夏のおもいで
ふたたびオレの部屋。
椅子に座るオレの正面に、正座したルイと六堂先輩…
なぜか二人とも水泳用のゴーグルを付けている。
「で?
外でやったら寮長にバレるからと…… オレの部屋で? 花火を?」
信じられない……
さっきバイトから帰って来た時、部屋の新しい窓から火花のような光がチカチカ反射していたんだ…
何事かと慌てて部屋に入ると…
花火を激しく振り回す六堂先輩とルイ……
「大丈夫だって!! 布団とカーテンは廊下に撤去して ほら水も撒いたし!…だからさ 正座しちゃうと膝が濡れて気持ちわる……」
「がまんしてくださいっ
!!!」
「ひいっ
」
「東洋… 六堂大佐を怒らないでくれ! 僕が花火をしてみたいと言ったんだ」
「六堂……た い さ〜?」
「六堂大佐は実に物知りで、実に頼りがいのある男だ! だから僕は尊敬の気持ちを込めて六堂大佐と呼ぶ事にしたんだ!な?」
「そうだぞ 東洋君… 貴様もこのオレ様をもっと敬え!ひれ伏せ!かわいがれ!」
…なんか二人ともえっらそーに
…
「ルイ………」
「なんだ?」
正座はしているものの、ルイは全く悪びれていない。
ゴーグルを額の辺りまでずらしてニコニコとオレに笑いかける。
「火は危ないってのは…分かるよな?」
「そりゃ分かるさ!僕は火薬と大砲の演習では実に良い成績を……」
「…部屋で火遊びをしたらうっかり火事になっちゃうかもしれないだろ?」
「そこで六堂大佐の名案でな 部屋中に思い切り放水してみたんだ!おもいきりっ!!そしたらこんなになっちゃった!ぷぷぷ
」
「ル ルイ……… そもそも部屋に しかもこんなに床に溜まる程 水を撒いちゃあ駄目なんだよ…」
怒りを必死にこらえて
なるべくゆっくり、冷静になれよと自分にも言い聞かせて話した。
「そうか… 駄目なのか」
「そうだ 部屋では 花火も 水撒きも 絶対 ぜーったいに駄目だ!!二度とするんじゃないぞ!!」
そこまで言ってようやく反省し始めたのか
ルイがちょっとだけ俯く。
「まあ!まあまあまあ! 東洋君! せっかく帰ってきたんだ 寮長のじいさんももう眠りについた事だし表でもういっちょやろうぜ!」
「やりませんよ!その前にこの部屋をどうにかしてか…」
「東洋!!やろうやろう!! 僕、東洋と花火がしたい!!」
「お おいっ!ルイ!」
説教中のオレの許可無く、六堂先輩は正座を解いて、窓ガラスを全開に開ける。
オレはルイに腕を掴まれ、無理矢理外に引きずり出された。
「土御門!東洋! ほら靴を履け!」
大声で…
みんなが起きるだろ?
「とうよう! ゴーグルしないと目に入るぞ!」
「花火を顔に向けちゃ駄目だろ!!それも禁止!!守らないなら……」
守らないなら……
花火か
花火なんて何年ぶりだろう?
暗闇に、さっそく先輩が点火した花火がバチバチと光る。
火薬の匂いと
夏の夜の湿気と
火花…熱
「あっち!!!ルイ!!こっち向けんじゃねーよ!!」
「あははは!!東洋も早く!!」
ルイの顔や身体が火花で明るく照らされている。
笑って
心から
笑って……
「うおぃ! 東洋君は一発目線香花火かよ
渋っ!」
「勝手でしょ!好きなんですよっ!」
「僕もせんこうはなびやるっ!」
なんだかな〜
ため息をつきながら結局、こいつらのペースに巻き込まれてしまった。
「きれいだな… 東洋… 楽しいな 東洋…」
悔しいけど
ああ…その通りだ。
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