運命の日.1
それは運命の日
«運命»だなんて言葉はありきたりだろうか?
僕が僕の命のすべてを持ってしても償いきれない、ある事件が起こった日だ。
「最近、帰りが遅いんだって? 学校で何してんだ?」
「別に… 図書室とか」
「昨日行ったけど、お前居なかっただろ?」
朝、学校に行きすがら…自転車を転がす鷹木先輩に詰問される。
何をって
言えるわけがない…
「誰かにまた何かされたのか? 柏原?」
「……………」
朝だというのにもう蝉の声が聞こえた。
焼き付けるような夏の日差しの中で、僕は先輩に腕を掴まれ…口ごもる。
先輩の開いた襟の首筋には幾筋かの汗がつたっていた。
「お前、ここんとこずっと顔色が悪いぞ? 言ってみろよ… 大丈夫だよ…前のいじめだって無くなったろ?オレがちゃんとどうにかするから」
「なんでもない… なんでもないよ先輩。今日は早く帰る」
無理して笑ってみる。
僕は、三倉崎との事を先輩に話したらどうなるかを想像して酷く怯えた……
あんな事を先輩が知ったらきっと…僕まで軽蔑されてしまうかもしれない…
あれは暴力だ!
僕はそう割り切ってるんだ…! …でも 先輩に 知られるのだけは…
「…分かった じゃあ今日は一緒に帰ろう 放課後、校門な」
「…はい…」
「約束だぞ」
先輩は優しい。
そして僕は、こんなにも潔癖で純粋な人を見た事が無い。
僕は先輩の隣を歩きながら、僕自身がこうして先輩のそばで歩く事さえ、許されない事のような気がしてならなかった…
とにかく少し前の僕とは似て非なるもの。
僕は、堕ちてしまった。
どうして… 僕はそれを望んだわけじゃないのに…
(そうだ…先輩だって それを 望んだわけじゃなかったはずだ)
僕のせいで先輩が背負ってしまった十字架
僕がもっとはやく
それを実行していれば…
そしてその後に僕が消えてしまえば、それですべてが終わったはずだ。
暴力?ちがうだろ?
そんな生半可なものじゃない… 僕はそうやって言葉で逃げていただけ…サクを守るとか奇麗事で、自分の果てしなく脆弱な心を守っていただけ…
そして僕のこの甘えが弱さが愚かしさが、この日を、呼んでしまった…
誰よりも大切な人を その闇へ引きずり込んでしまったんだ。
(梅雨が明けたばかりの 7月のあの日…)
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