運命の日.2
「よう 柏原君? オレ昨日来いって言ったよな?」
「っ!!」
放課後、一階のPC室の窓から外へ出て、教職員の通用門へ走る途中、僕はまんまとミクラザキに捕まり…人気の無い第二校舎の裏手に引きずられる。
今は使われていない焼却炉と、運動部の備品を保管する倉庫と、夏になって急に生い茂って来た雑草と
倉庫の側面に向かって突き飛ばされ倒れた僕 それを冷たい瞳で見下ろすミクラザキ
「もう嫌だ! もう散々僕をなぶっただろ? いい加減に飽きてくれよ…」
今朝、先輩とかわした約束すら守れない。
僕を心から心配してくれる先輩を思うと、なんだか自分の不甲斐無さに情けなくて胸が苦しくなる。
いつもは黙って殴られ、運が悪ければ身体を開かされ…恐怖に震えて、僕の間で…笑いながら腰を揺らすこいつの顔をただ朦朧として見ている…
「ああ? …飽きね〜なあ〜 なんでかな〜 女でもこんなに続いた事ね〜のに」
「僕はあんたの女でもないし! 奴隷でもない!! もう… 限界なんだよ… やっと…やっと当たり前の生活が出来るようになったのに また夜になると思い出す… また腕を切るんじゃ無いかってずっと眠れないのに!!」
「そんなの オレの 知った事じゃねーよ」
確かに そうだ…
かすかに、微々たる同情を期待した僕が 馬鹿だったんだ…
日が暮れる。
赤い火のような夕日だった…
この日の暴力はいつもの非じゃ無かった。身体だけじゃなく、顔も何回か殴られた…
僕の口答えが、相当ミクラザキのご機嫌を損ねたんだろう。
ああ… 今日もヤられるな… ……。下品な言葉 これもあいつの影響だ…
非道い暴行のお陰でもう下半身にも感覚が無い… 意識も微妙だ… このまま気絶でもしてしまえば起きた時には一人になれる。
先輩はもう、帰っただろうな…
明日 なんて言い訳を したら いいだろう?…
僕の意識がもう少しで飛びそうになったその時、僕に覆い被さっていたミクラザキの身体が飛び起きるように離れた。
「三倉崎っ!貴様!!」
!!!!!!
必死で頭だけを上げて声の方向を見る。
なんで…………
なんで たかぎせんぱいが ここに いるんだよ
「邪魔すんな…」
僕からあいつを引き離そうとした先輩を、ミクラザキがいとも容易く殴り飛ばす。
「せ ん ぱ い」
叫んだつもりが声にならない。
先輩が僕を見る… 制服のズボンを膝下まで下ろされ 惨めに仰向けになった僕の姿を…
人がする…あんな哀しげな表情を
僕は
生まれてこの方 見た事が無い…
「鷹木君さ〜 オレこいつ貰うわ… おい…そんな顔すんなよ オレが終わったら最後の記念にお前にもヤらせてやるから だまってそっちで擦ってろ!その位一人で出来るだろ? ヒャハハハハ!!」
「……… みくら ざ…き」
まるで、その行為を見せつけるように
ミクラザキは笑いながらもう一度僕の足を無理矢理開く
「いっい や だっ!!」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!! 先輩の前で こんなのは… なんて奴 なんて最低な奴…!!
(…おまえなんて しねばいいのに…)
「へ…?」
ミクラザキの顔色が瞬時に変わる… 僕の足を抱えながら 戸惑ったようにゆっくり後ろを振り返る。
そこにはなにやら、ミクラザキの背中に何かを押し付けているような先輩の姿があった。
空の夕日は、また不吉な程に 赤みを増していく。
そして血のようなその色を ここに居る僕らの心にも 滲ませて…
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