほんと。 ほら、オレに脱がされるのが嫌なら自分で着替えろ」
「……うん」
安心したのかユキがにわかに微笑む。

ベッドの上には奇麗にたたんであるパジャマがあって、手を伸ばしたユキにわたす。

上体を起こしてシャツを脱ぐユキ。

男のくせに色白で、キメの細かい奇麗な背中…それでいて骨格や筋肉のつくりはやや華奢ながらも女のそれとは全く別のもので…
時折聞こえる、ユキの辛いような深い息づかいが…オレの胸や…その、下の部分に強くズクンズクンと脈打つような感覚を覚えさせる。

実際、男の裸なんて何人も見たし、経験もして慣れてるはずなのに、今は理性がふっとびそうでとても正視が出来ない。

結ばれたい相手がこんなに側に居て

嫉妬のような言葉を囁いて

ましてやオレの前で裸同然の姿でいる。

今すぐ強く抱きしめて、深いキスをして、そのままオレの欲望を何度もユキに刻み付けてオレだけのものにしたい!

けどそれを必死で耐えるのは
ユキがまだ、«あいつ»を好きだからなんだ…


 

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カイトとふたり、

意識もあやふや
急に悪くなるにしたって、今じゃなくてもいいじゃないか

救急車だけはやめてって
いつもの風邪だから
大げさにしないでいいから
少し休んだら、ちゃんと歩けるから…

そんな事をとぎれとぎれに言う自分の頼りなげな声

誰に
誰に

ああ、カイトが隣に居るんだった………


はっきりとその場を自覚したのは、カイトに抱きかかえられて自分のベッドに寝かされた時だった。

「ユキ、なんか誰も居ないみたいなんだけど」
「え? ああ…… そう 母さんは旅行行っちゃって… サクは、珠子の家に…泊まるって」
「親父は?」
「いつも遅いから… いいよ 平気だから 帰っていいよ」

自分で言いながら、少し不安になる。

薬飲んで、頭冷やしとけば大丈夫かな…

いったい何度あるんだよ… さっきから寒くてしかたない。

「ばっか! 帰らねーよ! とりあえず着替えて… 薬、薬どこにあるんだ?」

「いいから… カイト、帰れって」

僕の言葉に耳もかさず、カイトが僕のシャツを脱がそうとする。
ボタンの外し方が手慣れてる気がして、なんだか嫌な感じ……
それでやや朦朧としながらも、僕はその手をふりはらった。

「ユキ! お前ほっといて帰れるかよ!ほら!大人しくしろって」
「どうせ…」
「なに?」

「どうせ…携帯が鳴ったらまた行っちゃうんじゃないか…」

こんな事言うつもりなかったし、あの時の事を気にしてたわけじゃないのに

きっと熱のせいで

僕はどうかしているのかもしれない…

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電車がいってしまった

「ユキ熱あるだろ!」

「え?」

もう一度言われて、僕は自分の頬を両手で触る。

「無いよ…びっくりした 大丈夫」
僕は一度体調を崩すと、ハンパ無く悪くなる事が多い…
去年の秋にも散々な目にあっているので風邪だけは勘弁してほしい…

顔は熱くない。
寒気がするのは浜で冷えたせいだろう。

「いや、いやいやいや…」
カイトがもう一度僕の手を握り返し、確認するように頬やおでこを触る。
極めつけは…人目もはばからずに自分のおでこを僕のそれに重ねてくる…

「…………あのさ、カイト 今更僕はあきらめがついてきたんだけどさ… こういうのは知らない人が見たらびっくりするから…」

「絶対あるっ!!ごめん…オレが待たせすぎたからだ!」

「聞けよっannoy それに浜で待ってるのは僕が勝手…」
そういいかけた所で、急に目の前が真っ白になって僕は膝から折れた。
カイトが支えてくれて、卒倒せずにはすんだのだけど…

「ユキ!!!」
「や…だな、どうしたんだろ オレ」
カイトの腕にしがみつく。
頭がぐるぐるまわる。

しぬのか…?しなないよ!何言ってんだ僕は…全く

ああ、だめだ 

カイトの声が遠くなる………

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…誰といたの?

「ユキ なんか今機嫌良くね?」
「えっ?!な、なにが?!」

カイトの部活帰り 駅で待ち合わせて、電車待ちをしてる所だった。

「…テンション高い… オレの事待ってる間誰といたの?」
「誰とって、浜でぼーっとしてただけだよ!」
「ひとりで?」
「一人だよ……」

嘘をついたのは、べつにやましいからとかそういう理由じゃなくて(実際僕と先輩が何をしたという事もあるわけがなく)
なんだか、先輩の話一つでも僕がしたらカイトが嫌な思いをするような気がしたからだ。

僕はあの後、先輩に進路の相談をしてみた。
例のアンケートの件。

『まだ2年もあるし、確定する必要なんてないが…目標を持つことは大事だ。まだ決められないなら自分が努力出来るような大学を志望しておけばいい。いざとなって選べる選択肢は多い方がいいからな』

………と、先輩らしい、的確なアドバイスをもらい、僕は先輩に御礼を言ってその場を別れた。

僕がふられてなかったら、性懲りもなく先輩の志望校を書いていたかな?
もっとも先輩が目指す大学なんて、僕がいくら勉強したって受かるわけないんだけど…

「おいこらユキ!!」
ハッ!!coldsweats02

「な、な、なに? ごめん聞いてなかった」
「やっぱりおかしい…………」
疑うように、カイトが目を細める。
「カイト! 電車きた」
ちょうど電車が入ってきて、僕は慌ててカイトの手を引いてホームのベンチから立ち上がる。

「あ?」

「カイト?」

カイトが、つながれた僕の手を見る。
「ユキ、お前熱ある!」

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イラスト『ユキとカイトB』

ウメキチの創作BL小説のキャラクタです。BLイラストです。ご注意をcatface

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