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2008年7月

夏のおもいで

ふたたびオレの部屋。
椅子に座るオレの正面に、正座したルイと六堂先輩…

なぜか二人とも水泳用のゴーグルを付けている。
 

「で?annoy外でやったら寮長にバレるからと…… オレの部屋で? 花火を?」
 

信じられない……
さっきバイトから帰って来た時、部屋の新しい窓から火花のような光がチカチカ反射していたんだ…
何事かと慌てて部屋に入ると… 

花火を激しく振り回す六堂先輩とルイ……
 

「大丈夫だって!! 布団とカーテンは廊下に撤去して ほら水も撒いたし!…だからさ 正座しちゃうと膝が濡れて気持ちわる……」
「がまんしてくださいっannoy!!!」
「ひいっcrying

「東洋… 六堂大佐を怒らないでくれ! 僕が花火をしてみたいと言ったんだ」

「六堂……た い さ〜?」

「六堂大佐は実に物知りで、実に頼りがいのある男だ! だから僕は尊敬の気持ちを込めて六堂大佐と呼ぶ事にしたんだ!な?」

「そうだぞ 東洋君… 貴様もこのオレ様をもっと敬え!ひれ伏せ!かわいがれ!」
 

…なんか二人ともえっらそーにannoy
 

「ルイ………」
「なんだ?」

正座はしているものの、ルイは全く悪びれていない。
ゴーグルを額の辺りまでずらしてニコニコとオレに笑いかける。

「火は危ないってのは…分かるよな?」

「そりゃ分かるさ!僕は火薬と大砲の演習では実に良い成績を……」

「…部屋で火遊びをしたらうっかり火事になっちゃうかもしれないだろ?」

「そこで六堂大佐の名案でな 部屋中に思い切り放水してみたんだ!おもいきりっ!!そしたらこんなになっちゃった!ぷぷぷdash

「ル ルイ……… そもそも部屋に しかもこんなに床に溜まる程 水を撒いちゃあ駄目なんだよ…」

怒りを必死にこらえて
なるべくゆっくり、冷静になれよと自分にも言い聞かせて話した。

「そうか… 駄目なのか」
「そうだ 部屋では 花火も 水撒きも 絶対 ぜーったいに駄目だ!!二度とするんじゃないぞ!!」

そこまで言ってようやく反省し始めたのか
ルイがちょっとだけ俯く。

「まあ!まあまあまあ! 東洋君! せっかく帰ってきたんだ 寮長のじいさんももう眠りについた事だし表でもういっちょやろうぜ!」

「やりませんよ!その前にこの部屋をどうにかしてか…」

「東洋!!やろうやろう!! 僕、東洋と花火がしたい!!」

「お おいっ!ルイ!」

説教中のオレの許可無く、六堂先輩は正座を解いて、窓ガラスを全開に開ける。
オレはルイに腕を掴まれ、無理矢理外に引きずり出された。
 

「土御門!東洋! ほら靴を履け!」

大声で…

みんなが起きるだろ?

「とうよう! ゴーグルしないと目に入るぞ!」
「花火を顔に向けちゃ駄目だろ!!それも禁止!!守らないなら……」

守らないなら……

花火か
花火なんて何年ぶりだろう?

暗闇に、さっそく先輩が点火した花火がバチバチと光る。
火薬の匂いと
夏の夜の湿気と
火花…熱

「あっち!!!ルイ!!こっち向けんじゃねーよ!!」
「あははは!!東洋も早く!!」

ルイの顔や身体が火花で明るく照らされている。

笑って
心から
笑って……
 

「うおぃ! 東洋君は一発目線香花火かよcoldsweats02渋っ!」

「勝手でしょ!好きなんですよっ!」

「僕もせんこうはなびやるっ!」

なんだかな〜
ため息をつきながら結局、こいつらのペースに巻き込まれてしまった。

「きれいだな… 東洋… 楽しいな 東洋…」

悔しいけど
ああ…その通りだ。

 


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花の笑顔

「ぷりん は スイーツの王様だな 東洋!」

「…………」

「そのうえ、げきあまなまくりーむ まで投入するとは あの学食のおやじは只者ではないぞ 東洋!」

「…………」

「……… なんで黙ってるんだ?東洋…… やっぱり僕がコレ買っちゃったから怒ってるのか?」

「ちがうよ… 怒ってるんじゃないよ」

「ふーん… なあ東洋 これ ありがとうな」

学食でプリンを買い…
どうしても直ぐ食べたいというルイの激しい ダダ に屈して
結局、午後の授業をサボるはめになる……

で、……… 公園の木陰にあるベンチに二人。

(しかしこの炎天下で…よくプリンなんか食えるな…sweat02
 
 

さっき屋上で、ルイは引き止める鳴滝に罵声を浴びせ、怒りメーターマックス…乱暴な足取りで一人屋上から出て行ってしまった。

(罵声の内容は オレが知らない事ばかりで全く理解はできなかったのだが…)

追いかけようとするオレに鳴滝が言葉を投げる。
 

「オレが…記憶を失ったルイ様に最初に教えたのは人の殺め方なんかじゃない」
 

オレに対しての言葉だったのか
ひょっとしたら、もうそこには居ないルイへの訴えだったのか

オレは何も答えなかった。

鳴滝が制服の上着のポケットから白い紙袋を取り出し、オレの前に突き出す。
 

「国境軍にルイ様を拘束させるような事はしたくない… その前に必ずオレが迎えに行く… それまでルイ様に… ルイに傷一つ付けるな!」

(傷一つね… あいつとっくに傷だらけじゃねーか…)

そして白い
その薬袋を受け取った。

国境軍?

ルイは 軍にとって必要なくなったんじゃなかったのか?
 
 

ジージージー
蝉の鳴き声が頭上に響く。
 

「ルイ… お前さ 鳴滝の所に帰らなくて良かったのか?」

だいぶ慣れてきたとはいえ、ぎこちないスプーン使いでプリンを食べるルイに問いかける。
プリンの甘さに怒りも静まったのか、もう大分落ち着いている…
 

「………… 帰ったら それきりだぞ?東洋」
「え… ?」

「言ったろ? 僕はもう異能者としては役立たず だ。 …多分 あと1回か2回が 限界…」
 

「げんかい? ……」
 

そこでルイが笑う。
静かに 笑う……それはいつか見た ルイの花の様な笑顔。

「死ぬって 事だよ………」

 

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忘れられた人間の気持ち

「テメーの話なんか聞いてねーし!」

知るか…!
そんな事!

「貴様などに… 忘れられた人間の気持ちが …分かるものか」

「………………」

押し殺した様な鳴滝の声…
 

忘れられた人間
オレは確か
忘れた側 だったな………… 
 
 
とうよー !! と う よー !!

張りつめた雰囲気が一気に雲散する。

屋上の非常扉が勢い良く開いて、子供みたいなはしゃぎ声でオレの名を叫ぶ。
 

「ルイ……sweat02
「ルイ様!!」
 
「げっ!! っんだよ!! 正宗がなんでここに居るんだよっannoy

そう言い…露骨に嫌な顔をしたかと思うと、また何かを思い出したように駆け足でオレに近づいて来た。

「東洋!! 今な!! 学食に行ったら ぷりん があってな!!」

えっ?!
まさか 

「貰おうとしたら 金が無いと駄目だと言われてな」

さっき菓子パンを山ほど食ったくせに……

だいたい食ったばかりでなんで学食をうろつく?!

「だーめだっ!!もう昼休み終わるんだから 帰りにコンビニで買ってやるから我慢しろ!!」

「でも東洋…… あと一個しかなかったし」

「でもじゃねーよ! 我が儘言わないって昨日約束したばかりだろ!」

「だって…とうよう…weep ぷ り ん……」

「だってじゃなっ…… あーっ!!なんでそんなんで泣くんだよ!!あーもうっ!」

はあ………どんどんオレの家計はエンゲル係数が上がっていくんだろうな………

(バイトを増やさないと駄目かな…駄目だろうな…)

仕方なく財布を取り出そうとしたその時…

ルイ様!!


しまった……
一瞬鳴滝の存在を忘れていた………

鳴滝が半べそのルイの腕を掴む。

「もうお遊びにも飽きたでしょう? 帰りましょう!」
「おい!鳴滝!」
はなせよっ!!

オレの言葉と同時か、それよりも早かったか
掴まれた腕をルイが思い切り振り払った。

「僕は帰らない」

「ルイ様… それでどうやって生きていくつもりですか? 一人で食事も…何もままならない華族の貴方と 庶民で生活力も無いこいつとで 本気で生きていけると思ってらっしゃるんですか?!」

(悪かったなっannoy貧乏な庶民で)

「…………」

「帰りましょう…… 薬もお持ちにならなかったでしょう?心配していたんですよ?貴方には私が居なければ…」

「………じゃないか」

「ルイ様?」

 
何も教えてくれなかったのは お前じゃないか! 正宗!
 

…………
屋上にルイの声が響く。
その叫びは なぜかオレの心にも深く突き刺さるように 哀しかった…


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芙蓉の子守唄

鳴滝正宗side
 

夕暮れのゴーヤ畑

蔦の間から夕日がじわりと光り 

あかく ひかり

隠れていた その子を 映し出す

だれだ だれだ 

隠れているのは 何処の子だ?

もうお帰り

もうお帰り

向こうから逢魔ヶ時が

着物を引きずり

化け物を連れてやってくる…
 

「………… ルイ様 ? その歌 憶えてらっしゃるのですか?」

「………………………」

「芙蓉様が教えて下さった 歌ですよ?」

「………………………」

「あ…食事が摂れれば 管は外せるそうですよ? なにか召し上がりたいものありますか?」

「………………………」

「窓を開けましょうか? 今日は風が心地良いので…」
 

「…………お ま え」
 

「ルイ様……! ルイ!」


お ま え だ れ だ ?……………


3年前

僕の恋人は

僕の一切を 忘れた。
 


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なくしたもの

「どういうつもりだ!!」

シャツの襟を掴まれ、屋上の防護柵に乱暴に押し付けられる。

鳴滝 が
授業を受けに来た訳では無い事は、奴が士官学校の制服を着ていたからすぐ分かった。

「どういうつもりって? なんだよ!」

こっちも渾身の力で、鳴滝の身体を押し返す。

「しらばっくれるな! 貴様のしている事はな 確かな誘拐だぞ!」

ゆ う か い?

「なにがおかしい…?」

鳴滝がらしくない言葉を吐いたもんんだから、思わず失笑してしまった。
自分たちを棚に上げて、所詮こいつもこの程度かとがっかりする。

「馬鹿じゃねーの? …2つ3つのガキじゃねーんだ… あいつが帰りたくないっていうからオレが一緒に居るだけだろ! 大体この3日… ルイを探しもしなかったのはテメーのほうじゃねーのかよ!」
 

昼休みの屋上に2人。

オレと対峙する鳴滝の目つきはまるで敵を見るかのようなそれで…

オレの方は
ひるむどころか、逆にこいつに対して様々な怒りが湧いてくる。
 

「ルイから聞いた」

「なにを だ?」

3年前の話を

「あいつ 勉強も運動も出来るくせに 生きるのに必要な事は何にも出来ねーじゃねーか… なんでそんな奴に…なんで真っ先に 人殺しの手立てなんて教えた?!お前だってそばに居て…絶対分かってたはずだろ?!」

「………」

「はっ!都合が悪いとだんまりか…?」

「人聞きの悪い事を言うな… オレ達は戦争をしている。ましてや五経土家の人間は代々そうやって生きてきたんだ… むしろ其れは土家にとっては名誉な事で 蔑められる事などでは無い」 

戦争?

名誉?

なんだその奇麗事は!
オレはそんな事を聞きたい訳じゃないのに!

「あの時ルイ様は………」

「教養も土家の特殊能力の使い方も、記憶の底から難なくサルベージされたのに…かけがえの無い事は何をしても…取り戻される事は無かった…」
 
 
 
「オレの事さえも………」
 


一瞬、鳴滝の表情から、厳しいものが消え

俯く瞳にうっすら影の様なものが落ちた気がした。

 


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3年前

次の休みは、あっという間に… そして何事もなく過ぎた。
基地の向こうに 星 が落ちることもない。
空に哨戒機が飛ぶ事も無い。

何事も無いというと 少し違うかな。

ルイは相変わらず、食事に半端無い時間がかかったし

風呂や着替えさえ

一から教えないと一人では何も出来ない。
 

特に風呂は(幸いな事に この寮にはシャワーだけなら各部屋にそれぞれあるのだが)

まだ温度の上がらないシャワーを頭から浴びて悲鳴をあげる。

泡が目に入って痛いと泣くので、仕方なくシャンプーハットを購入…(レジの人と目が合い恥ずかしかった…)
 
やっと洗い終わったかと思えば、裸のまま…濡れたままで部屋を歩き回る。
 

「あ 冷たい」

頭からバスタオルをかぶり、業者にはめてもらった新しい窓ガラスに寄りかかる。

「おい 着替え出してやったんだから せめて下着ぐらいはけよ」
 

たとえ男とはいえ
目のやり場に困る…
 

「はかせて 東洋」
タオルを肩まで下ろして、まるで誘うような目つきをする。

「ばーか!!」

ルイがクククと笑う。

からかって楽しんでるな? こいつ…!
 

ガラス窓から身を起こして、ルイはオレを今度は真面目に、真っ直ぐ見据えた。

「僕はまだ3才なんだよ 東洋…」

「は? そんなでかい3才が何処に居る!」

「僕の頭は3年前に一度壊れてる。軍は未だ僕を必要としていたから 必死に失った物をサルベージしようと試みたらしいんだけど 僕は 物の食べ方や 眠り方や あげくは息の仕方まですっかり忘れてしまっていた。 次の一年は管だらけの生活だったよ」

「え……?」

笑って なに しゃべってんだ?
 

「でも 東洋 僕が 忘れなかった事が一つだけあるんだ… 僕はそれだけは憶えてた」

「オレの …こと?」

「そうだよ… 代わりに東洋は 忘れてしまったけどね」

いつ どこで ?

「オレは……… ごめん オレ」

「いいよ 思い出したら教えて… あ!東洋 今日もゴーヤでなんか作ってよ!」

「ん? ああ …いいよ」
(休日は寮の食堂が休みなので、基本的に自炊している)

「やった!!」

ルイは 本当に 子供みたいに 笑い 泣く… 

3年前にルイの心が壊れた。
すると出会っていたとしたらその前だ…

オレは、ルイと記憶を共有出来たはずなのに、そうしなければならなかったのはオレしか居なかったかもしれないのに…

ルイはオレと出逢って
さぞや落胆しただろう…
  
 

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眠らぬ小鳥

その夜、ルイは 多分… 全く眠らなかった。

部屋の隅で 膝を抱えて うずくまったまま…
 

「おい ルイ 少しは休まないと… オレ下で寝るから ベッド横になれよ」

「いいんだ これで… 夜はいつもこうなんだ…」
「いつも…って… お前 身体良くないんだから」
「へ い き だよ…」 


オレはオレで、そんなルイを無視して寝る事も出来ず
椅子に座って、そんなルイの様子をジッと見てる。
 

「なあ 東洋?」

「なに?」

「あした 休みだろ? … あしたも 一緒に居てもいい?」

膝に顎を乗せて、オレの顔も見ずに ルイがつぶやく。

「ルイが居たいだけ 居ていいよ…」

ルイは分かってるんだろうか? 
オレが昼間、ルイを公園に置き去りにして それをどれだけ後悔したか…
そばに居たいと思っているのは、むしろ オレの方だという事を…

「ほんとに?!」

ここで初めて オレの顔を見る。
 
「お…お前さー 目〜離すとなにしでかすかホント心配なんだもん!」

これは オレの照れ隠しだ…

「僕は 東洋が僕を心配すると ちょっと嬉しい」

はにかむように笑う。
おもわず見とれて… 慌ててその笑顔から目を反らした。

「おいっ! 今度心配かけたら 速攻退場 だかんな」

「冗談だよ、分かってる …ありがとう… 東洋…」
 

    ……… ありがとう か………
  

そんな会話をして

オレはルイに告白する事も無く
その身体に、指一本触れる事も無かったけれど

今この夜、この瞬間の世界ではじめて

お互いの感情が 深く交わされた… そんな気がしたんだ。
 
  

うとうとと微睡む。

言葉が途切れ途切れになり 結局オレは机に突っ伏して眠ってしまった。

ルイは起きていた。

オレは眠っていたけど それだけは なぜか夢に見るより明瞭だった…

ルイは一人 何を考えていたのだろうか?
 

遠くで夜明けのカラスが鳴く声がした……
 


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直せないよ…

割れたガラスをやっと片付ける。

仕方ない。
明日、窓はどうにかするとて今日はここで寝るしかない。
 

「おいルイ… お前先輩の部屋に泊めてもらえよ… こっちまだ破片があるかもしれないし… 暑いから」

「お〜 構わへんよ〜 もともとオレの部屋は二人部屋だしな」

「…………」

「ルイ?」 
 

さっきまでのテンションはどうした。
部屋の隅でルイはうずくまっている。

「どうした? 気分でも悪いのか?… ルイ?」

さっきの嘘泣きなんかじゃない。
声をかけた途端、今度は肩を震わせながら、ルイは泣き出した。
 

まるで 子供 みたい に…
 

さっきガラスの掃除をしていた時に、ルイは指の先をその破片で切った。

あんまり危なっかしいので、もういいから と少し冷たく突き放してしまった。

絆創膏を貼ったその指に血が滲んでいる。
 

「もう怒ってないよ ルイ… 放っといて悪かったな」

ルイは

精神的に ひどく 不安定だ…

テンションの高い時は、好き放題、我が儘し放題、悪態つき放題…
それがその真逆になると
あの病室での一件もそうだったが、まるで人が変わったような落ち込み方をする。

また、上辺だけとはいえ完璧な華族としての振る舞いもすれば

小さい子供のようなたどたどしい素直さを見せる時もある…

あまりにもその境界が明確すぎて、
それはある種、病的なものであるように感じた…
 

「ごめ ん… ほんとうに… 思い返せば… 僕は とても酷い事をした…」
 

顔つきまで変わる。
 

「割れただけだ… 直せるから」
「直せないよ…… 割れたガラスは割れたままだもの……」

扉が閉まる音がして、先輩の気配が部屋から消えた。

 

「僕だって おんなじだ」

ルイがまた呟いた。 

多分

多分本当のルイも、自分の その不可解さに 気付いている。


 

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今週の刺客請負人!!

腐女子によるTV時代劇の感想(今回やや妄想暴走気味です〜ご注意)。BL小説記事ではありませぬんhappy01

刺客請負人 今宵は第二回でござる!!

うわ〜shine

なんだかとっても耽美〜な感じでドキドキでした。(← 腐女子目線 笑)

松葉刑部様、菊姫との失恋(ちがうけど)の傷心のさなかに出会った

江戸源氏(美形という意味らしい) 『清吉

用心棒として一緒に居るとはいえ、二人やたらに楽しそうなんですけど〜笑

途中 ほぼデート的な感じになってましたよ。(この辺りからBL的妄想に耽る)

清吉に「帰りたくないshine」とか言われ(この台詞でウメキチおもわず倒れました) しかも後半は無償で用心棒で、い〜感じ。

お静さんには 「親子みた〜い」といわれてしまいましたが 笑。

闇猫お吉は 今日もすごくすごく格好良かった〜! いつにも増して美しく…

登場すると空気が変わる。

名無しの辻斬り美形少年に名を与え、手下にし 闇猫一派復活。

遂にといだ爪をあらわにし始めましたか……!!

舌きり雀のすずめ(?)も来週以降も登場するんですね??

「その子」「その子」って…本当に名前が無かったんだ… 可哀想…

霧島とのエピソードはまたウルウルきちゃいましたよ…weep

大奥とかいって、霧島さんがまったくどろどろしてないのが良かった! すずめにとって救いの女性…そしてその悲しみを理解して殺されかけたすずめを二度も救うお吉が最高!!

ああ

もうすごく面白いです。刺客請負人!!

待ちきれないので、せめてドラマみたいに、即再放送とかしてくれないかな〜


 

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反省会

「怒ってるのか? とうよう?」

二人を部屋に(すべての窓ガラスを割られた)正座させ、その正面に自分も正座して座る。

怒るというより

この哀れなオレの部屋の状況と、とても理解出来ないこいつらの行動に呆れてろくな言葉も出やしない。

「ま〜いいじゃね? さっき騒ぎに飛んで来た寮長もさ 東洋が後で弁償するからって言ったら じゃま、え〜わ ってさ! はははは それに今暑いやん! ほら雨降ったらオレの部屋来ればいいし〜」

へらへら笑う六堂先輩を睨む。

「わっsweat01!!マジんなんなよ〜 東洋君 ジョ〜クでしょ〜 機嫌なおして な?あ、そーだ!今日買ったエロ本貸すからさ〜勘弁してよ〜」

読みませんよannoy!!そんなもの!!

「あ…相変わらず固いなあ〜東洋君は 袋とじを開けさせてやってもいいんだぜ?」

「なあ なあ とうよう! えろほんってなんだ?!」

「お? くいついたな思春期ボーイめ! じゃあ東洋君のかわりに土御門君に進呈しようか?」

「先輩っpoutannoy!!ルイに変な事教えないでください!!」
 
 
反省の
様子が
まったく無い…………!!
 

「なあ東洋 もう怒らないで… 僕が悪かった あやまるから 機嫌なおして…お願い」

ルイが身体を曲げるようにして、オレの顔を下から見上げる。
その赤い目には、うっすら涙が滲んでいるようにも見える。

…………………
 
 
「もうその泣き落としは効かないぞ… ルイ」

「…………… ちっ
 

「ちっ とはなんだ! ちっ とは!」

「だって東洋が悪いんだ!僕を放ったらかしにするから!あの後、へんなじじいに声かけられて追いかけられたり、車にぶつかりそうになったり、道には迷うし!お腹がすいて死にそうになるし!!」

「お腹?!食ったばかりだったろ?!だいたい… オレだってどんだけお前を心配してたか!」

「まあ… まーまーまーまー」

六堂先輩が、腕をオレ達の間に割り込ませ、言い合いを制止し、パンパンと手叩きをする。
 

「とりあえず」
 

部屋の中だというのに、やたりと虫の声がリアルだった…

これじゃエアコンも付けられないじゃないか……
 

でも
今オレの前には ルイ が居る……
 

「とりあえず、3人で 割れたガラスの掃除をしようじゃないか!」

時計は0時をまわろうとしていた。

 

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ルイの復讐

住宅街を抜けて寮までは、民家もまばらな一本道だ。

その道を挟む、稲穂畑の向こうに 花火が上がって白く 光る。

遠く過ぎて、音も微かにしか聞こえない。

高く打ち上がって

緋も黄も 碧もない

ただ 真っ白に 光って消える 大輪の菊のような花火。
 

高く
ほら
あんなに大きく咲いて 
チカチカと
落ちて
消えて逝く…
 

ルイの所在が知れて、分けが分からなくとも少し安心していたのか
オレは急いでいた足を止めて、それを少しだけ見ていた。
 
「…………………」

青々としているであろう稲穂が、ザワザワ揺れていた。

 


「おーい おーい!! やっと来たか! 東 洋!」

寮の裏口あたりから、六堂先輩の声が聞こえる。

駆け寄って行くと
案の定 
先輩の隣には土御門ルイが昼と同じ士官学校の制服姿で立っている。

「先輩……… ルイ……!」

「はっはー!! ちょっと前なら ギャラリーも居たんだけどなあ〜 写メ送ってやれば良かった!」

「??? は?…… いったい何なんですか?!」

「東洋。僕はこ〜んなに爽快な気持ちになったのは実に久しぶりだ!いや、生まれて初めてといっても過言では無いかもしれん… お前からもこの六堂とやらに礼を言ってくれ!」

「??? ルイ?…… ん? ルイ…… なんでバットなんて握ってんだよ?!」

その時
直ぐ右に有る、一階のオレの部屋の窓からカーテンがふわりと風に舞ってるのが見えた。

なんで?
窓なんか
開けてないのに

「しかし東洋よ… お前も罪な男だぜ… まあ昔からお礼参りといったら コレ しかねーもんな」

「僕はバットにこういう使い道があるとは知らなかった…」

は?
恐る恐る部屋に近づく…………

たしかさっき携帯で 謎の破壊音が聞こえたんだ………

パキパキっと
何かを踏んで足下を見る。
 

「ガラス?……………………へ?」
 
あれ?

なんで?

窓 が………

オレの部屋の 窓 が

全 部

無 い? 

………………………。

うわああああああああああああっcoldsweats02sweat01!!!な、なんだっこれっ!!!

 

 

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謎の破壊音

だからどうする?

好きだから、 じゃあ どうだっていうんだ?

何が出来るっていうんだ?

軽卒で 無意味で 青臭い

どうせ後悔する事になるぞ?

心の中のもう一人の自分が皮肉っている。

けど 放っておけないんだ………
 
 

「多分 あいつは 家には帰ってない… 」

考えてみたら、あいつが行きそうな所なんかオレは全く知らないのだった。

結局オレは
ルイの事を全く分かっていない。
 

鳴滝
 

ふとあいつの名を思い出す。

(そうだ! 音楽棟でルイがオレの携帯で鳴滝にTELしてたよな! 履歴!)
(ひょっとしたらもう鳴滝といっしょに居るかもしれない!)
(それなら… 鳴滝のそばに居るなら それが一番)

慌てながら携帯を開けると、画面を何度もスクロールしなければ見きれない程のメール。

「なんだよ!これ!」

朱里…………だ!

「………………… なんなんだよっ!!こんな時に!!」

一瞬、携帯ごと地面に投げつけたいような苛立ちに襲われて
その自分にハッとして
そんな自分が怖くなる。

(ごめんな 朱里 オレは、もう君に何も言ってやれない)
 
 

繁華街をとっくに抜けて辺りはもう暗闇。

遠くに踏切の赤い点滅と電車が走り抜ける音。
ひと呼吸おいて、もう一度携帯を開いた時、携帯の着信が鳴った。

まさか朱里かとも思ったけど、そうではなく、相手はオレの寮の隣部屋の先輩からだった。
 

『あー 東洋か? 留守電入れよかと思ったんだけど 今日バイト早いじゃん』

「はい ちょっと急用があって… あの なんスか?」

『なんだよう?不機嫌だな〜 ほんなら早よ帰って来いや! 今帰ってくるとチョーウケるから』
 

ウ ケ る?……………
 

「すいません六堂先輩 オレ今 大事な用事があって」

ガッシャーーーーーーーン!!!
?!!!

『はっはー!! すっげー振り!! 選抜級だな!!』

「先輩?! 今の何の音ですか?! なんかもの凄い音したんですけど!!」

『あっと2枚!あっと2枚!』

『逝き去らせーーーーーーっ!!! クソ東洋がっ!!!』

?!!!!!!!今の声っ?先輩?ちょっと!!」

ガッシャーーーーーーーン!!!
ブツ………… ツー ツー ツー ツー ツー

「き 切られた…………」

あの聞き覚えの有る様な、毒めいた叫び声………

確かに クソ東洋 と聞こえた ……気がする…… (しかも逝き去らせと…)

「なぜルイの奴が 寮に …六堂先輩と 居るのか?sweat02

そしてあのけたたましい破壊音。

オレはルイの声を聞いて安心するどころか、混乱と不安にかられて寮までの道をダッシュした。

 


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ただ一つの答え

「東洋 東洋!!」
「……は はい!」
「なにボーッと突っ立ってんだよ!司サンのテーブルにこれ持ってって!」
「あ、すいません」

バイト中もずっと後悔してる。

必要以上に大音量の店のBGM、いつもはそれが何よりも嫌だったのに
なんだ今日は音が耳に入ってるかどうかも分からない。

「おっせーぞ! 東洋! 松崎のお姉様がお待ちかねだろーが!」

「すいません」

「あらあ? どうしちゃったのよ〜東洋君〜 お顔怪我してるじゃない?」

「あー… ちょっと転けちゃって」

「ベタだなー東洋!!顔からダイブかよ!!」

「ハハハ……………そっス。」

「じゃ松崎のお姉様。今夜はこいつの間抜けな顔面完治に乾杯させてもらっても良いスか?」

「ホホホ じゃあ新しいボトル開けなきゃね〜!」
「やった!東洋!!ドンペリ一本!!」

「は、はい………………」

「ドンペリ入りましたあ!!」
「ホホホホホ」
「出るぞ!司サンのドンペリの舞が!」

ドンペリ………
あいつ今頃ちゃんと家に帰れたのだろうか?

一人で飯も満足に食えないあいつ…

なんか悪いもん拾って食ったり

車にぶつかって怪我したり

チンピラに喧嘩売ったり

お菓子につられて悪い奴に誘拐されたり…………
 

まさか

子供かっ……!!

けど
 

『兄上は僕に死ねと言ったけど……』
 

あいつの家には泰親が居るんじゃないのか?

冗談だろ?
だって実の弟に、本気でそんな事言う兄貴が居るか?

あの時、鳴滝の前に引き抜かれた、あの白光る軍刀

カナリアはどうなった?

逃げようと思えば、いつだって逃げられたあの可哀想なカナリアは…殺されて地に落ちたんだ…


「おいこら!東洋!何処行くんだよ!!」

「すいません!!今日上がります!!」

「てめannoy!こら!オレの舞の途中に!!」
 

何を迷ってたんだオレは!

答えは一つだったはずだ…

その後はどうにだってなるんじゃないのか?

結局オレは、自分の保身だけ考えてたんだ…

戦争を直視しない平和ぼけした奴らを軽蔑しながら

それ以下のこの最低な状況……

泣いてるあいつを放ったらかしにして………

答えは
ただひとつ

「ルイ………」 

オレはルイが 好きだ 。

 

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番外編「雲居」

オレは何処に行った?

なんだか思い返せば、すべてがもう無い目の下に鮮やかに蘇る。

夏の初め

ひしゃげた自転車

でもその先は

オレの姿なんて何処にも無い。

ただ

映るものを

ぼんやりと眺めているだけ。
 

蝉や

雨や雷や

花火や
 

ユキ
 

ユキお前もう大丈夫か?

オレにはもう

お前に触れる手を無くしてしまったから

もう

抱きしめる事もできないけど

無力だ

無力だ

どうせすべてを無くすなら

この気持ち共…

思い出共

消えてしまえばよかったのにな……

ほらまた

家の軒先に

出会いの向日葵が咲いたよ……

 

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番外編「松田アラタ攻略方法.2」

「ちょっと… !ちょっと待ってください!!」

フリフリとジュディとそのリーマンとで3ショットの写真を撮った後、御礼を言って去って行くそのリーマンを追いかける。

「きゃあああheart04フリフリが走ってる〜っ!!」
「着ぐるみ!!マジ可愛い〜!!」

女子高生に騒がれ、寄ってくるのを振り払い
オレ、内村学はそのピンクのウサギの着ぐるみのまま
やたら足の速いそのリーマンを追ったんだ。
 

早ぇ

まじ早ぇ…!!

走ってるわけじゃないのに

急いでる風でもないのに……!

間違いない… あの足の早さ 人ごみをすり抜けるあの無駄の無い動き…

絶対あいつ 営業系!!!

 

「ちょっと…………!!」

振り向いて! 見えなくなる!

「痛ぇーなあannoy!!なんだ?!テメェ!うさぎ!!」
「す、すいません!!」

だって今、あのリーマンと別れたら

それきり会えなくなっちゃううじゃん!!
 

肩に
着ぐるみの手が触れる。
 

「はい?」
 

届いた………!!!

「あ、あの す いません」

「あ〜! フリフリさん!! どうしたんですか?!」

着ぐるみの中でぜーぜーと息切れするオレに、またあの爽やかな笑顔。

大人の癖に邪気が無いというか…

思わず、見惚れる。 
 

「話が… 今度時間つくって 会えないでしょうか?!」

「え…………?」

人ゴミの中で対峙する、サラリーマンとウサギの着ぐるみ。

そして沈黙。

雑踏の音と緊張にに気圧されてなんだか次の言葉が出てこない。
 

商談ですか?!

「へ?!商談?!」」

リーマンの表情が、なごんだそれから一気に引き締まった感じになり、なにやら胸ポケットから取り出した。

我が社では来春に向けて新しいキャラクター商品の企画がありまして、ピンクモンターナさんのフリフリとジュディは注目していたキャラの一つなんですよ!!まさかモンターナさんからお声をかけていただけるなんて何かの御縁としか思えないなあ!! 早速上に報告しまして場を作らせていただきます!!あ!ご連絡は本社様の方でよろしいでしょうか?!

「い、いや〜 あ、あのう 商談っていうか…………」

手渡された名刺sweat02

なんだか余りの勢いに もう違うとは言いにくい……………

「いや〜 こちらから 連絡はさせて いただきますんで… 本当に すいません名刺…置いて来ちゃったみたいで」

「いえいえお気になさらないでください!お仕事中ですもんね! じゃあぜひその際には よろしくお願いします!フリフリさん!」

「は、 はあ…」

着ぐるみの手をがっちり握られ、深々と営業的お辞儀をされた………

ちがう!ちがう!ちがうんだっ!オレが言いたかったのは!!………coldsweats02

 

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涙目で不安げで

轟音にふと見上げる。

木々の隙間からのぞく真っ青な空を

黒銀色の哨戒機が途切れ途切れに旋回しているのが見えた。

ルイは空も見ない。

聞こえないかのようにハンバーガーにかぶりつく。
 

「切り裂きやがって…………」
 

呟いたのはルイだ。

「ルイ」

「……… 今朝帝都の土御門本家から新しい SW が送られて来た だから僕はもう用無し。」
「あ た ら し い S W ?」

「まだ8才だって…」

オレ達のベンチの前を、ベビーカーを押した女が横切る。

「僕は戦闘の途中で気絶して 一匹の式神も飛ばせず 兄の顔に泥を塗り 頭がパニックを起こして大暴れした挙げ句、呆れた軍はかねてから要請していた新しいSWを迎え入れ、僕は晴れて自由の身となったわけ」 

静かに、まるで他人事のようだ。

「式神ってのは あの白い鳥の事?」

「…あの女… 鬼に憑かれてんな」

ルイがさっきのベビーカーの母親を指差した。
 

「な、突然何言い出すんだよ?! 鬼?!」

「ベビーカーの中身 あれ赤ん坊じゃない 人形だぜ? 狂ってんだ」

「………………っ!!」

女の背中はもう小さくなり、此処からではそんな事確かめられようも無い。
 

「な?」
「え?」
 

「こんな目なんか無い方が、幸せだった きっと」
 

ざわめく木々にあんなに五月蝿かった哨戒機の音が打ち消された。

「この街は化け物だらけ 生きてる奴も 死んじまった奴も それを見続ける 僕でさえ……」

「………………… 化け物だなんて」

「目をとじると式神達の恨み言しか聞こえない «また貴方は私達を使って生きる命を喰らうのか» って… まるで僕が望んでそうしてるみたいじゃないか……………!」

最後のほうは殆ど涙声だった………

オレは何も言う事ができず、もう一度空を仰いだ。

「でもようやく解放されたわけだし… 兄上には死ねって言われたけど……… 死ぬかッつー話だよ!ふざけんな… オレほら 出来ない事ばっかりだしさ!」

「え?」

ルイがオレの腕を掴んで、オレの目を瞬きもせずにジッと見つめた。

「僕はもう帰る所が無いんだ…… 東洋にもっと色々教えて欲しいんだ……」

涙目で
不安げで
今まで見た事が無いルイの必死な感じ

オレは正直、戸惑っていた。
 

「な… 鳴滝が居るだろ? それにほら オレ寮生活だし 知っての通り貧乏だし」

「正宗はあいつには逆らえない… 東洋は」

あっと今にルイの目から涙がこぼれ出す。

オレの腕をつかむルイの力が急に弱くなる。
 

「……… これから バイトも あるし ………ごめん」
 

その時のオレには、ルイを支える自信が無かった…………
 

「…………………… わかった」
 

意外にもあっさりとしたルイのその言葉は、オレの心に後悔の念を生み出した。

オレの腕からルイの手が離れる。

「ルイ…… オレ」
「これ本当に美味いな!! こんな美味い食べ物があるとは損したな… 今まで…本当に」

ルイは

無理に笑っているように見えた。

泣きながら……………

「これ食べたら行くよ 僕家に帰る事にする! 悪かったな… 東洋」

オレは思っている事を口にする事が
出来なかったんだ……… 


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再教育.5

五経山公園

ちょっとした森林浴が出来るその丘の上の大きな公園

昔の偉人の銅像があったり、古い神社があったり、美術館があったりで人もちらほら歩いてる。

その木陰のベンチにルイと並んで座る。

「これ食べていいのか?!」

「ファミレスで殆ど食えてないだろ? 最後はなんか居づらくなって出て来ちゃったしさ…」

ここへ来る途中、ファーストフード店に寄ってハンバーガーを買った。
(始めからこうすれば 良かったのかもな)
 

「このまま?」

ハンバーガーの包みを剥がして、ちょっと不安げにオレの顔を覗き込む。

「もうフォークはいいよ そのままかぶりつく。お前ハンバーガーも知らないのか?」

「はんばーがー?!かぶりつく?!すげー… 野趣溢れる感じだな!!」

初めて見るハンバーガーに感動したのか

ルイは目をきらきらさせてまじまじとそれを見つめる。

食べ方も例によってぎこちない。

それでもさっきよりはちゃんと口の中に入っているようだった。
 

「おいひい!おいひい!とうよう!」

「はあ?なんだって?」

口をもごもごさせながら嬉しそうにしゃべるルイが、なんだか可愛く見えて来た。

可愛いって…………………

木々の狭間から鳥のさえずりが聞こえる。
太陽は西へ少し傾いてきたか?

夕方になったらバイト行かないとなあ………

「東洋! ジュース!」

「は?…あ?!そこにペットあんだろ!自分で飲めよ」

「手がべたべただから… 飲ませて」

……………sweat02
 

まったく…
 

世話が焼けるよ…
 

周りを見渡し、誰もこっちを見ていない事を確認してから一緒に買っておいたオレンジジュースのペットボトルを開ける。
 

開けて

その飲み口をルイの口元に押し当てる。

「傾けろよ ヘタクソ!!」

「うるせっannoy

「もうちょと……」

ジュースでルイの唇が濡れるのを、なんだか見ていられない。

目をそらした先の、ジュースを飲み込むたびにゴクリと動くのど仏にさえ赤面する。

全く

格好つけて教室を出てきたくせに

今のオレの

なんてぶざまな事か…………

大体オレは

なんでこんなにこいつの事ばっかり構ってやってんだ?


「ルイ…… オレの部屋泊まるってどういう事? なにかあった?」

ルイのあの兄貴が、庶民の家に外泊を… しかもオレの部屋なんかに泊まる事を許すとは思えない。

それにいつもべったりの鳴滝はどうした?

「僕はもう用無しなんだ 代わりが来たから 僕はもう要らないんだって」

「え………?」

 

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刺客請負人!! 

金曜時代劇「刺客請負人」の感想ですcatfaceBL小説記事ではありません。

ワーイ!
待ちに待った第二シリーズ開始ですshine
しかも2時間スペ!!オープニングも華麗に変身(笑)

よいですな〜よいですな〜
すっごくよいです〜happy02

やっぱりこうでなくちゃという、ウメキチのつぼにはまりまくりの現時点で最強時代劇

主役、脇役とも重厚感溢れる俳優陣に、迫力満点の殺陣、そして画と音楽の美しさshine…まるで映画を観ているかのような贅沢なドラマです。
 

松葉刑部さんのオトコマエ度は相変わらず最高。格好付けなくても格好良い…武士の地位は要らねども義の魂は捨てられぬ…時には敵にも救いを諭す。これが本当の男前!!

そしてパワーアップして登場した、再びの敵となるであろう闇猫のお吉!!

男装しているかような色気と凛々しさ 低い声でゆっくりと語る台詞まわし、優雅な所作はお能の役者のごとく美しく誇り高い…

未だかつて、主役役者(しかも格好良い)とこんなに対峙できる女敵キャラはいたかしら?

画面の端っこに居ても、ハッとするもの凄い存在感です。

今回は孤高の存在として登場したので、これから刑部とどうやって対決する事になるのか…ドキドキsweat01

「刺客請負人」はやっぱりお吉が居ないと締まりません!
 

それにしても最近の時代劇

なんか敵方の描写が軽い物が多い気がして…(&ストーリー自体敵の弱さに比例してなんか軽い…)

それ比べて、刺客〜ではお吉の他に「闇法師」なるあやしい集団も登場!

一筋縄ではいかなそうな、不敵な集団で、一回45分や前後編位ではとても退散するような感じではありませんでした(笑)

ただの勧善懲悪ではないんですよね…

敵と言われる存在にも過去や義理や誇りがある。

主人公だって自分の行いに悩む。

だから敵を倒したって、笑ってめでたしめでたしとは終われない。
(最後の菊姫と刑部の別れのシーンは切なかったな…)

人間ドラマだな〜…って思います。

しっとりとした上質な情感が、台詞が無くとも画面いっぱいに広がる感じ。

 


来週から普通に1時間なのかな?

それでも毎週貴重な1時間になりそうです。

しあわせ〜heart01

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再教育.4

「ありがとうございます。 一万九千五百円です。」

ファ

で…………

¥19500…………shock

ああ…… オレの 今月の 全財産が
(バイト代が入るまであと二週間もあるのに!!)

「お客様 一万九千五百円 でございます!」

店員が顔を突き出して繰り返す。
払いますよ!!払えばいいんだろ!!そりゃ払うさ!!

「東洋 これを使え」
「あ?」

ルイが胸のポケットから何かを取り出してオレの目前に差し出す。

金?
なんだこいつ金持って来て………
 

「……………………何? このカード」
 

メタルブルーに光り輝くカード

「兄上が金の代わりになるからって去年の誕生日にくれたんだ 僕は使った事がないから分からないけど… 幾らでも物が買えるんだって言ってた」

誕生日に?!

無制限?!

か…格差だ!!
格差!!格差!!政治は一体なにをしてるんだっ!!
 

「東洋にやるよ」

「へ?」
 

「僕には必要ないものだから」
 

何言ってんだ?ルイの奴……

多分金に不自由した事がないから、金に対する執着心も無いんだろうな……

「お客様? カードで?」

「あっ …… いや 現金でお願いします」

「東洋? なんで? これ使えないのか?」

「いいよいいよ…」

なんか
あの兄貴に 土御門泰親に奢ってもらうみたいで 癇に障る。

「……使えないんだ なんだよあいつ!嘘つきやがって! じゃ、もうこれゴミだな!逝きさらせ!」

  
    ぱ  き っ ………
 

うわああああああああああっ!!! なっ なに折ってんだよ!!!

あはははは!ぱきっ!だって面白い音だな!あはははは!

なにがそんなにおかしいんだよっ!
 

そのメタルブルーに輝くセレブカードは
ルイの手で真っ二つになった………(天へ召された……)

だめだ……!

こいつには金のありがたみも教えてやらないと

 


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再教育.3

「だから グーで握りしめるんじゃなくて… 親指と人差し指と中指!! フォークに顔も近づけろ!!あ〜っなんで口に入らないんだよっ!!またこぼしたっ!!」

初めての «自分でご飯» にルイは真剣そのものだ……… 

フォークを持つ手はカタカタと震え
肘もぎこちなく硬直し
なぜか食べ物が口の中にinしない為、ルイの顔はまるで小さな子供のそれのようにソースだらけになっていた……

(ひどい……… 本当にひどい)

「ああ〜っ もうっ… とりあえず口を拭けよ ほら」

ルイに紙ナプキンを手渡す。

「お腹すいた…… 東洋は 意地悪だ…… 僕を馬鹿にして笑ってるんだろ」

(うわっ! 今度は泣き出したっ!)

口を拭きながら、ソースで汚れたテーブルに俯くルイの目からは、ポロポロと涙がこぼれ落ちている。

料理がきてからもう一時間近くもフォークとの格闘。

殆どルイの口には食べ物は入っていないと思う……

(………本当に空腹なんだな……… やっぱりオレが食わせてやれば… いや! いやいやいや!!)

「あのなあ ルイ ほら あっちで食べてる小さな子供見ろよ」
「こ ど も …?」

5才くらいの子供が窓際の席で母親と並んで、お子様ランチらしきものを食っている。

「母ちゃんがいたって、あーやって一人で食ってんだ… あのガキの周りも相当キタネーけど… 練習しなきゃ…いつまでたっても一人で飯食えねーだろ?」

「………………」

こちらの視線に気付いたのか、その子供がオレ達の席をちらりと見る。



フォークを持って泣きべそをかくルイに向かって
勝ち誇った様な笑みを浮かべた!!
 
 

土御門ルイ(16才):「あ の クソ餓鬼!!!!annoy」  

「ル ルイ?!」
 

闘争心に火が灯ったのか
ルイはナプキンで涙まで拭うと、もう一度フォークを構え、ガチガチと料理と格闘を開始した。
 

その後
ルイをせせら笑ったその子供とは、親をからめて一悶着が起きる事となる。

原因はルイと子供との
ドリンクバーお子様ゾーンの順番の争いだった………

最初は互角な口喧嘩だったが(本気喧嘩)

ルイの

『貴様の口にカエルとムジナをねじ込むぞ』

この発言でさすがの子供も、あまりの恐怖のイメージで大泣きし
本格出動した子供の親に
なぜかオレが本気で謝るはめになった………
 

「すいませんすいません!! なにぶん子供同士の事ですから穏便に」

「はあ?!子供って!!高等士官学校にも行ってる大人じゃないの!」

「いえ… ですから 一人でご飯が今日が初めてで その… すいません!!あとでよ〜く言い聞かせますから!!」

「ババアに隠れていい気になってんじゃねーぞ!今晩お前の枕カバーにカエルを仕込んでやる!」 

ル イ!!crying

「わああああああああんっ 怖いよーっ ママー!!」

「ち…ちょっと!!うちの僕ちゃんになんて事言うのよ!!」

「すいません!すいません!すいませんー!!!」

「ケケケケ」

 


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再教育.2

「メイドー!! そこのメイドー!!」
「おっおいっ!!!sweat01このバカ!!!…あ スイマセン…気にしないで下さい」

店員が思い切り怪訝な顔をしてまたこっちを見る。

オレは仕方なく、そっちに向かって何度も頭を下げた………

「僕に向かってバカとはなんだ!バカとは!!メイドが仕度をしなければいつまでたっても食えんじゃないか!!」

ルイがテーブルを両方の拳でドンとたたく。

「はあ……あのなルイ……注文はここのボタンを押したら直ぐ来てくれるし」

「ボタン? おおっ!このミサイルの発射装置のようなものがか?!」

「ミサ………… それと店員はあくまで給料を貰って働いている従業員で…メイドじゃないんだよ…」

「だって!メイドの格好をしているじゃないか?!」

そうか?!
……まあ 確かにそんなイメージではあるけれど……

「とにかく…… まあいいや… ほら押させてやるから押してみろよ」

呼出しボタンをルイの方へ寄せてみる。

「何回?!連打した方がいいのか?!」
一回だっ!!絶対連打するなよ!!
 

ピ〜ンポ〜ンnote
 

「おおっshine!!成る程!!店中に共鳴するというわけだな!!」

はあああ…………………
 

注文した食事はファミレスだけにあっという間に運ばれて来た。

さっきは黙って聞いていたが、とても一人じゃ食いきれないような大量の料理の数々…
しかも明らかにかぶってる奴がいくつかあるし…

あきれてルイを見ると、ルイも不思議そうにこっちをジッと見ている。

「なんだよ……?腹減ってんだろ?……早く食えばいいだろ?」

「うん、はやく食いたいんだ 一刻もはやく」

「だから…………」

「食べさせてくれないのか?」
……………………………………………?!!!は?!!!
 

僕は自分でナイフとフォークを持った事がない
 

な、なにを〜っ?!!!!

「うっ嘘付け!!じゃあ今までどうしてたんだよ?!」

ルイがオレの目の前で、首を傾げる。

「そうだな… ガキの頃はメイドが… それからは、正宗がずっと僕の口に食物を運んでいたな」

鳴滝いいいいいいいっannoy!!!

 


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デトロイト・メタル・シティというマンガ

マンガ本の感想です。BL小説記事ではありません。

デトロイト・メタル・シティ!!!
松ケン君shineが主演する夏映画の原作です!

面白ーいっhappy02めっさ面白ーっ!!
映画の原作っていう意外の予備知識無く手に取ったので、つまらんかったら嫌やな〜と思いうっかり一巻しか買わなかったっ… ああ阿呆や 私(涙)

続き読みたい!
何巻まで出てるのか分からないけど全巻買っときゃ良かったsadsweat01

これはですね

ポップでおしゃれな音楽を目指していた若者が、うっかり(意図と大いに反して)デスメタル系インディーズバンドのカリスマボーカルになってしまい、数々の不幸に見舞われていくというお話です。(あくまで一巻読んだだけなんですけどね)

この主人公の根岸君。
…実は真性のドSなのでは?(笑)

復讐の火が灯るともう手の付け様のないデスでメタルなサタンと化す…

キレ方もかなり危険領域

楽曲「恨みはらさでおくべきか」…聞きたい(笑)

ウメキチはデスメタルな音楽はちゃんと聞いた事が無いんですけど、なんかクラウザーさん(根岸君)の声が激しい音と共に聞こえてくる様な気がしてならないのが不思議(笑)
ちなみにテトラポット・メロン・ティの曲も聞きたいなあ…

佐治秀紀?!

サジヒデキ?!

まさかカジ……………………!!!!shineshine

ウメキチはカジ君の大ファンです!!!若杉先生はカジ君ファンなのでしょうか?
さっき映画のHP見に行ったんですけど根岸作の「甘い恋人」を歌ってるのはカ ジ 君 !だあああheart04

うおおおっ
なんかほんとスゴいです!スゴい!!DMC!(MはM字開脚だし)

明日は絶対他の巻をゲットするのだ〜!!
&映画も観るぞおおおおっ

しかし松ケン君はLに続いて、塗り物系がやけにハマりますね。
根岸姿の公然◯褻カット(←クラウザーさんによる)も可愛いかぎりです。なんか恥ずかしいので ◯ で濁すsweat01

とにかくこんなに作中に「豚」という単語が飛び交うマンガを読んだ事がありません。

そんなデスメ(勝手に略してみました)な言葉をさらりと笑って流せる方にはおすすめですeye
なんで…青年〜向けでしょうね。いやいや 確実に 青年コミックですよ、念のため。

そして明日は眠れぬ夜を過ごしそうです。(マンガ読破する為に…笑)
つーか今…今読みたいいいいいっdash

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再教育.1

授業をサボった身で、学食へも行けない…
寮の食堂だってこんな時間に開いてない…
 

東洋ーーーーーっ!!腹が減ったっ!!もう我慢出来ないっ!!この僕を飢え死にさせるつもりか!!

annoyっ」
 

仕方なくオレは…五月蝿くて生意気なこいつの腹をとりあえず満たして、なんだか分けのわからない状況を聞き出す為に(ゴーヤを抱えたまま…)ファミレスへ向かったんだ……

店員に案内されて席に着く。

正面に座ったルイは、さっきからキョロキョロ辺りを見渡して落ち着かない。

「…どうしたの?」

オレはため息をついて、そわそわするルイに問いかける。

「東洋… 僕はこういう大衆食堂は初めてなんだ… なんだかおもちゃ箱みたいだな?」

大衆……sweat02

「まあ、華族様が行く御上品な店と比べたら…」

と、東洋っ!!あそこにある精密機械の様な物から液体が出ているぞっ!!あれはなんだっ?!

ルイの大きな声に、横を通る店員やら隣の席の客がこっちを見る。

「おいっ! お前もう少し静かに喋れよっ!…… ただでさえその士官学校の制服が目立つんだから」

「なあ東洋っ!!僕もあれ!!あれ押してみたい!!」

はああああ………
ドリンクバーか………

「わかった!わかったから…… とりあえず食い物を先に選べ! あと こういう所では周りの人を考えて話す事! 約束しないとあのドリ… 精密機械のボタン押させないぞ!」

「うん!了解した!」

疲れる………

子供と話してるみたいだ………

ルイは、オレが手渡したメニューまでも、その色白の顔を紅潮させてやけに嬉しそうにそれを見ている。
 

「あ!!そーだ 東洋!!」

「……なんだよ 今度は……… はやく決めろよ……」
 

「ドンペリは白でも構わな…」
 

無ぇーよannoy……ファミレスにドンペリは…… しかもお前未成年だろっ!」
 

「なんだよっ! 正宗が駄目駄目言うと思ったら、東洋もそんな事言うのか?」

「そういうこの国の決まりなの!!オレも鳴滝も正しい!! お前はドリンクバーなんだろ?!」

「……………… じゃあ食後の甘いのは?」

「はいはい もう好きなだけ食えよ………」

隣の客がなにやら、こっちを見てくすくす笑っている……

ルイはメニューのデザートのページを見て、やっと大人しくなった……

オレの…
悲惨な一日の始まり……
 

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治った!

未だバイトへ行くにも時間がある。

教室を飛び出して、寮へ帰る気にもなれず

何となく歩いた先が

あの ゴーヤ畑 だった。
 

(この前来た時より大分伸びてるなあ…)

ゴーヤの青々とした葉や蔓を見て、改めてその生命力に感心する。
 


 

ふいに畑の奥に目を遣ったその時だ。

「ん?!」

茂る葉がなにやらガサガサと風ではない音を立て始めた!
獣系?!…いや待て待て

確かに田舎だが…山から大分離れたこんな所に出るなんて聞いてないぞ?!
思わず身構え、目を凝らす。

そして不敵なガサガサ音がどんどん近づいて来て…………

何かが

飛び出して 来 た !!
 

わあっ!!!

…………………………っ!!!!とうよう?!

「へ?」
 

一瞬身じろいでしまった自分がなんだか情けない……

そこに立っていたのは
ゴーヤの実を両手いっぱいに抱えた

士官学校の制服姿の土御門ルイだったんだ!!

「な、…なんでルイがここに居るんだよ?! お前 大体身体……」

「治った!!ちょうどいいや!!東洋これを持て!!」

ゴーヤの山を無理矢理オレに押し付ける。
青臭い匂いがやたらに鼻につく…

「治ったって… お前… つ、つーかこれ人んちのゴーヤだろ?!お前何勝手に収穫してんだよ!!annoy

「僕がゴーヤ泥棒だとでも言うのか?失敬な奴め…」

「だってそうだろ?!お前にここまで常識が無いとは思わなかった!!」

ここでルイが僕をキッと睨みつけ、思い切り息を吸い込み チャージ する。
 

この畑は 僕の 所有物だ!!
 

な に?!
何処かの華族が買い取ったていうのは……

「し… 知らなかった…………」

でも なんで………

「せっかく貧乏にあえぐ東洋の為に食材を調達してやったというのに… まあいい 僕は寛大なんだ」

「え?」

「それにしても随分と下校が早いじゃないか 先に行って驚かせる計画が台無しだ」

「先に…って ど、何処へ」

「今日からお前の部屋に泊まるから!!腹が減った 何か食わせろ」

「は…はあ?!!

理解に苦しむオレをその場に置いて
ルイは一人、畑添いの道を悠々と歩いて行く。
 

「泊まる…?オレの部屋に?は?!」
 

オレは混乱しながら、構わす歩き始めた鼻歌まじりのルイの背中を

ゴーヤを抱えながら追いかける事にした。


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もう一つの世界へ

「うすっ!おっ!ヒッデーあざだなそれ! …あれ?! なに?!今日は可愛い彼女と一緒じゃねーの?」

「ああ?………はあ………」

昇降口に入るなり…クラスメートから朱里の事を振られるなんて… 

「……別れてきた」

「は? ってマジ?! うっそだろ〜?!」

声がでかいぞ!

「別れたんだよ!だからもう一緒には居られねーの!」

「うーわ!東洋お前信じらんね! あんな可愛いのめった居ねーぞ?!」
 

もともと朱里からつき合おうと言われ

こいつの言う通り、別に嫌な気分でも無かったからつき合ったけど…

結局
あいつを友達以上に好きになれる事はなかったし

しかも今日

オレは決定的に

朱里とは一生相容れる事は無いんじゃないかと

思ってしまったんだ。

別れるにしても これは酷い とも思う…

でも

オレは朱里との別れを利用して

今までの自分ともさよならしたかった…

一刻も早く

自分勝手なのは重々承知…

 

教室には当たり前ながらルイは居ない。

一日中その空いた席を見て過ごす。
 

「……………」
 

授業中は退屈そうに頬杖をついて、黒板を眺めてた。

体育はいたって真面目だったな…

身体悪いくせに 結構本気だったんじゃないか?
(きっと人並み以上に負けず嫌いなのかもしれない)
 
猫をかぶってたとはいえ クラスメイトとの仲は良好だったし。
(ただしオレを除いては……)
 

なあルイ……

お前ひょっとしてオレに会いにこの学園に来たのか?

それともこれはオレの思い上がりか?
 

なあ…今どうしてる?

あの非道い兄貴に苛められてないか?

身体は少しは良いのか?

なんでオレは お前の事を忘れているんだろう?
 

「ルイ……」
 

この平和な教室

オレ以外の制服を着た生徒達に教師

このいい知れぬ疎外感 
 

「どうした?! 山河!」

座って居られなかった。

「お、おい! 山河!!」

オレはそのまま立ち上がって、呼び止める教師を無視して教室を出た。

背後で一斉にざわめきが聞こえる。

昨日までオレが好んで居た場所。

オレにはそれが、足に深々と突き刺さる針のむしろのようで

とても耐えられたものでは 無かったんだ……

 


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百日紅の日に

何処までも続く夏の青空

今日も朝から

哨戒機の低いエンジン音だけが

重苦しく

その空一面に響いている。

いつもと同じ
いつもと… 
何も変わらない朝だった。
 

テレビでも新聞でも昨日起こったはずの、敵国との戦闘の事は全く報じない。

芸能ニュースや天気予報 
事件や小ネタの繰り返し、シメの占い…

違う

こんなのは違うと… 土御門泰親に殴られた口元のアザが痛みで告げる。
 

「やだー どうしたの? その顔!」

いつもと同じ

朱里との登校

相変わらずの 朱里…

「…… まあ ちょっとたちの悪い奴に さ…」

「もうっ!だ か ら! あーいうバイトは止めた方がいいって言ったのに! まだ腫れてるよ?ちゃんと冷やした?」

「…… バイトじゃねーよ ……」

「東洋?」

説明するのも面倒くさくて、そのまま黙って歩く。

別に話す事でもないか… だってこれは オレとルイの…
 

ジジジ と
道路脇のサルスベリから蝉の鳴き声が聞こえる。

サルスベリは朝の眼に染みるような、傷のような…紅い紅い花をつけていた。

それがあんまり紅いので

なんだかとても 胸が痛んで仕方なかった。
 

「なあ朱里 夜の流れ星見たか?」

ふいに思い立って 朱里の顔も見ずに聞いてみる。

朱里が小走りでオレを追い抜き、前からオレの顔をニコニコ笑って覗き込んだ。

「見たよ〜!! 部屋で勉強してたら丘の向こうが急に明るくなって! とってもキレイだったわよね!」

キレイ?

「お前 あれがなんだか知ってるのか?」

「知ってるよ〜!」

オレの腕に朱里が自分の腕を組んできて、必然的に身体が近くなる。

これもいつものように…

「すごいよねー 学校で空襲警報が鳴った時は怖かったけど〜結局ナーンてことなかったし! 五経の空軍は無敵だもの! でも本当に キレイだった…」

なんて事なかった?

無敵?

「…………朱里 違うよ 昨日はその星のせいで きっと誰かが死んでる」

「やだ どうしたのよ東洋! そんなの私達民間人にはどうにもならない事じゃない」

朱里に触れているオレの腕が、それを拒絶するように硬直する。

自分の中の何かが 一気に冷めて行くのが分かる。
 

これが僕の生きていた世界。

まかり成りにも…戦争で親を殺されたオレが 安穏と過ごしていた世界。

今はなんだか、薄ら寒ささえ感じるその……
 

「朱里」
 

オレは腕を朱里のそれから解いて、不審がる朱里の顔を見た。
 

「え?…… 東 洋?」
「ごめん……」
 

何人かの生徒に追い抜かされる。

夏の日差しが容赦なく肌に突き刺さったが、不思議と汗は流れてこなかった。
 

「オレ もう駄目みたい」
「え……?なによ………?」
 
 

「別れよう」
 
 

これ以上一緒に居ても オレは朱里を好きにはなれないんだ……
 


「…ごめんな…」

オレは、信じられないという様な顔をする涙目の朱里に

なんの慰めにもならない謝りの言葉を付け加える。

酷い罪悪感に、これで良いんだと自分に言い聞かせて
 
「東洋!!」

オレは、涙をぽろぽろ流して何かを訴える朱里をそこに置いたまま、学校への歩みを進めた。

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