カナリアの気持ち
病室の窓辺に置かれた銀色の鳥かご
その鳥かごはなぜが扉が外されていて
中には一羽のカナリアが、せわしなく身体を動かしている。
「………」
ベッドの上で ルイが静かにその赤い目を開く。
眩しそうに何度か瞬きをしたあと
椅子に座る俺に気付いて 少し驚いた様な顔をする。
「ま さ む ね は …?」
途切れ途切れの 弱々しい声だった。
「ああ…あいつ さっきまでは居たんだけど どっかに報告があるとか言って 出て行った」
「こんなんじゃ もう使いものにならないって 言いに… 行ったのかな…」
ルイがあんまり哀しそうに笑うものだから
胸が苦しくなって気の利いた言葉を探す事が出来ない。
オレはただ、天井をぼんやり眺めるルイのキレイな横顔を黙って見つめているだけ…
「そのカナリア… 正宗が 持って来たのか?」
「あ、ああそう お前が飼ってんだろ」
「そいつ 逃げないんだ 空にはなっても帰ってきちゃうし…」
鮮やかな黄色の羽を持つそのカナリアが
首をくいくいっと動かしながら カゴの中で自分の羽をついばむ。
ルイは相変わらず 天井だけを見ている。
「きっと… オレがいなくなったら死ぬんだろうな…」
「ルイ?」
放たれた死という言葉に、ギクリとなる。
屋上で倒れた時のルイの苦しむ姿は、この前の音楽棟の時の比ではなく
息も絶え絶えに
胸を押さえ声も出せないでいたルイに
オレは確かに
死の影のようなものを感じてしまった。
「なんで そいつ… 逃げないんだろうか…?」
ルイが呟く。
オレはやっぱり何も言えなくて
ベッドの上に投げ出されたルイの白い手を握る。
五経土御門とは、さかのぼる事900年前から続く陰陽師の家系だという。
オレがこの目で見たあの信じられない光景は
きっとその脈脈と続く血の力なのか
もしもそうだとして それが その血こそが
ルイの命を 己の血肉を食らっているのではないだろうか?
カタン
その時、ルイのカナリアがカゴから飛び出して、病室の天井を一巡りしたかと思うと
オレの肩にとまった!
突然の事にびっくりして肩を緊張させるオレの顔を、ルイが見上げる。
そして
初めて見る様な 自然な とてもおだやかな表情で微笑んだ……
よろしければお帰りにぽちっと。⇩
FC2 Blog Ranking



