白い日傘と青い海
「思ったより元気そうじゃない」
波に乗るサーファー達を横目に、海沿いの堤防の上を歩く 僕と珠子。
時折吹く海風が、珠子の白い日傘と長い髪を煽っていた。
「派手にやられたのね? その顔」
「うん まあ…」
あれから何日かたつのに腫れが引かない。
あの日、僕はサクに思い切り殴られたんだ……
「そういうの自業自得っていうのよ 今度サクちゃんを泣かせたりしたら、あ た し が その顔 引っ掻いてやるわ」
片方の口元を上げながら、珠子がニヤリと笑う。
「どうするの? 今は夏休みだからいいけど… ユキ君のこれから」
「……ほんとうは ここを離れたかったんだけど……」
「うん」
「先輩が居た街から 離れるのは」
あまりにも薄情な事のような気がして
「あたしね 晴彦君があんな事になって… なんであたしみたいのが生きてるんだろうって本気で悩んだのよ」
珠子は立ち止まり、海を向こうを見つめて言う。
その視線の先には、見慣れた穏やかな海と黙々と沸き立つ入道雲。
「でも… ユキ君が戻って来た事や…夏目カイトが雷に打たれてもピンピンしてるって事 あたし達はきっと…生かされてるんだわ やるべき事がまだまだ有るって事なの」
僕の やるべき事
「あたしたちこれから… 晴彦君の代わりに たくさん笑って…奇麗な物を見ましょうね」
先輩の代わりに
「彼はとてもいい人だった… それを忘れないって事に…貴方の居場所なんて関係ないでしょ?それに…逝ってしまった人の思い出は…良い事だけを 覚えてればそれでいいのよ?」
生きていくこと
「珠子…」
「なあに?」
「カイトがね 僕を必要としてくれるんだ… 可哀想だからとか…責任とかじゃなくて… 僕と生きて行きたいんだって…だから」
「そう…」
「カイトのいる場所で… 暮らしてもいいのかな… だめかな やっぱり…」
きっと父さんや母さんは反対するに決まってる。
でも でも 僕は……
大きく打ち寄せる波音。
珠子が僕を見て、答えた。
«それは貴方が 決めて良い事 隣に誰か居ようといまいと 立ち上がるのは自分の力なんだから»
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