空虚と覚悟
案の定寮には誰も居ない。
電気は生きていたが、電波の具合が悪いのか…TVの映像には鬱陶しいようなノイズが走っている。
15chあるうちの13chは放送中止。
あとは、市街地の被害状況とシェルターへ避難した五経市民向けの報道と、クラシック音楽が延々と流れ続けるどこかの風景の映像番組だ。
オレはその、ノイズの激しい国境軍による報道番組を目を細めながら見る。
(跡形も無い… 五経の中心部とは思えない… 悲惨な有様だ)
(国境軍が入ったか… いったい敵はどうしたんだ?)
(みんなは… クラスメイトや先生や… 先輩や… …朱里…は ちゃんとシェルターへ逃げられただろうか?)
(敵が ふたたび越境することは無いのだろうか?)
(オレ達は 生きられるのか?)
「東洋……?」
オレの膝を枕に横になっていたルイが目を開ける。
いつもの赤いルイのその瞳が、今はやけに色素が薄れ透けた様な感じに見えた。
「あ…どうした? 気分悪いか?」
ゆっくりと首を振り、起き上がろうとするので、その背を支える。
「東洋は…しんぱいなんだろ?」
「…… べつに そんなんじゃないさ…」
「強がり! …あ〜あ… 結局そうなるんだよなあ… まあいいや… 東洋のためだもの」
オレの顔を覗き込んで困ったように微笑む。
ルイ?
何を言ってるんだ?
オレがそう、聞き返そうとしたその時
一瞬目を伏せたルイが、両腕をオレの肩越しに伸ばして身体を寄せたかと思うと
そのまま
ルイの唇がやさしくオレのそれを塞いだ。
(…ルイ?…)
オレの罪は
多分
オレの不覚悟を… ルイに 悟られたことだったのかもしれない。
せめてその事に気付けていたなら…
ルイはいつだって『その覚悟』を腹に据えて生きていたというのに…
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