西日
テレビドラマとか映画とか、最後は奇跡が起こるだろ?
恋人だったり、家族だったり… 友達の必死の呼びかけで
死の際から 愛しい人が還ってくるんだ…
『まだ 死ねない 自分を呼んでる人がいる』ってさ
僕だって叫んでた
病院に着いてからも 泣いて、わめいて…自分で自分をコントロールなんで出来ない…ひたすらずっと先輩の名前を叫んでた…
「ユキ 鷹木 先 輩… ダメだったって…」
いつのまにか、病院の待ち合い室にはサクや僕の両親が来ている。
顔を引きつらせた、何かに耐えてるような顔のサクがどこからか歩いて来て、廊下に直接座り込んでた僕の前に立ち… それを 宣告 する。
「ダメ って なに」
わめきすぎたせいか、声がかすれて、上ずる…
サクの言葉を理解できない。
呼吸をするのが苦しくなる… 顎が痙攣する。
「死んじゃったのよ… もう還ってこないのよ」
「し ん だ?」
母さんが後ろから首を振る僕を抱きしめる。
「ユキ しっかりするんだ 病室に行って…お別れをしに行こう」
そういったのは父さんだ と 思う…
お別れってなんだ?
死んじゃったって どういう事?
まるで慰めるみたいに 触るのは 止めてくないかな?
「嘘…うそだよ 何言ってんだよ? 先輩が 僕をおいて…?」
しぬなんて
「ユキ…」
ひとりで死ぬなんて
僕に最期の言葉さえ
遺さずに……
「…そんな残酷な事って あるかな…」
…ほら、奇跡なんて この世にはないんだよ…
支えられながらその場所へ… 西日が差し込む小さな病室。
激しい嗚咽が聞こえる。
おばさんの声だ… その隣には呆然と立ち尽くすおじさんの姿。
そしてベッドに横たわる、もうなんの管も呼吸器も付けられていない先輩の身体…
僕はそこへ、なんとか一人で歩いて行った。
「ユキ君 ゴメンね… 晴彦に 声をかけてやって…」
側にしゃがんで、まだ血のにじむ頬の擦り傷に触れる。もう二度と開かれないだろう瞼や唇にも触れる。
「痛かったでしょ?…辛かったでしょ?こんな 傷だらけで…」
もう体温なんて 感じられない。
あの日僕の身体に伝わった熱の片鱗すら 完全に失われて…
完全に? …永遠に もう
「つめたいよ なんでこんなにつめたいんだよ… せんぱ…」
そこで僕はハッとして、そのベッドから離れ、呼びかけるサク達を振り払い病室を出て行った。
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コメント
覚悟していたことですが・・・、”ダメだった” の台詞のところで染の呼吸が止まるかと思いました(号泣)
ユキちゃんに 『頑張って』 とは言えませんが、『乗り越えてね』 って伝えてあげて下さい・・・。 というか、乗り越えさせてあげて下さい~(願) では。
投稿 そめ | 2008年5月10日 (土) 03時10分
管理人です。
激感謝!うれしいです!
そめ様のお言葉を伝えます。乗り越えてしっかり生きていけるように。
そめ様。ご訪問&愛のあるコメントいつもありがとうございます
は…なのにすいません…鷹木はついに逝きました。ユキの精神状態も崖っぷちです。(カイトの浮気行為?どころの非ではないようです)
どうにかひきあげてやらんと思ってるのですが…(もう死人を出すわけにはいかん…どげんかせんといかん)我ながら苦労をかける子です
ちなみに仏教では西の方向には極楽浄土(あの世?)があるそうです。鷹木は自分は地獄行きだと思っていた節があるようなのですが、せめて死後位は安らかに眠ってくれればと(母心)。なのでタイトルは「西日」としてみました。
投稿 ウメキチ | 2008年5月10日 (土) 15時38分