土御門泰親
「なあ ルイ」
「……なんだ?」
「この前、オレ達… キスしたよな?」
「………………」
「オレ あん時の自分もよく分かんなくて 恋人でも無いのに…さ」
「そうだな……」
「特別に思えてくる」
体調のせいもあってか、点滴の管をつなぎ横たわるルイの口からは
嫌みも悪態も出てこない。
カナリアがまた、天井を飛び回る。
「少なくとも僕は… お前の事を 5年も6年も前から知っていたよ」
「ルイ?」
その続きを聞こうとした矢先
バンという大きな音と共に病室の扉が開いた。
(もちろんノックもせずに)
そこに居たのは長身の 将校らしい軍服姿の男
白い手袋がなんだか禍々しい…
切れ長の目元や鼻梁は端正だが、何やら酷く冷たい印象をうけた。
オレは驚いて立ち上がる。
男は無表情に辺りを見回した後、つかつかとベッドに近づいて、その腕でオレをベッドから突き放した。
「なんだよ あんた!!」
オレが叫び終わるか終わらないか…
「兄 上…………」
え?
「いつまで寝ているつもりだ ルイ。 帰るぞ」
そう言うと、そいつがルイにかけられた布団を片手で剥がし、腕に挿された点滴の管を無理矢理引き抜いた。
その痛みでルイが声も出さずに顔をしかめる。
「おい!! なにやってんだよ!!」
あにうえだかなんだか知らないが そいつは病人なんだよ!!!
そいつの肩を掴む。
あまりの事にオレはそいつを殴ってやりたい気持ちだった。
「…私に 触れるな… 平和を享受されるだけの能しかない 愚かな平民風情が…」
決して声は荒げない。
でもその言葉には、なぜかオレが掴んだ手を思わず離してしまう程の威圧感があった。
ルイが深い息を吐きながら、苦しげに上体を起こそうとする。
男はルイの腕を掴むと、まるで物かなにかを引っ張るようにベッドから引きずり下ろそうとした。
「ルイ!いいから寝てろ!」
カナリアが
ルイのカナリアが運悪く、男の顔の前を
まるでそいつの所行を邪魔するように遮った。
「ふん まだこんな物を飼っていたのか?」
男は
この時初めて笑った。
胸を押さえていたルイが何かに気付く。
「あにう え… 嫌 だ 止めてくだ さ い…」
力なく
「さっさと捨てろと言ったはずだぞ」
「!!!」
白い手袋がした腕が宙を切るように動く。
病室に舞う黄色いカナリアの羽…
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