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涙目で不安げで

轟音にふと見上げる。

木々の隙間からのぞく真っ青な空を

黒銀色の哨戒機が途切れ途切れに旋回しているのが見えた。

ルイは空も見ない。

聞こえないかのようにハンバーガーにかぶりつく。
 

「切り裂きやがって…………」
 

呟いたのはルイだ。

「ルイ」

「……… 今朝帝都の土御門本家から新しい SW が送られて来た だから僕はもう用無し。」
「あ た ら し い S W ?」

「まだ8才だって…」

オレ達のベンチの前を、ベビーカーを押した女が横切る。

「僕は戦闘の途中で気絶して 一匹の式神も飛ばせず 兄の顔に泥を塗り 頭がパニックを起こして大暴れした挙げ句、呆れた軍はかねてから要請していた新しいSWを迎え入れ、僕は晴れて自由の身となったわけ」 

静かに、まるで他人事のようだ。

「式神ってのは あの白い鳥の事?」

「…あの女… 鬼に憑かれてんな」

ルイがさっきのベビーカーの母親を指差した。
 

「な、突然何言い出すんだよ?! 鬼?!」

「ベビーカーの中身 あれ赤ん坊じゃない 人形だぜ? 狂ってんだ」

「………………っ!!」

女の背中はもう小さくなり、此処からではそんな事確かめられようも無い。
 

「な?」
「え?」
 

「こんな目なんか無い方が、幸せだった きっと」
 

ざわめく木々にあんなに五月蝿かった哨戒機の音が打ち消された。

「この街は化け物だらけ 生きてる奴も 死んじまった奴も それを見続ける 僕でさえ……」

「………………… 化け物だなんて」

「目をとじると式神達の恨み言しか聞こえない «また貴方は私達を使って生きる命を喰らうのか» って… まるで僕が望んでそうしてるみたいじゃないか……………!」

最後のほうは殆ど涙声だった………

オレは何も言う事ができず、もう一度空を仰いだ。

「でもようやく解放されたわけだし… 兄上には死ねって言われたけど……… 死ぬかッつー話だよ!ふざけんな… オレほら 出来ない事ばっかりだしさ!」

「え?」

ルイがオレの腕を掴んで、オレの目を瞬きもせずにジッと見つめた。

「僕はもう帰る所が無いんだ…… 東洋にもっと色々教えて欲しいんだ……」

涙目で
不安げで
今まで見た事が無いルイの必死な感じ

オレは正直、戸惑っていた。
 

「な… 鳴滝が居るだろ? それにほら オレ寮生活だし 知っての通り貧乏だし」

「正宗はあいつには逆らえない… 東洋は」

あっと今にルイの目から涙がこぼれ出す。

オレの腕をつかむルイの力が急に弱くなる。
 

「……… これから バイトも あるし ………ごめん」
 

その時のオレには、ルイを支える自信が無かった…………
 

「…………………… わかった」
 

意外にもあっさりとしたルイのその言葉は、オレの心に後悔の念を生み出した。

オレの腕からルイの手が離れる。

「ルイ…… オレ」
「これ本当に美味いな!! こんな美味い食べ物があるとは損したな… 今まで…本当に」

ルイは

無理に笑っているように見えた。

泣きながら……………

「これ食べたら行くよ 僕家に帰る事にする! 悪かったな… 東洋」

オレは思っている事を口にする事が
出来なかったんだ……… 


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