三倉崎楓.1
また白い天井…視線を動かすと白衣を着た男の人…後ろに女の人も居る…
「やあ、今日は気分はどうだい?」
「………」
「今日もいくつか質問させてもらうからね?」
「………」
まどろむ僕は時折こうやって、あまり心地よくない世界に呼び戻される。
「えーと じゃあ君の名前を教えてもらっていいかな? ゆっくりでいいからね」
なんて当たり前で、下らない事を聞くんだろう?
「…… かしはら ゆき」
「うん。じゃあ年は? ユキ君は今年で幾つになるんだっけ?」
とし…?年齢…
あれ、僕は何歳なんだっけ?
「…10…か 14か 15?……わからない」
なんで自分の年が分からないんだ?
「惜しい〜! 答えは17歳だ。次の誕生日がきたらね うん…次はね、今君が一番したい事を教えてくれるかな?なんでもいいよ たとえば美味しいものを食べたいとか… スポーツとか… なんでも」
したい事? そんなの無いよ…
食べたいものなんて無いし、スポーツなんて見るだけでもめんどうくさい…
でもあえて…いうのなら
「ぼく 死にたい」
「………うん。それはバッテンだなあ… «生きたい»なら花丸だったんだけど…」
(あんたがそれを質問したんだろ? なんであんたにそれを採点されなきゃなんないんだ?)
だんだん声がノイズまじりの只の音になっていく。
視界もおなじ、放送を終えたTVの砂嵐みたいだ…
よかった…これで僕は また夢の中で 先輩に 会いに いけるのだから…
『やあ』
またあの医者?
ちがう コレは夢だ…
「おい そこの君だよ!」
放課後、もう帰ろうとしていたところで、ふいに声をかけられる。
見知らぬ笑顔。背の高い大人びた感じの先輩(3年生だ)…制服もきちんとしていたし一見すれば真面目そうな感じなのだけど、僕はなんだかその目だけが笑っていないように見えて…怖かった。
「鷹木と仲良いだろ?よく一緒に居るのみかけるからさ」
「いえ… 仲が良いっていうか…」
なれなれしく肩に腕をまわされる。
「ホントは君も知ってるんだぜ この学校じゃ有名だから…さ!」
「あっ!なに?!」
«そいつ»は、無理矢理僕の左手首を掴み自分の顔のあたりまで引き上げた。
「あっ スッゲー! まじリスカしちゃってんだ?!最近はやってないの?」
「ちょっとっ…!!止めてください!!」
無神経な行為への怒りと、腕の傷への羞恥心で真っ赤になってしまった。
それが«そいつ»の好奇心にさらに火をつけたのか、僕の腕を拘束したまま片方の手で僕の顎を乱暴に掴む。
「ははは!! あのクソ真面目な奴のご執着がどんな奴かと思ったけど…有りだな?!かーわーいー!!で?!そのカワイイ顔があいつとヤる時はどうなっちゃうわけ?!」
「は?!あんた何言ってるんだよ!!」
夕日が窓から差し込む。
その廊下には誰も来る気配がない。
「っ!」
僕は思い切りそいつの頬をぶった!!
とにかくこの場を離れよう! 一瞬離れたそいつの腕から僕は身体を翻して、全力で走って…!
でも哀しい事に…
僕の左手首にはまだしっかりと、そいつの手が握られていて…
それを見て愕然とした瞬間、腹辺りに鈍い衝撃が走り僕はその場へ倒れ込む。
「びっくりした〜 はははっ!やっぱおもしれーな!」
「ゲホっゲホっ!!」
膝蹴り… 嫌な笑いかた…
「ははは!! そーだ!! こっち来いよ!」
「ゲホっ!…えっ?! ちょっ ?!」
無理矢理、僕は床に這ったまま腕を引っ張られ 隣の化学室に引きずり込まれた。
こいつが
«ミクラザキカエデ»
僕はこの日…あいつの
(あの日から僕は、あいつのおもちゃになったんだ)
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