遺言
「多分鷹木は 最期の最期で…悪い物をみんな持って行った」
カイトの腕が緩んで、僕はやっとカイトを見上げる事ができた。
「悪い物って………?」
「鷹木が死んだのなら もうここには三倉崎の魂だって残っていない… あいつは責任を果たす奴だから」
カイトの言葉がなんだか僕には
先輩が発するそれのように聞こえてくる。
僕はまた
おかしくなっているのかな…
『…柏原…』
「っえ?!!!!」
「…ユキ…」
「あ… ああ な に?…びっくりした…」
気のせいだと頭を振って、もう一度カイトを見る。
「鷹木はユキを守り、お前を愛した責任を果たした… じゃあユキはどうするんだ?」
「僕?」
「ユキがあいつに果たす責任は いったいなんだ?」
ドクン ドクン と…布越しに伝わる先輩の鼓動。
先輩に抱きしめられて寝たときの事を思い出す。
『海の底に沈むか…それともこの身体を灰にして…あの空の何処かに消えてしまう事が出来たなら』
『君を独りこの世に残して行く恐ろしさの前では…その願いさえも…あまりにもくだらない、夢のよう
に思えるんだ』
わけの分からなかった 独り言の様な先輩の…あの時の言葉…
先輩は死にたかったんだ…
それなのに先輩はただ僕の為に、生きていて くれたんだ…
「僕の責任」
«柏原 オレは オレが居なくなっても こっちへは来るなと 言ったはずだぞ?»
「せ ん ぱ い ?」
ゴ ゴ ゴ と 突然、激しい雷鳴が夜空に轟いた。
「あ〜 こっちに来るかな? せっかく雨止んだのになあ」
カイトはいつの間にか、僕から2、3歩離れたホームの先で空を見上げていた。
「いま、先輩の声が聞こえた気がした」
「………なんっつってた?」
「来るなって………」
「ハハ もっと早く言いにきやがれって なあ?」
夜の闇が、一瞬真昼の様にに白く光った。
再びの轟音。
稲妻が空一面に走り、ピシッ!という電気のひずみみたいな高い音が直ぐそばで聞こえ思わず耳を塞ぐ。
「え?」
今、一本の細い稲光が屈折して
カイトの頭上に
落ちてこなかったか?
「は… は は カラスの次は かみなり かよ」
受け身も取らないカイトが、ホームに後ろ向きに卒倒する。
「うっうわあああああああああっ!!カイトッ!!!」
僕は慌ててカイトに駆け寄り、触れ、バチッと感電しかけて思わず手を離した。
「な、な、なんなんだよ!カイト あ、頭から煙がっ! カイト? カイト大丈夫?カイト!!カイト!!」
今度は腕に痺れがくるのもかまわずカイトの肩を揺すった。
カイトは目をつむったまま動かない。
「うそだ カイト… し 死んじゃったの…?」
「…………………………………………かってに こ ろ す な」
「カイト!!!」
「ユキ」
落雷のショックで、カイトのポケットから飛び出した携帯を拾い慌てて119にかける。
あろうことか手が震えて、そのボタンを押すだけのこともまま成らない。
「ユ キ…」
「今 救急車 呼んでるから!! がんばれよ?!死ぬなよ…! ぜっ 絶対死ぬなよ!!」
「…ユキ いっしょに くらそう…」
「な に…?」
「いきて いこう いっしょに」
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