カテゴリー「BL小説 -番外編- 」の記事

番外編「雲居」

オレは何処に行った?

なんだか思い返せば、すべてがもう無い目の下に鮮やかに蘇る。

夏の初め

ひしゃげた自転車

でもその先は

オレの姿なんて何処にも無い。

ただ

映るものを

ぼんやりと眺めているだけ。
 

蝉や

雨や雷や

花火や
 

ユキ
 

ユキお前もう大丈夫か?

オレにはもう

お前に触れる手を無くしてしまったから

もう

抱きしめる事もできないけど

無力だ

無力だ

どうせすべてを無くすなら

この気持ち共…

思い出共

消えてしまえばよかったのにな……

ほらまた

家の軒先に

出会いの向日葵が咲いたよ……

 

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番外編「松田アラタ攻略方法.2」

「ちょっと… !ちょっと待ってください!!」

フリフリとジュディとそのリーマンとで3ショットの写真を撮った後、御礼を言って去って行くそのリーマンを追いかける。

「きゃあああheart04フリフリが走ってる〜っ!!」
「着ぐるみ!!マジ可愛い〜!!」

女子高生に騒がれ、寄ってくるのを振り払い
オレ、内村学はそのピンクのウサギの着ぐるみのまま
やたら足の速いそのリーマンを追ったんだ。
 

早ぇ

まじ早ぇ…!!

走ってるわけじゃないのに

急いでる風でもないのに……!

間違いない… あの足の早さ 人ごみをすり抜けるあの無駄の無い動き…

絶対あいつ 営業系!!!

 

「ちょっと…………!!」

振り向いて! 見えなくなる!

「痛ぇーなあannoy!!なんだ?!テメェ!うさぎ!!」
「す、すいません!!」

だって今、あのリーマンと別れたら

それきり会えなくなっちゃううじゃん!!
 

肩に
着ぐるみの手が触れる。
 

「はい?」
 

届いた………!!!

「あ、あの す いません」

「あ〜! フリフリさん!! どうしたんですか?!」

着ぐるみの中でぜーぜーと息切れするオレに、またあの爽やかな笑顔。

大人の癖に邪気が無いというか…

思わず、見惚れる。 
 

「話が… 今度時間つくって 会えないでしょうか?!」

「え…………?」

人ゴミの中で対峙する、サラリーマンとウサギの着ぐるみ。

そして沈黙。

雑踏の音と緊張にに気圧されてなんだか次の言葉が出てこない。
 

商談ですか?!

「へ?!商談?!」」

リーマンの表情が、なごんだそれから一気に引き締まった感じになり、なにやら胸ポケットから取り出した。

我が社では来春に向けて新しいキャラクター商品の企画がありまして、ピンクモンターナさんのフリフリとジュディは注目していたキャラの一つなんですよ!!まさかモンターナさんからお声をかけていただけるなんて何かの御縁としか思えないなあ!! 早速上に報告しまして場を作らせていただきます!!あ!ご連絡は本社様の方でよろしいでしょうか?!

「い、いや〜 あ、あのう 商談っていうか…………」

手渡された名刺sweat02

なんだか余りの勢いに もう違うとは言いにくい……………

「いや〜 こちらから 連絡はさせて いただきますんで… 本当に すいません名刺…置いて来ちゃったみたいで」

「いえいえお気になさらないでください!お仕事中ですもんね! じゃあぜひその際には よろしくお願いします!フリフリさん!」

「は、 はあ…」

着ぐるみの手をがっちり握られ、深々と営業的お辞儀をされた………

ちがう!ちがう!ちがうんだっ!オレが言いたかったのは!!………coldsweats02

 

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番外編「松田アラタ攻略方法.1」

暑い…………………。

若者の服や雑貨店の立ち並ぶ、7月のファッションストリート。

「ちゃんと動け! ウサギのフリフリ=モンターナがじっとしてちゃ可愛くないだろ?」

「先輩…… 勘弁して下さいよ…… もう2時間スよ」

「まだ2時間だろう? 根性の無い奴… あ!!お客様だ!! おどけろ!! ほらフリフリポーズ!!」

なんで25も越えたいい大人が、ピンクのうさぎの着ぐるみを着ておどけなきゃならないんだよ〜weep
 

オレの名は内村学(ウチムラ ガク)

25歳。 

今日はオレの勤めているアイスクリームチェーン«ピンクモンターナ»の、フランチャイズ展開151店舗店オープンの日だ。

子供や女性客に、着ぐるみで愛想をふりまく。
まさか抱きついてくる女子高生も、中に入っているのが30過ぎのメタボ系オッサンと今年で25になった冴えない本部社員だとは思っていまい。

(しかし、先輩はよく動けるなあ… メタボなのに…)

真夏の炎天下 ちなみに先輩はフリフリの女友達 ホワイトプードルのジュディ。……
 

あの 写真とってもらってもいいですか?
 

着ぐるみの背後から声をかけられる。

(そら来た!フリフリ!練習したろ?可愛くカワウィ〜ク振り向け!)
(先輩!フリフリって呼ぶの止めてくださいよ!)

ごそごそしながら振り向くフリフリとジュディ………

「ハハハ ひょっとして中 男性ですか?」

バレた!!!

おそるおそる着ぐるみのメッシュの部分から目を凝らす。

立っていたのは
オレと同じか少し上の様に見える、営業系リーマン。

アイスクリームの袋をぶら下げて、片手では携帯をかざしている。

それにしても先輩はすごい…
この期に及んで、ちがうちがうと手を振り、腰をくねらせながら
必死にジュディを演じている……

「ハハハ そうですよね 二人は女の子でしたよね 僕ここのアイスとキャラクタがスゴく好きで」

けっ…男のくせに…… もしやその手のマニアか?

って
 

shineshineはあああああああああっっshineshine
 

な、なんだこいつ!!

その…男のくせに 繊細で 細面で 清潔そうで かといって女顔でも媚びているわけでもなく 涼しげな目元に 理知的な口元  思わずほおずりしたくなる様なさらさらそうな髪 

そして…

とびつきたくなるような引き締まった腰と尻!!

この日この時 
ウチムラガク
生まれて初めて、一目で恋に落ちた瞬間だった。

 

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番外編「NO.1の事情.完結」

来栖とミドリの苦い思い出。

「まあさ 今思えばさ… 大人の感性ってやつなのかな… 僕の方はまだガキで 現実より夢の方を信じたかったていうか」

淡々と、時々オレの顔を見て微笑みながらミドリは語る。

来栖はきっと辛かったに…違いない。

「なんで別れちゃったの? オレにはわかんないよ アンタには悪いけど…オレがあんたなら 例え先生が嫌だと言っても追いかける!」

だってオレは嫌だ。
お互いが好きなのに別れるなんて
相手を傷つけるなんて

絶〜っ対に嫌だ!!

「そうかもしれない…」
「そうだよ!」

「礼…来栖先生が百瀬君を好きになった理由が分かったよ」
「へ?」

ミドリがテーブルの上に置かれた車のキーを持って立ち上がる。

「ごちそうさま。 ちょっとコレ借りるね チャリンコ出さなきゃ」

言い終わるか終わらないか、背を向けて店のドアに向かって歩き出す。

「えっ!あっちょっと!」

「しゃべってないで残さず食え!」

振り返り、«破顔一笑»

ミドリは自転車を出した後、キーを店の店員に預け、それきり戻ってこなかった。

来栖は、こんな所から自転車で帰るつもりかと、柄にも無く慌てていたが
…結局…
オレとそのまま…食事を続けた。
 

「なあ、先生 なんで空豆残すんだよ」

来栖のパスタ皿の右端に避けられた空豆の山……

「……嫌いなんだよ 野菜 特に緑色の野菜は嫌いだ」
「は?! じゃあなんでそれ頼むんだよ 違うのにすれば良かっただろ?」

「お前と同じのって言ったんだ! まさかお前がコレを選ぶとは思わなかったんだ!」

「ガキ…………」

「なっ?! う………… むかつく…」

「ぷ」
なんだか子供みたいな来栖が、ちょっと可笑しくなってしまい 思わず吹き出す。

吹き出して、さっきまでイライラしてたのが嘘みたいに

楽しいなあって 思った。

「ねえ先生? オレ 身体はめっさ丈夫だよ?」
来栖が怪訝な顔のままオレを見る。

「……なんかミドリに吹き込まれただろ?」

「それにオレ しつこいし」

「………」

「何があってもずっと先生が好きだよ」

いつか来栖がオレに言ってた、好きと嫌いじゃ割り切れないっていう恋愛関係。

割り切れるだろ?!
格好つけんなよ?!大人共!!

「穂高 君って…」

「な、なんだよ…」

「…… ほんとに可愛いなあ」
っ!!!!

オレの知らない、来栖とミドリの思い出…

オレもちゃんと二人だけの思い出をつくれるかな?

あんな…哀しいやつじゃなくて、二人で思い返して 楽しい って思えるような…

「じゃあ行こうか? 食べ終わったし 思い出をつくりに」
「えっ ど どこへ?」

「ホテルheart01

「しねっannoy!!!!」

って……… 
逆らえないオレもオレで、
恋愛の機微ってのが足りてないのかなあ??
(まあいいけどね きらいじゃないし) 
   
ねえ、先生… オレは先生にもう辛い思いはさせないよ…

 

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番外編「NO.1の事情.5」

その日の試合中 相手選手と接触し転倒したまま、あまりの激痛に動く事が出来ず、
そのまま担架で病院に運ばれた。

そして翌日 ベッドの上で、«清宮緑»は医者から宣告される。

『残念だが君は プレーヤーとして コートに立つ事は 出来ない』

ミドリはその時点ではなぜか、嘆きも怒りも感じなかったんだって

医者からそう言われてもなお
感覚の戻らない自分の足を見つめてもなお

なぜか それを信じるには余り有る…希望の様な物が

ミドリの胸の中にあったんだって。

でも

それは 

いとも簡単に打ち砕かれた。
 

『すまない…………』
 

ミドリの前でミドリの手も握らずに、距離を置いて頭を下げる…来栖礼壱のたった その 一言。

『なんで 先生が僕に謝るんだ?… そもそもすまないってなんだよ?』

『オレのせいで… お前は一生 選手には戻れない』

『止めてよ先生… 治るかもしれないじゃないか… 先生がそんな事言ったら 何もかも諦めなきゃな
らないみたいじゃないか……!!』

『オレのせいだ…… バスケは もう』

『…嘘でもいいんだ 結果的に駄目でもいいんだ…! 先… 礼壱!』

『……………… すまない』

ミドリは枕元にあった花瓶を、来栖に向かって投げつけた。


『僕に触れもしなければ 避けも しないのか?…』


そしてその日に
清宮緑と来栖礼壱の 恋人としての関係は 終わってしまったんだ……  


 
 

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番外編「NO.1の事情.4」

真っ白なテーブルクロスの上で振動する来栖の携帯。

「あー悪い ちょっと…」
真面目な顔で席をたつ。

さっきまでは来栖が勝手にしゃべってたから、オレは黙って食ってれば良かったんだけど
突然ミドリと二人きりにされて、なんだかひどく気まずくなってしまった。

目の前のパスタをフォークでいじりながら、ちらりと目の前のミドリを見る。

「仕事の電話か 相変わらず忙しい人だなあ」

どぎまぎするオレとは対照的に、ミドリは全く変わらぬ体でもごもご肉を食べている。

「百瀬くん… だっけ? 食いもんにつられて来ちゃったけどさ ゴメンな 僕ホントに先生のなんでもないから」
「え?!い、いや」

気にしている事を悟られたことがなんだか恥ずかしい…
しかも本当に申し訳なさそうに言うもんだから、逆に恐縮してしまった。

「…あっ あの…!」

「え?なに? あ、うめーな この肉最高!」

ミドリは本当に美味しそうに、料理を食べる。

「あのう… 前はつき合ってたんですよね? 来栖先生と…」

「うーん ちょっとだけね… でもオレが高校の時までだから 今はただの過保護な兄貴みたいなもん」

でも来栖は元NO.1だって…
オレとつき合う前まで一番好きだったって事だろ?

「パン食わないんなら貰ってもいい?」
「えっ? あ… どうぞ」

やったと笑って、オレの目の前に置かれたカゴからパンをつかむ。
オレはオレで、あんなに腹が空いてたのになんだかもうパスタどころじゃ無いって心境だった。

「それで〜 なんで過保護かっていうと」

パンを食べながら肘をついて、ミドリがオレの顔をじっと見た。

女にもてそうな顔だ… そう思う。

「来栖先生が 僕に負い目を感じているから かな」
「負い目?」

その端正な顔が一瞬曇ったように感じたのは気のせいだったか…
ミドリはおもむろに椅子とテーブルの間から、自分の右足を投げ出して指を指す。

「これさ 自転車には乗れても… 競技者としては全く役にたたないんだ」
「!!………………」
 

清宮緑は高校時代、将来全国レベルで有望視されていたバスケの選手だったんだって…

その時の指導者が来栖礼壱……

「それが…最悪 練習試合でおもいきっりコケてこのザマ …僕が勝手に怪我したのに、来栖先生はそれまでの過剰な練習がどうこうとまわりに結構責められちゃってさ…」

「………………」

「それまで僕らはつき合ってたけど それ以来…恋人でいるにはやっぱりぎこちなくて… 僕も結構精神的にキツくて…当たりちらしちゃたりさ」

「………………」
「で 別れたっていうわけ。 なのにまーだ僕に気を使っちゃってさ…そういう所は変わらないんだから…」

それは
僕の知らない
来栖礼壱の姿だった……

 

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番外編「NO.1の事情.3」

二階のテラスから海が望める、白い外観のパスタ屋。
さすがにこの時期はテラスでは暑いので、ちょっとセレブレティな感じただよう店内でお召し上がり。そして…松田の時と引き続き、見知らぬ男をはさんでの…今度はランチなわけなんだ…

し か も

この«セイミヤ ミドリ»に対する来栖の気の使い方が半端じゃ無い!

「ミドリ!君 肉好きだろ?肉を食え!」
「え〜… でもメイン系はスゲー高い」
「高いか?… どうせいつもろくな物食ってないんだろ?好きな物なんでも頼めよ」
「マジで!? じゃあ…遠慮しないで頼んじゃおっかな〜?」

嬉しそうにもう一度メニューを見返すミドリ。
それをまた満足げに、頬杖をついて見つめる来栖…

ちょっとちょっと〜pout間にオレがいるんですけど〜annoy!!!

「も、百瀬君は?」

ただならぬオレの怒りのオーラに気付いたのか、来栖がとって付けたように振って来た。

「来栖先生…… ちょ〜っといいですか?」
「あっ なんだ?! おいっ!」
来栖の腕を強引に掴んで、席を立たせる。

「ミドリ! 少し席はずすから先に注文しててくれcoldsweats01
「うす」

メニューに夢中でミドリはこっちも見ない。
 


初夏の、意外に強い日差しが照りつけるテラスに、無理矢理来栖をひっぱる。

「おいおいおい… なんなんだ…店の中で せっかく穂高君が来たがってた店に来たってのに」 

「なんなんだ〜じゃねーよ!! あいつ誰?!なんでオレと先生のデートなのに3人なの?!」

「…だから 彼は清宮緑っていう大学生で…」

「それは聞いた……で?!

そこで来栖は大きくため息をついて、両手を上げる。

「ミドリはオレのNO.1だった奴だよ… 穂高君とつき合う前までのね…」
「やっぱり!」

「分かるなら聞かなければ良いだろう? アラタとはまたああなったけど…残念ながらミドリはそんな未練を残す様な奴じゃないんだ…それに」
「残念ながらってなんだよっ」
「はあ… ヤキモチヤキなんだよなあ 穂高君は」

だって!

んっ!!!
そう言いかけた所で、突然来栖にキスをされる!

幸いテラスには誰も居なかったけど、ガラス張りの店から見えちゃうかもしれないじゃないか!
 

「今はコレで我慢して… 食い終わったら腰も立たなくなる位苛めてやるから…」
うっ…
耳元で囁いて、頬と唇を指で撫でられる。その心地よさに、オレがまた何も言えず赤くなったのを確認すると、『じゃ』と言って足早に店内へ戻って行く。

「う〜っ またごまかされた!」
オレはいつもそうやって来栖ペースに巻き込まれる悔しさに歯ぎしりしたが、店の中から見つめる女客3人組の視線に気付いて、慌てて店内へ戻ったんだ。


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番外編「NO.1の事情.2」

そいつは
反対車線のガードレールを挟んだ向こう。海ではない山側の、線路に並んだ細い歩道を、銀色のチャリンコで軽快に走っていた。

「おーい! ミドリ!」

車の中で助手席のオレを押しのけて、もう一度来栖が叫ぶ。
ミドリはそのまま行きかけて、
声に気付いたのか 急ブレーキをかけ 
振り返り 手を上げて答える。多分♂ 顔は…遠くてよく分からない。

(来栖先生は 目は悪いよな?)
資料を見る時やパソコンに向かってる時はメガネかけてるしさ…

「穂高君 あいつ拾ってくから Hはちょっとだけ我慢な」
「えっ?はっ? 拾うって だってこれからオレ達飯食いに…」
「まあまあ ランチは大勢で食べたほうが美味しいだろ?」

なんだとっ?!!coldsweats02

「な…っなんでそーなんだよ!大体あいつ 先生の な に?!」
来栖はハハハと軽く笑った後(ごまかしたな!)…ここからオレを完璧無視して、車を走らせ、右車線から右折してやや強引にUターンをした。
向かう先には、チャリンコの«ミドリ»だ!!
 
  

「いいよ だってデートだろ?邪魔しちゃ悪いよ」

「ま さ か! 今日は課外授業みたいなもんだし なあ 百瀬君?」

「……………annoyそうでしたっけ」

「百瀬君も来春進学だから、現役大学生の話を聞くのはとても参考になると思うし?なあ?」

「……………annoy……そうですね」 

来栖は車から降りて、ミドリの折りたたみ式チャリンコを積極的にたたみ、トランクを開ける。
積極的?!
そして後ろの左座席のドアを開け、『どうぞ』と言ってやや困り顔のミドリをそこへ促す。

オレにそんな事したことないくせにっ!
(紳士か!おのれは!angry

しかもなんか、妙に楽しそうじゃ無いか?!

助手席で、ブーたれるオレを…バックミラー越しに見たミドリが手を合わせて、すまなそうに謝る仕草をする。

端正な顔だった。

けれど繊細そうな顔立ちの松田アラタとはまた違う感じで、中性的な印象はあまりない。

この街のはずれにある、工科大学の3年生 
フルネームは 清宮緑(セイミヤ ミドリ)だそうだ。
 

「その制服 百瀬君?だっけ 頭いいんだ? すごいね」

屈託のない笑顔でミドリがオレに話を振ってくる。

「別に… スポーツ推薦ですから」
「へえ! なにやってんの?!やっぱりバスケ?」
「テニスですけど」
「テニス?! そうなんだ… じゃあうちの大学来たら? テニス部かわいい子いっぱいるよ?」
「はあ…」
「僕は マリンストーンサークルで…」

気を使ってるのか、人見知りしないタチなのか…ミドリは矢継ぎ早に話しかけてくる…
すると突然、ずっと黙って運転していた来栖が、そのオレへの会話を断ち切るように口を開いた。

「ミドリ 最近は大丈夫か?」
「大丈夫だよ 先生は心配しすぎなんだよ 今は自転車だって乗れるし」
「そうか …でもあんまり無理はするなよ」
「わかーってるよ! 僕は子供じゃないんだから」

オレには見えない話。

でも

なんだか 来栖のこのミドリに対する接しかたや、ミドリを見る眼差しは オレの知ってる来栖とはまるで別人のようじゃないか?
アラタの時とも違う気がする。ホスト順平には…そこは分からないけど

多分来栖はミドリを とても大事にしている。たとえば自分の宝物みたいに大切にしている…
そんな感じがして、なんだかオレは ちょっと不安になってしまったんだ。


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番外編「NO.1の事情.1」

百瀬穂高 高3。 同じ高校のバスケ部顧問の来栖と目下両思いheart02中 多分。

はっきり言って大人の駆け引きなんかオレにはまだ分からない…
ましてや…つき合ってみてだんだんわかってきた、オレの恋人«来栖礼壱»のあやしい人間関係ならなおの事。

来栖曰く「好き」「嫌い」じゃ割り切れない恋愛関係もあるんだってさ。
(それをオレに堂々と言いのける、あいつの神経の構造が知りたいよ!)

 

「いい加減機嫌なおせよ穂高。 可愛い眉間にしわがよってるぞ」
「うるせっ!別に怒ってねーし… 腹減ってるだけっ…て頬をつまむな!annoy

来栖の車の助手席に乗って、今からリッチな海辺のパスタ屋で日曜ランチ。
海沿いを真っ直ぐにのびる車道を、開けた窓から潮風を感じながら走る。

…って 本当ならスゲー楽しいひとときのはずが、来栖の言う通りオレは…すこぶる機嫌が悪かった。

一応、教員(ッて言っても来栖はバスケのヘッドコーチをしているだけだけど)と生徒の関係なので、一緒に過ごせるのは週末だけ。
だから土曜に会って、デートして、食事をして、………その後はまあ…Hをしたり…するわけだけど

『大事な試合が控えてるんだよ 会うのは夜から』

…で、会ったら会ったで、ずーっと部屋でパソコン見ながら苦虫つぶしたみたいな顔してオレなんかほったらかし!!
(春にトップシューターの夏目が高校を辞めたお陰で、チーム編成には相当苦労してるみたいなんだけどさ…)

オレがそのまま待ちくたびれてソファーで寝ちゃったのに、あ い つ め… 朝起きたらちゃっかり自分のベッドで一人すやすや寝てやがるpout!!

「今週はアラタが博多に出張行っちゃったから 朝食も食べられなかったしな〜 だからちゃんと穂高君が行きたがってた店に行くんだろ?」

まるで反省の色が無い!

不機嫌なオレの左側で運転しながら、まったく余裕の笑顔……

「それとも…」
「なんだよ!」

ウインカーを出して突然、左の歩道側に車を寄せる。

「先にホテル行って穂高君を食べてもいい?」

「は?!おいっ ちょっと!!」

来栖が自分のシートベルトを外してオレにもたれかかる!

おいおいおいおいおい!!sweat01来栖先生!!み、見られるから!!ひっ人に見られるから!!」

「昨日できなかっただろ? キスもしてないし」

慌ててのけぞるオレの顎を、大きな手で拘束する。

「だめ……だっ! 飯 食ってから!」
「食ってから? なにすんの?穂高…」
「なにって… ヤな 奴…!」 

お互いの唇が触れるか触れないかの位置まで顔を近づけて、来栖がそんな事話すものだから、オレはもう耳まで熱くなってしまう。

キスはされる… 
そう思って目を閉じた時だった……

「あっ!!!」

来栖はそう叫ぶと、オレの身体を退け…全開になってる右側の窓の方へ乗り出したんだ!

「ちょっとなんだよannoy! お も い!」
ミドリ!!

ミドリ?!…今度は誰だっ?!
オレは来栖の叫ぶ方、窓の外に慌てて視線を向けた。

 

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番外編「NO.2の場合.完結」

新・旧NO.2の松田アラタに、元NO.3のホストの順平…
よくよく考えてみたら、好きな奴に高校生のガキとつきあう事にしたから別れようなんてメールで伝えられたりしたら、そりゃー頭にくるんじゃないの?
オレにやたらに好意的な松田は希有な例として…その順平って奴は松田の話によると

『絶対に探し出して殴ってやる!!』…と息巻いてるらしい…

「大丈夫だよ〜百瀬君〜 僕、百瀬君はマッチョなラガーマンで空手100段だって言っといたから!good
ま、松田…お前…余計な事を…
「順平はキレると手がつけられないからなあ ハハハハ」
「笑い事じゃねーだろっannoy

一気に憂鬱な気持ちに落ち入る…
けどさ、やっぱり1発2発は覚悟しとかなきゃなんねーかな?
オレが来栖にあんな事しなけりゃ5人は泣かなくてすんだわけだし…殴られるのが怖くてあきらめられるくらいならさ、告白なんかしないしさ。
まあ、なるようになるだろ?
………(ホスト順平は未知な部分が恐ろしくもあるけど)

松田はひとしきり家事を終えると、午後に営業にまわるという事で帰るとのこと。

「日曜だというのにご苦労様だな」

「じゃあまたね 礼壱… 大人の時間に」

「了解 大人の時間に」

二人はちょっとさっきまでとは違った意味深な表情で言葉を交わす。
別に身体に触れあったわけでもないのに、その様子と言葉に濃密そうな関係を感じて妙な気持ち。

オレに爽やかな笑顔で挨拶をして松田は玄関を出て行く。
ぼーっとその玄関が閉まるのを見ていたオレの背後から、来栖の両腕が伸びて抱きしめられる。

「さて どうする?」
「ど、どうするって?なんだよ 浮気者…」
「どっか行く?それとも昨日の続きをしようか?」

来栖の左手がオレの股間の辺りに触れ、腰を後ろから強く押しつけられた。

「あっ…っ ちょっ!あ…れだけしてまだ足りないのかよ」

「だから百瀬君はどっちがいいのかなーと思って」

「つ…つかむなっ…よ あ」
頭は否定しても、身体の方が昨日のあれこれを思い出して反応してしまう…

「さっき アラタに妬いたろ?」

クククと笑って耳元で囁かれる。
また楽しんでるな?!まさかさっきもわざと?!

「デートしよー!!!annoy外は晴れてんだ!!海の展望台!!オレ展望台行きたい!!」

来栖の身体を引き離し、叫ぶ……なんというかそうさせたのはオレのわずかな自尊心か?
なんだかそうしないと、来栖の思いのままになってしまいそうで

「……え〜…… そんな子供みたいなデート…? どうせならホテルに」
「それじゃ同じだろ!!annoy

目を細める来栖はおもいきり不満そうだったけど、オレが頑として譲らないのがわかると肩をすくめながら微笑んで言った。

「まあ、君となら楽しいかもね」

そんな一言で赤面する。
さっきの松田と来栖の感じとは偉い違いだ。
たとえ危険なリスク(順平)をはらんでいても、ガキのオレは今一緒に居られるのが最高の幸せ。

『君となら』

特別な言葉が魔法みたいに、またいっそう来栖を好きになる。
NO.2の出現で来栖を嫌いになるどころか、ね…

ガキなんだよなあ われながら。

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番外編「NO.2の場合.3」

なんなんだ…?!この状況?!
オレが初めて来栖と迎えた幸せな朝に、このエプロンをしたリーマンと3人で朝飯を食ってなきゃいけないんだ?!

「アハハハ、アラタの作った料理は本当に美味しいよね?そう思わない?百瀬君」

あっ来栖の奴、覚醒してきやがったな!

「おいっ お前…annoy
「ちょっと〜礼壱ったらheart01NO.1shineの前であんまり褒めないでよ〜恥ずかしいだろ〜happy02

「は?!NO.1?!」

「百瀬君の事だよ」
「そうそう! 僕がNO.2だから〜 あっ!マツダのツーはNO.2のツーって事で僕の事は«マツー(2)ダ»って呼んでくれて構わないけど〜 なあんてね!!あははウケる〜!!」

うぜー…マツーダうぜー…

大体なんだよ…ナンバーってsweat02
イライラするオレの横で、ただ淡々と飯を食う来栖。
「く…来栖先生? 他の5人と別れるってオレに言ったよな?」
「心外だな 別れたよ あの日に全員に一斉メールしたんだから」
メ、メールで?!

「そうそう…あの日は哀しかったな 一晩中泣いちゃって…次の日の得意先の接待も休んじゃったんだ」
じゃあなんで松田が今ここに居るんだよっ
キッと来栖を睨みつける。
「怒らないで!NO.1! 別れた後、僕がまた礼壱に無理につき合ってくださいってお願いしたんだから」
「はっ?!」
「うん 一生2番でいいからなんて言うから…なんだか逆にいじらしくなっちゃって」
「はあっ?!逆に?ふざけんなよっ!だって…」
「アラタ君 この玉子焼き絶品」
「フフフ 砂糖を多めに入れてみたんだ〜あっ百瀬君も食べてね〜」

こ、こいつら〜annoy

怒れるオレなんてどこ吹く風、しかも来栖にまあまあと背をたたかれて、来栖の箸でその玉子焼きを無理矢理口に入れられた。

しかも
くやしい事に
…お い し い……

「まあ、仲良くやっていこう 可愛い2人に挟まれてオレは幸せだな」

「百瀬君は本当に可愛いよね〜 僕、百瀬君がNO.1でよかった〜」

「う、うるせえっ! オレは認めたわけじゃないからな!」

大人2人にうまく丸め込まれたような気がするんですけど!
…しかも邪気の無い松田アラタの輝くような笑顔に当てられて目がしみる…

「あ、そういえばこの間 六本木接待の帰りにNO.3に会ったんだ」
「ああ、ホストの順平君か?」
「ホスト?NO.3?まだつきあってんのかよ?!」
「ちがうちがう あいつとは別れたきりだよ で?なんか言ってた?」

なんかオレの知らない来栖の世界が垣間見えてきてちょっと不安になってきた…


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番外編「NO.2の場合.2」

「おいっ!! ちょっとお前っ 勝手に入ってくんなよっ!!」
親しげに来栖を名前で呼ぶ、買い物袋をぶら下げたリーマン。
慣れた足取りで部屋に侵入してきたそいつの腕をおもいきり掴む。

「あっ 失礼!! そうだね君に挨拶をしておかなきゃ」
振り返ったそいつは細面の清潔そうな青年といった感じで…いかにもあいつが好みそうな…
嫌な予感……
つーか…絶対

「初めまして!! 僕こういう者です!!」

「えっええっ?!」

そいつは笑いながらオレの前に直立すると、頭だけを上げて腰を折り、両手を添えて名刺?らしき紙を差し出してきたんだ。

◯×○コーポレーション  
第二営業部マネージャー
松田アラタ
趣味は洗濯と仕事です!!

「ど、どうも」

あまりに礼儀正しく渡されたので、オレもつい両手でうやうやしく受け取ってしまい、何だかそれに気を取られてあっけなく松田アラタにベッドルームへの侵入を許してしまった。

「礼壱っheart04 もう10時になるよ〜!起きた起きた〜!礼壱の好きなアニメ始まっちゃうよ〜!」
「アっアニメ?!!日曜朝だぞ?! じゃなくてsweat01 おいっannoy松田っ!!」
慌ててばたばたと後を追う。

松田はオレの声なんか聞こえていないかのように、来栖の布団を力ずくで剥がし全裸の来栖の上体を無理矢理引き起こすと、何処からか出してきたガウンをコレまた絶妙な手際のよさであっという間に着せてしまった。

「これ食べて待ってて! 今、朝ご飯作るから!」
リビングのソファーに、まだまだあやしい感じの来栖を座らせ(とにかく昼とのギャップの激しすぎる別物の生き物のような…)その口に、買い物袋から取り出したアイスを取り出して突っ込む。

(…棒のチョコアイスだ…マジだったのか)
「もうっ なんなんだよ」

それを見た所でどっと疲労感に襲われ、思わず来栖の脇のソファーに腰を下ろした。
«松田アラタ»はキッチンで何か製作中。
coldsweats02?! あのフリル付きのエプロンは持参したのか?!)

文句と弁解を聞こうと来栖を見ると、来栖は可愛い動物キャラ満載の(明らかに子供向けの)アニメをチョコアイスを食いながらガン見していた……………
はああ………sad


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番外編「NO.2の場合.1」

百瀬穂高、高2男子。
最近、片思いのバスケ部顧問(もちろん♂)を(オレの健全な高校生活と引き換えに)射止め、幸せまっただ中shineのはずの日曜朝in来栖(その相手)のマンション。

昨日は初めて来栖の部屋に泊まり、予想してた通りそのままHをした。

そのまま寝ようとした来栖を誘ったのはオレの方なので、文句をいう立場では無いんだけど…
やる前は『疲れた寝たい眠い』を連発していたくせに、いざ始まったら記憶にあるだけでも4、5Rは責められ続けた。
さすがに身体がきつくなってベッドの上で這って逃げようとするも、腰を捕まえられ、また強く引き寄せられてなんども突かれた…

「腰とケツが痛てぇ…… あの野郎annoy

タフというか、自己中というか…
5人と同時につき合っていただけはあるな……sweat02(オレの身体は耐えていけるのか)
しかも朝は耳元で怒鳴っても起きやしねーし!

「なんだよ… この生活感のない冷蔵庫は〜!!」
小奇麗なキッチンには冷蔵庫にも、棚にも食料らしいものが何も無い…

「おい!!飯は?! 昨日の夜も何も食ってないんだぞ!!」

もう一度ベッドルームに行き頭まで布団をかぶって寝る来栖の耳元で怒鳴る。
一瞬間をおいて来栖がもぞもぞと動き、腕だけ布団からだして壁にかかってるジャケットを指差す。

「財布…… 勝手にだしていいから…… 下のコンビニ 行って来い……」

しょうがねーなあ…こいつ朝こんなにどろどろしてんだ。
あきれながら、ちょっと可愛いななんて思ってしまう、惚れた弱み。 

「で?先生は何食うの?」
「…………… 棒に刺さったチョコアイス………ナッツの付いたやつ」
「は?…………(寝ぼけてんのか?)」

とりあえず適当に買ってこようと、その辺にあった来栖のトレーナーを着て玄関に向かうと、ドアを開けようとした所で、鍵がかかってたはずのドアがいきなり開いた!

礼壱ーheart04!!! モーニーンheart04!!!

うわっ!!だ、だれだお前っ?!!!

見知らぬ、サラリーマンが満面の笑みで部屋に押し入ってきたんだ。

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番外編「来栖礼壱の場合-完結-」

「感心しないな… あんな事して…君のせっかくの高校生活を不意にするつもりなのか」
体育館裏に連れてこられて、メガホンを取り上げられる。 
来栖は少し怒った口調。

「だって……さ…」
「なんだい?」

うなだれるオレの顔を覗き込む。

「こうでもしなきゃ、オレ…あきらめきれない」
「おいおい… 百瀬…」

なんか涙がぽろぽろ落ちる。
ああ、格好わりー こんなのオレのキャラじゃ無いし、これじゃまた来栖にからかわれる。

「はあ、仕方ないなあ… じゃあ6番目の」

「それじゃ意味ないんだ!!」

「おいおい…?」

誰かの中の一人じゃ意味無ぇーんだよ!!オレだけじゃ無きゃ嫌なんだよ!!アンタが他の男や女といちゃいちゃしてるかと思うと…オレはスゲー嫉妬で自分が嫌になる… なのにアンタの事ばっか考えて胸が痛くなる… 振られたくせに勝手で悪いけど… オレ 来栖先生が好きなんだ…

「………」
オレをなじればいい…しつこいとか、うるさいとか
それかもうどっかに行ってくれないかな…

来栖をそっと見てハッとする…思わず見惚れてしまうような笑顔だった…

「百瀬君は注文が多いね? でも…今までつき合った男女の中でオレに面と向かって、自分だけにしろって言った生意気な子は君が初めてだ」

オレの涙を来栖が指で拭う。その体温が伝わってさらに涙腺を刺激する…

「いいよ オレも何だか君に興味が湧いてきた… じゃあ今度は…オレから好きって言おうか?」

「な…なんて よく 聞こえなかっ…」

「百瀬君との恋愛がしてみたくなった」

「…また、冗談 だろ?」
来栖の長い腕がのびて、その胸に引き寄せられる。

「5人分、君がオレを愛せよ? じゃなきゃ即サヨナラだ」

その言葉も、今抱きしめられてる現状も、気持ちが混乱して理解に時間がかかってしまう。
なにコレ、両思いって事なのか?
オレを好きになってくれるって事なのか?本当に?

「君がオレを好きな分だけ、オレも君を愛そう」

とまどいながら、オレは来栖の言葉に何度も頷く。

「オレは100人分…先生が好きだ」
「100回はさすがにしんどいなあ… タフだね〜百瀬君は」
「そういう意味じゃねーよっannoy

後から知った事だが、この現場はその時のバスケ部員にすべて見られていたらしい。
まあいいさ。
ひやかされても、からかわれても…

オレが好きなのはその顧問の来栖礼壱。
ちょと軟派だけど、世界で一番カッコいいオレの恋人。でもそのせいでこれから色々試練もあるんだけどさ。

【来栖礼壱の場合】 完

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番外編「来栖礼壱の場合7」

放課後、まずはテニス部の部室へ行ってバッテリー付きのメガホンを持ち出す。

「百瀬君、それ何使うの?」
不審がる、女子マネ。
「そうだな、言わば魂の叫びってやつをしに」
「………ふーん ロックな感じね どうでも良いけどちゃんと片付けてよ」

思い知れ!!
オレをガキ扱いした事を後悔させてやるんだ!!
ただしオレの青春の高校生活も幕引きになるかもしれないけど…


バスケ部がよく使用する第2体育館、そしてオレがいつも潜んでいた緞帳の影…
ほら、のぞいてみればちょうど今から来栖とその配下共が練習を始めた所だ。

都合良く夏目の取り巻きの女子生徒も居る。
オレはそのギャラリー達を確認して、ずんずんとステージの真ん中へと移動した。

スイッチを入れメガホンのマイクを口元へ…

下ではオレの存在に、みんなが気付き唖然としていた。
来栖は顎に片手をやったまま固まっている。

息を吸って正面を見据えろ!!

さあ、逆襲の魔王百瀬穂高だっ!!

「…レは」

オレは………………

オレは来栖礼壱が好きだああああああああああっ!!!!!


目をつむってめいっぱいの声
メガホンが何かに共鳴してキインと高音を発した。

そして、
静寂。

下に居る全員が目を丸くして、オレを凝視している。
一人うなだれたのは、想い人来栖…………

ああ、終わった
コレで終わったと本気で思った。

「お…お邪魔しました」

一気に気が抜けて、メガホンでそう言い、お辞儀をしてステージを降りる。
と、降りた所でつかつかと近づいてきた来栖に無言で手を引っ張られ外へ連れ出される。

さすがに怒ったろ?
後ろ姿に険が有る……
そりゃそうだ………
もう軽口もたたきたくないくらいオレ、嫌われたんじゃねー?


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番外編「来栖礼壱の場合6」

朝を待ちわびる。
一晩中あいつの事を考えて、何度も唇に触れてみる。
思い出すたび高鳴る鼓動と、イライラと、あと«何か»…

ひょっとして希望は有るんじゃ無いか?

いい加減あきらめろよ、無い無い、あいつはキット忘れてる。

………………けど
好きだ、好きだ、好きだ… 

だからって誰も答えないだろ? 未練たらたら…だからガキだって言われる

一晩中…


そんなオレのもやもやとは裏腹、翌朝高校の楓並木で遭遇してしまった来栖の態度はオレの怒りの部分を触発するのに十分なものだった。
なんか、嫌みな位の青空だ。充血した目にしみる…

女子生徒数人に囲まれて御登校、どうせなら無視してくれれば良かったのに

「やあ、百瀬君おはよう」
「… おはようございます」
女子達がオレに視線を向ける。
それが嫌で立ち止まらずに早足で歩くオレの隣に、来栖が歩幅を合わせて並ぶ。

「ちょっと〜先生〜まだ話しの続き〜!」
後ろで文句を言う女子の声…

「なんだよ! 来んなよっ」
「昨日は大丈夫だったかい? もしかしてあれで電車 乗ったの?」
「…うっせー関係ねーだろ」

乗ったよ… 乗りました!

「勇気があるなあ… 雷は恐いくせに…乳首がもろ、透けて見えてたけど…」

「ちっ?!……………!!!!だっ誰のせいだよっ」

オレが慌てるのをみて、来栖は手で口を押さえ笑いを必死にこらえている…
ああああっ!!もうこいつとは話にならないっ!!
なんでこんな奴がいいのか分からない!!

「ゴメン、ゴメン… それで?昨日の夜も眠れなかったってわけだ?」

「は?」

「目が赤い… オレの事ずっと考えてただろ?」

図星を指されて、オレは戸惑いがちに目を伏せた。
「眠くとも授業はしっかり受ける事 それが学生の本分…」
そう来栖が言いかけたところで、来栖はさっき話をしていた女子達に腕を引かれて連れ戻される。

「…なんだよ…」

あんたにはオレなんて暇つぶしの玩具みたいなもんかもしれない。

けどオレは本気で好きなんだ!

なのに、気持ちを弄ぶ(なんかこの言葉は生々しいかな)みたいにキスまでして…

夢中にさせたらオレとつき合うって?!

だってどんどん夢中になってんのオレじゃん!

クソ!

いいよ、玉砕してやる!
もう一回、どうなっても構わない!
アハハハ!! オレの愛がどんなもんか思い知らせてやるよ!!

見てろ!!!


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番外編「来栖礼壱の場合5」

海の方の空はもう雲が流れ、切れて、沈みかけの夕日がちらちら見える。
それでも雨は相変わらず、遠くからは鈍い雷鳴。

「なあ先生、雷…落ちないかな?」
オレも低くはないが来栖はもっと背が高い。
その差した傘に雷が落ちやしないかと心配になる。

「怖いのか? 意外に小心だな 百瀬君は」
「そうじゃねーよ!」
「あっそ それよりもっとオレに寄らないとそっちから濡れるんじゃない?」

肩が触れるんだよ!

にやにや笑いやがって! … くそ 馬鹿にして ガキだと思って…

「う わっ!」
オレが黙って目も合わせないでいると、突然来栖が身体を曲げオレの胸元に顔を近づけてきた。

「な、ななななんだよ!!」

「もっと色気のあるボディーソープ使えよ なんか石鹸の匂いがする」

「かっ嗅ぐな!! は、離れろよ」

バシャン!!

及び腰になり、足を一歩引いた所で思い切り水たまりを踏んでしまった。

「あ〜あ〜 ズボンのすそどろどろ」
「お前のせいだろ!!」
「濡れるよ、早くおいで」

「うるさいっ!! お前楽しんでるだけだろ」

まだ弱くはない雨が、あっという間にオレの制服の色を変える。

「はあ…やせ我慢するなって ほら」

「オレに構うな!! オレを振ったくせに!! 他に好きな奴が居るくせに!!」

道路の真ん中で怒鳴ってしまった。
こんな事言わなくてもよかったはずだ。
こういうのがまたガキっぽいって思われる……

「じゃあ」

「へ?」

ドン引きされると思いきや、来栖はその柔和な表情を変えてなかった。
オレに近づき、オレをその傘に入れ、

!!!

一瞬目を離したオレにキスをした。

「…オレを夢中にさせてみろよ そしたら今つき合ってる5人とは別れる… 君だけにする」
「なっ、お、お、おまえ〜!!!」

来栖の笑顔
残った唇の濡れた感触
その声……

「ふ ざ け ん な っ」

オレは殆ど動揺して、その場から逃げ出した。
ズボンだけでなくジャケットもシャツも酷い有様。
でもそんな事には全く気に留めず、高鳴る鼓動を聞きながら、雷の光と音を遥か向こうに感じながらとにかく走った。

大人の余裕は残酷だ。
そうだと分かっているのに有頂天になるオレの浅はかさ…
だってさ、あんなのは結局…嘘なんだから。


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番外編「来栖礼壱の場合4」

中3の時、初めて好きなったのは自分と同じ男子で、それを自覚したあたりからオレはゲイなんだと認めざるをえなくなった。
まわりの友達がグラビアやアイドルの話で盛り上がったり、ましてやこっそり回し読みをしていたエロ雑誌にも全く興味がなかった。

どっかおかしいのかと不安になった事もあったけど、結局女を好きになれないのだから仕方ない。
来栖のいわく『処女』(男だけど…)なんてものはその頃捨てて、でもなんというか…抱かれたとたんに一気に冷めて、その相手とは別れてしまった。

多分、オレが当時好きだった«そいつ»には興味本位みたいなものが気持ちより先立っていて(ノンケに手を出したオレもオレだけど)…馬鹿みたいに口を開けて眠るそいつを見ながら、酷く情けない思いに駆られたのを覚えてる。

それからは絶対男に恋なんてしないっ…て

誓ったというのに……

人目惚れ?!

こうまで自分が乙女な奴とは思わなかった。

いつものように部活を終えて、コートの片付けをしていると突然大粒の雨。
「なんだよ 傘ねーや」
「夕立ならシャワー浴びてる間に止んじまうかもよ」
仲間とそんな話をしながら、濡れた額を拭う。

ワックスべたべた 気持ち悪ぃ…

シャワーと着替えと、教室へテキストを取りに行ったり…
でも結局
雨は止まなかった。

酷い降りではなかったけどどうするかと悩み昇降口に立つ。
せっかくシャワーを浴びたのにあきらめるしかないか、ちっちっ…

一雨毎に春が来る。
そんなもんかね?
季節はずれの夕立、遠くの春雷。灰色の雲がぞわぞわ流れてく…

ふと前を横切る大振りの濃いインディゴの傘… え?!

「あっ! ハハハ 可哀想に…いいよ 駅まで入ってく?」

「来栖!!!」

来栖が傘をオレの方に差し出した。まだ入るなんて言ってないぞ!

それに…いくらなんでも男二人で入ったら

お前の肩が濡れちゃうだろ?


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番外編「来栖礼壱の場合3」

鈍い……
中学時代にオレから連勝記録を奪った奴が、こんな…ぶつかったくらいで足がもつれて転ぶような奴だったとは…

「よう… 柏原… 久しぶりだな…」
オレは柏原の前に仁王立ち、柏原は尻をさすりながらオレを見上げる。

「いたたた… す、すいません… あの2年生の?どなたでしたっけ」

なんだとーannoy?!!!

そりゃ3年も昔の話だけど、三中のテニスの魔王と呼ばれたオレを忘れてる?!
しかもお前はあの時オレに、屈辱的な言葉を浴びせてんだよ!!!

«へーなーちょーこーもっもっせー いえーい!!»

「三中の百瀬穂高だよ!!てめー 忘れたとは言わせねーぞ!!一回だけ勝ったくらいで勝ち逃げしやがって!!」

「…………ももせほだか…先輩? えーと…あれ?」

首を傾げながら、本気で悩んでいる…
かあああああっ イライラする〜!!!こいつっ

柏原ってこんな、ボーッとした奴だったか?

オレの知ってる柏原ユキは逗青中のヤジ将軍と恐れられた…

「ああっもうっ…いっそヒゲ生えろ!!!ボケっ」

「ひ げ …?」

ぼうぼう生えろ!!!

信じられないっ あいつはオレと全く違うタイプ
ああ、来栖先生 アンタの趣味だって相当悪いよ… 
(しかし、この3年の間にいったいあいつに何が…人って変わるもんだな)


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番外編「来栖礼壱の場合2」

「素人っぽい所がたまらないんだよねー… 触るとすぐ赤くなるし… ああいう清らかな男の子とつき合ってみたいなあ…でオレ好みに調教して、ほら光源氏のあれみたいにさ」
来栖礼壱がオレの反応を楽しむように、にやにやして柏原の事を語る。

「調…清らかって!あいつあの軟派な奴とつき合ってんだぜ? 趣味わっりー!!」
「軟派? ああ、うちの夏目か…確かに悪い! あはは、でもまあユキ君処女だし」
「は?! な、なんでわかるんだよ やってんだろ!!絶対」

調教とか処女とか…教師が生徒にそんな事いうか?ふつー?!
体育館の奥では、その夏目がバスケの練習中
脇で女子達がキャーキャー言って騒がしい!!(でかいだけで何が良いんだか分からない)

「分かんない? 悪いけど君だってどうか分かるよ」

「な、……なんだよ」

クククと、オレをからかうように笑って、来栖は練習に戻って行く。
ジャケットを脱いで、何か叫びながらシャツ姿で部員に指導そする姿が胸を締め付ける…ような
とにかく格好良くて、あんな馬鹿にされたような会話でさえも嬉しいんだ。

ああ、でも絶対オレ鼻にもかけられてないんだろうな?

結局…ガキのうえ、ストーカー呼ばわりまでされたのがやっぱり少しショックで仕方なく体育館から出る事にした。
振り返れば開いたドアの向こうに来栖の後ろ姿…

…やっぱりバスケ部に入るんだったか?

はっ! いやいやいや!オレはなんてよこしまな考えを!
オレはテニスのラケットに高校生活を捧げるんじゃなかったのか!
大体、恋なんてのにうつつを抜かしてる場合じゃないんだよ。

もう今年は3年になるというのに……

ドンっ!!
「うわっ」
横から飛び出してきた男子生徒にぶつかる。
「いってーannoy!! おいっ 何処見てっ」
ぶつかってきたソイツは、その拍子で尻もちをついていた。
「あっ…す、すいません!」
あっ!!!!!
か〜し〜は〜ら〜!!!typhoon
 

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番外編「来栖礼壱の場合1」

オレの名前は百瀬穂高(モモセホダカ)、この高校の2年男子。
多分ゲイ。
よりにもよって男に恋をして、満を持して告白し、不幸にも振られてしまった。
その理由が

『彼氏と彼女が他に5人居るから』

…だそうで、5人以上はさすがに身が持たないからハハハと、軽〜くあしらわれ終わってしまったんだ。

相手は来栖礼壱…
バスケ部の顧問で、若きヘッドコーチ。

オレはテニス部員でバスケには何の興味も無かったのだけど、バスケの壮行会に出席した時打ち合わせで初めて出会い、その…人目惚れっての?

好きになってしまった…。heart01


「また君か?しつこいのは好きじゃないんだよな〜」

体育館の緞帳の影に隠れその姿を見つめる…が、すぐ発見され来栖が苦笑いをしながら近づいてくる。

「な、なんだよ! ちがうっ お前を見てたんじゃ無い!!」
「まあ、可愛いストーカーで惜しいけど、子供には興味ないんだ この間も言ったろ?」

来栖は体育館のステージに両肘をついて、オレを見上げた。

「なんだよっ!! オレは子供で一個下の柏原はいいのかよ!!」
「柏原? ああ、君、ユキ君知ってんだ?」

知ってるも何も、ちょくちょく来栖がちょっかいをだす、やけにキレイな顔をした1年…
しかもオレは中学の頃、テニスの地区大会で、1年の柏原ユキという奴に、こてんぱんに敗北を喫したことがあるんだ!!(まさに因縁…この高校で再会するとは)
 

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番外編「初恋の終わり」

病室の窓は外も見えない程、白く曇っていた。

「勘弁してよ… なんで鷹木先輩が…ここにいるの」
「…………」

「やだなあ… なんで先輩が泣くの?」
「…………」

眠りから目覚めて、ベッドに横たわる柏原の顔がどうしても見られない。
涙があふれる、こらえる嗚咽のせいで顎が震えた。

「先輩 …僕、夏の花火の夢見てて きれいだったなあ…」

「オレは…お前が辛いのを…気付いて やれなくて…」

「バカだな僕は…しんだらもうみれないのにね…」

薬が効いている。また静かな寝息が聞こえてきた。

オレは涙と鼻水でドロドロの顔のままで、やっと柏原を見る。

ああ、やっぱりそうだ。

あの頃の面影…あの女の子は母親にユキと呼ばれていて…

ひまわりみたいに笑って…

それはオレの初恋で…

再会を果たし、オレはその子を守りきれず…間抜けな顔をしてここに居る。
「ゴメン… ゴメン 柏原…」

オレの恋はもう終わりにしよう。
そのかわり柏原が幸せでいられるように、今度こそ君を守るって誓おう。
一緒に生きて行こう。
君がオレを、不要とするようになるまで…

柏原…君は特別な存在だ。

【鷹木晴彦の初恋】終

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番外編「鷹木晴彦の初恋3」

「なんでいつもついてくるんですか?…朝も、昼も、帰りも」
«柏原ユキ»がさも迷惑そうな口調で文句をいう。

「だってさ オレが知らない所で君が殴られてたりって思ったら…気が気じゃないから」
「殴られたって…別にアンタを恨まないよ」
「…… 部活は大丈夫か?」
「まあね はあ… ホント…鷹木センパイって変な人だね」

振り返って、困ったような苦笑い。
その肩には 黄緑色のカバーに入ったテニスラケットがかけてあった。


梅雨が明ける。

そのうち柏原から刺々しい態度が消えて、オレ達は兄弟のように親しくなった。
柏原は良く笑い、オレも慕ってくる柏原が可愛かった。

8月には一緒に花火も見に行ったっけ。
家に泊まって勉強もしたし、じゃれあったまま眠ったりもした。

けど、楽しそうに振る舞う柏原の本心をオレは全く見られていなくて…

過信
傲慢
怠惰

オレは柏原に出会い(再会し)必ず守ってやろうと思ったのに
でもそれは、その気持ちは…人一人救うにはあまりにも安易なものではなかったか?

「うそだろ……」

その年の冬、柏原は手首を切った。
自宅の風呂場で気絶した柏原の隣にはガットを切られたラケットが置いてあったんだって…


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番外編「鷹木晴彦の初恋2」

うそじゃないよ。
お前は忘れて、オレは忘れなかった…
なんでか分かるか?
いや、分からなくてもいいんだ…


「ねえ僕、この辺に和菓子屋さんがあるって聞いたんだけど」

ジーイジーイと蝉の声が鳴り響く夏の日だ。
オレはまだ7才か8才か… 親に頼まれた用事を済ませた帰り道、後ろから歩いてきた女の人に声をかけられた。

その人の両方の手には、真っ白なワンピースを着た双子の女の子。
一人は、子供には似つかわしくない分厚い本を抱え、もう一人はウサギのぬいぐるみを大事そうに抱いている。

まるで人形みたいなキレイな双子の姉妹。

その和菓子屋が自分の家だというのが分かったので、僕はその人を案内した。
店に着くと、店前に遊びにきていた従兄弟がいた。
僕の母親と女の人が話に夢中になると、本の方の少女は従兄弟達と一緒に遊び出した。

もう一人のウサギの方は…
そういう遊びには全く興味がないのか店先の端にしゃがんで何かを見ている。

「なに見てるの?」
「…ひまわり きいろいのきれい」
鉢に植えられたヒマワリが空を仰ぐ。
少女がいとおしそうにそれを見つめている。
「ひやしあめ飲む?」
「うん!!」

あめを冷たい氷水でうすめて、ほんの少しだけしょうがを混ぜる。
僕はそれをつくって、少女の横に座り一緒に飲んだ。
横に座った少女がコップを両手で高々と掲げる。

「こうやるとね お空が氷に映るんだよ」

氷が溶ける音がする。
水滴の先にゆらゆらと空と入道雲が映っていた。
「ほんとだ」
「ね〜 きれいだね〜」

コップの先に見えたのは、今まで気付く事の無かった美しい世界。

大げさなようだけれど、

僕は…
…オレはその映像が
一生忘れないだろう、もっとも美しい記憶になったんだ。


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番外編「鷹木晴彦の初恋1」

中2の頃、梅雨もまっただ中の6月。
けれどこの日は、昨日までの鬱陶しい雨を忘れてしまったかのような青空だった。

放課後、ふと一階の廊下から校舎裏になる外を見ると、複数の男子生徒が一人のやはり男子生徒を取り囲んで暴行を加えている。

「おいっ!!何してんだよっ!!やめろっ!!」

オレはとっさに窓ガラスを開けて叫び、その窓から外へ飛び降りる。
「あ! やべー 逃げろっ!」
オレを視認するやダッシュでその場から逃げていく。

点々と地面に落ちる血液。
殴られた男子生徒は膝をついたまま、荒い息をしつつ動けないでいた。
シャツに滲んだ血と泥の跡が痛々しい。

「大丈夫か? …何処殴られた?」
「あんた…誰…」

かすれた声でそう言うと、そいつはその姿勢のままオレを見上げた。

栗色の頭髪、透けるような肌、睫毛の長い大きな目に…細い身体

「だれ?」

もう一度、聞かれてハッとする。
「…2年の…鷹木晴彦、君は1年か… 酷い事するな」
「鷹木… 生徒会…副会長」
「…医務室行こう、立てるか? なんだよ アザだらけじゃないか」
「こんなのは…なんて事ない」

息を整え、ふらふらと立ち上がる。

泣くでもない。
痛みを声に出すわけでもない。
その少女のような、か細い身体で

«1-A 柏原ユキ»
胸元のプラスチックの名札にはそう書かれていた。

それが中学でのオレと柏原の出会い。

だけど柏原、オレ達はとっくの昔に会っていたんだ。
お前は、忘れてしまったかもしれないけど………


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